男女
[2025/03/31,09:11:47]
よしっ、最後まで読んじゃおう、と寝床でやめられなくなった本を久しぶりに読んだ。四方田犬彦『わたしの神聖な女友だち』(集英社新書)で、著者がこれまでの人生の途上で出逢った、敬服すべき女性たちの記憶をたどったものだ。ジメジメ、ネチネチ、ドロドロの男女の恋愛劇とは無縁の、さわやかで読後感も清々しい「信頼関係を築きえた女性たち」との交流青春物語、といっていいだろう。著者は私の4歳年下、若いころから映画関連の評論で名をはせてきた人だが、こんなにも交友関係の広い人物とは思わなかった。登場する女性たちは、女優から作家、漫画家に学者、革命家や歌人、政治家にミュージシャンと多彩だ。ほとんどの人が名を成した有名人だが、逆に著者の高校時代や大学時代に知り合った無名の女性たちのほうが、この本では圧倒的に存在感があり、人物たちが生き生きと躍動している。不幸にして病に倒れた、自死した人も数人含まれているが、描かれた女性たちはみな溌溂と魅力的で、著者は敬意を失うことなく、彼女たちから受けた多くの影響に謝辞をささげている。自分の前を通り過ぎていった女性たちをテーマに、自らの旨く言葉にできなかった半生を描くことに見事に成功した珍しい本だ。
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