オリンピック [2020/04/08,10:14:02]
山口文憲編『やってよかった東京五輪』(新潮文庫)を読んでいたら、今の渋谷NHKがあるあたりのワシントン・ハイツから、64年のオリンピックの物語が語られていた。ここでジャニーズという少年野球チームを作って、動き出したのがジャニー喜多川だ。彼は大谷派の海外布教師の息子で米軍属(通訳)として日本に帰ってきたばかり。そこからあの大手芸能プロはスタートしている。それから半世紀後の今、ジャニーズ事務所のタレントはオリンピックの広告塔、目玉商品として活躍している。ところが64年のオリンピック当時、選手以外のスターはタレントではなく圧倒的に文士たちだった。大江健三郎、三島由紀夫、川端康成、柴田錬三郎といったスター文士たちの書く観戦記が紙媒体のメインで、人々は競って読み漁った。彼らの観戦記が今のジャニーズのタレントと同じような比重と人気で語られていた時代があったのだ。作家・菊村至はオリンピックは「富士山と登るのと同じ。一度はやってみるべきだろう。ただし二度やるのはバカだ」と書き記している。
腰痛 [2020/04/07,10:11:28]
なんの前触れもなく突然腰が痛くなった。歩くのも大変で散歩も中止。長く集中して椅子に座り続けているせいだろうか。原稿書きで毎日8時間は最低椅子に座っている。そのせいで腰がコチンカチンに固まってしまったのだうか。これまで腰痛とは無縁の人生だったのに、いったいどうしたことか。カミさんに弱音を吐いたら「そんなことぐらい、しょっちゅうある」と歯牙にもかけてくれない。一晩寝てもやはり痛さは変わらない。歩く分には痛みがなくなった。椅子から立ち上がる時がやっかいだ。ゆっくり痛みが来ないように両手の力を使って立ち上がる。座るときも同じで慎重にゆっくりとしか動けない。「2,3日で自然に治る」というのがカミさんの見立てだが、本当だろうか。なまじ腰痛の未経験者なので不安ばかりが先行してしまう。近所にできた整骨院にも行ってみるか、とも思ったがこのご時世では対面治療は問題だ。貼るロキソニンで当面は痛みの去るのを待つしかない。
仕事 [2020/04/06,10:45:27]
夜は熟睡しているし、排便も調子がいい。食欲はあるし、運動不足は否めないが散歩は雨の日も欠かさない。さすがに仕事はヒマだが、自分の本を書くのには絶好の「時期」だ。普段ではなかなか自分の個人的な原稿書きにじっくり時間を取ることはできない。後ろめたさがあるからだ。でも今は特別だ。これ幸いとばかりに「トメアスー紀行」という原稿を書いている。これだけ集中してもまだ全体の2割程度で先行きが心もとないが、何とか完成させたい。完成させなければ死ぬに死ねない。この40年間取材してきたアマゾンの日本人移民の物語だ。取材に時間をかけすぎたのがアダになって雑念の海に溺れてしまった。何とかここを突破しようとあがきまくっている。救いはたっぷり時間があること。世のなかの動きが止まっている今しかできない。しばらくはこの仕事に集中するつもりだ。
季節感 [2020/04/05,12:23:12]
その昔は家の前に田んぼが大学病院まで広がっていたので、その風景で季節を感じることができた。四季それぞれの田んぼの風景というのは、いわば私たちの原風景のようなもので、それを眺めながら暮らしを営んでいる日々は贅沢だなあとよく思っていた。今、困るのは田んぼがなくなったこともあるが、雪も降らず鳥の姿も減り、自然から季節を感ずる機会がめっきり失せたことだ。昨夜、焼酎のオンザロックを呑んだ。実にうまかった。その前まではずっと日本酒の冷やだ。ビールを呑む習慣がないので、晩酌の酒がなんとなく失った季節感を身体に取り戻すアクセントのようになった。もっと暖かくなるとハイボールを飲むようになるし、秋から冬にかけてはワインが多い。雪の日は熱燗や焼酎のお湯割りだが、今年の冬はほぼこの「酒の季節感」なしで過ぎてしまった。
新聞 [2020/04/04,14:20:09]
今週は3組の来客があり、その全員が新聞記者の方々だった。取材ではない。年度末なので赴任のあいさつや雑談、相談といったたぐいの用件だ。新聞社も大変な曲がり角に来ているのは彼らと直に話していてもヒシヒシと感じる。メディアもすっかりデジタル全盛時代に移行した。紙の情報が疎んじられる速度は年々速くなっている感じだ。もう20年前から顕在化しはじけた現象だが、大手新聞社もここにきて経営的にもぎりぎりの局面を迎えるところまでで深刻になっているのも事実のようだ。新聞の広告掲載値段で、私たちはその窮状をうかがい知ることができる。全国紙の新聞広告費は30年前の10分の一にまで落ちている。だから私どものような超零細版元も広告を打てるのだが広告効果はほとんどない。見事に値段と効果が見合っている、ともいえる。それでも新聞広告の掲載は必要だ。全国にちらばる読者に「私たちはまだ生き残っています」というメッセージに大切な掲示板の役割を果たしているからだ。
雑感 [2020/04/03,09:56:47]
散歩の足を延ばして駅周辺を歩いてきた。いつもは駅手前でUターンする。コロナの影響がどの程度及んでいるのか好奇心が勝ってしまった。怖かったが駅ナカのスタバにも入った。ゲホゲホ咳をする東南アジア系の中高年の夫婦がいて、ちょっと引いてしまった。おまけにこの夫婦、スタバを無料休憩所と思っているようで飲食の注文はしていないのだからごリッパ。帰りにナンバープレートに「富士山」と表記のある車を見つけた。長く生きているので日本国中のナンバープレートを秋田県内で見ているつもりだったが、「富士山」という地名は初めてだ。事務所に帰って小腹がすいたので食べ物を探したら、レンジに2日前に食べようと思ってチンしたサツマイモが無残な姿で死んでいた。チンする時間があまりに長かったので、チンしたことを忘れてしまった。手帳に毎日食べたものを記録しているのだが、この頃、前の日の夜に食べたものを思い出すのに思いっきり時間がかかる。終末の日は近い。
ライオン [2020/04/02,10:31:57]
出たばかりの『向田邦子ベスト・エッセイ』(ちくま文庫)を読んでいて、ぶっ飛んでしまった。中央線に乗って帰る途中、車窓に木造アパートのくたびれた男が見えた。そしてその隣にはライオンがいた、という「中野のライオン」というエッセイだ。人にしゃべるとバカにされそうで、黙っまま20年の歳月が流れた……という結末のお話なのだが、物語はそこから実は始まる。そのエッセイが雑誌に載った後、ライオンの飼い主から「ライオンを飼っていた者です」と著者に電話があったのだ。この顛末は別の「新宿のライオン」というエッセイに続編として書かれている。いやぁ驚くやら、コーフンするやら、ホンマかいなと何度も読み直してしまったほどだ。エッセイの名手として名高い人の手にかかると、車窓の風景が見事な文芸作品や名画鑑賞になっている。これに類した「衝撃的なエッセイ」も読んだことはあるが、このライオンの話は強烈さではたぶん一番だ。乗客の多くもライオンを見ているはずなのに無言で無視。自分だけの幻覚、と思いはじめたあたりでエッセイは終わっているのが、たぶんミソなのだろう。
夢中 [2020/04/01,10:12:19]
昨日はある新聞社の方々が3名も訪ねてきた。2時間近くおしゃべりして、日ごろの自粛からくるストレスをずいぶん軽減できた。人とおしゃべりすることが「重要」になるような世の中になるとは思ってもみなかった。あとはひたすら「トメアスー紀行」という誰に頼まれたわけでもない、自分のライフワークの原稿を書いていた。シンドイが楽しい。楽しいがひどく疲れる。疲れるがやめられない。夢中になるとのめり込んでしまう。夕食後も「早くパソコンに向かいたい」という気持ち抑えがたく、そそくさと事務所に戻ったのだが、やはり疲労には勝てない。書きながら寝てしまった。あきらめて8時にはPCを閉じ、風呂にはいって寝てしまった。無理のきかない身体になったのが悔しい。
執筆 [2020/03/31,09:34:19]
世のなかがすっかり静かになったので、実は2日前の日曜日から懸案のブラジルの原稿を書き出した。なんとなく忌諱してそばに近寄らなかったのだが、いずれは着手しなければならなかったもの。この40年間、何度も書いては挫折、取材に行っては書き継いで頓挫、を繰り返してきた「憎き敵」である。ブラジル・アマゾンの日本人移住地を訪ねた記録なのだが、菲才の身には手に余る重いテーマだ。この仕事に一歩歩みを進めると他の仕事が手につかなくなってしまう。その恐れがあったので「忌諱」などという面倒くさい言葉を使ってしまったが、いざ執筆に入ると、やはり大変な仕事であることを痛感、今も心折れそうになる。でも、これをやり遂げないと何をやっても中途半端、という自己評価を変えることなく人生を終えることになる。健康な状態で、書かなければいけないテーマを持っていること自体、幸せなことだ。そのことに感謝しながら挫折しないように前に進んでいこうと思っている。
若者 [2020/03/30,09:50:34]
散歩の途中、駅前で大きなキャリーバックを引きずって歩くマスク姿の若者を何人か見かけた。長距離バスから降りてきた帰省客のようだ。外出自粛の東京から帰ってきた学生なのだろうか。仮定でしかないが、これから秋田にはこの手の若者たちがガンガン帰ってくる。東京にはバイトもないし娯楽場も締まっているからだ。なかにはバカもいて、田舎の開放感から夜の繁華街で仲間たちと大騒ぎするものもいるかもしれない。となると秋田の夜もきわめて危ない。コロナウイルスによる倒産や自殺者の心配ばかりしていたら、今日の新聞の社会面はしっこに、山本博文氏が63歳の若さで亡くなったことが報じられていた。江戸時代の武士や大名の暮らしをユーモラスに紹介してくれた歴史学者だ。レビにもよく出ていた人だ。江戸時代に興味を持つきっかけを作ってくれた本の著者でもある。合掌。

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