霊感 [2025/12/27,10:59:32]
内館牧子さんが亡くなった。近い人から1か月ほど前、かなり危ない状態で入院していることを知らされていたので、それほど驚かなかった。その前日、会津若松で歴史春秋社を立ち上げたAさんの訃報を聞いたばかり。このごろ身近な人の訃報がなかったので、そろそろ誰かが来るなあ、と不謹慎にも考えていた矢先だった。一番心配だったのは長野の郷土出版の創業者Tさんだ。彼は同い年だが病弱で、いつ訃報が来てもおかしくない状態だった。Aさんは95歳での大往生なので動揺はなかったが、「ところで長野のTさんは健在ですか?」と知人に訊くと、この10月にもう亡くなっていたというではないか。やっぱり……。私のようなものにも少しは霊感のようなもが働くのか、なんとなくTさんの死を予想というか、そろそろ訃報が来そうだと身構えていたのだ。3人の訃報が同時期に押しかけてきて、またちょっと頭の整理ができないが、ご冥福をお祈りするばかり。
危険 [2025/12/26,10:14:10]
夜の散歩はいよいよ危険になってきた。横断歩道の路上標識(白泉)が雪で消えるため、歩道に気づかず突っ込んでくるドライバーが後を絶たないのだ。コンビニ駐車場から歩道へ一気にバックしてくる車にも、何度か轢かれそうになった。私は轢かれやすい体質なのだろうか。人並みに動作も機敏だし(と思っている)、注意力や視力、聴覚とも異常はないのだが、車との相性がとにかく悪いのだ。着る服が黒っぽいものが多いのも問題なのかもしれない。そのため腕に目立つウォーキングライトを巻いているのだが、このライトもある程度の明度のある場所ではほとんど役に立たない。昨夜は無謀運転のドライバーの顔をしっかり確かめようと、車の中を覗き込んだが、無人……と一瞬おもったが、犯人は小柄なおばちゃんだった。顔がフロントガラスからちょっとしか出ていないので無人に見えたのだ、これではバックの視界を確保するのにも難儀する。シートの高さを工夫して、充分な視界を確保するやり方はないのだろうか。雪の季節は、できるだけ明るいうちに散歩するしかないのかもしれない。
麻酔 [2025/12/25,09:22:43]
カミさんが健診で胃カメラと大腸検査をしてきた……と楽しそうに話す。検査中のことをまったく覚えていないためだ。胃カメラも大腸も全身麻酔をかけて検査したため、そのプロセスの記憶がまったくないのだ。いやぁ、それはうらやましい。明日にでも自分もやりたいぐらいだ。10年程前、どうしても胃カメラを飲む必要が出て、1週間前からウジウジ悩み続けたことがあった。そのころイスラエルでカプセル状の飲む胃カメラが開発され、実証実験中の記事が出た。早く一般化しないか、祈るような気持ちになったことを覚えている。麻酔をすれば胃カメラも大腸検査も知らないうちに済んでしまう。ちっとも怖くない道理だ。それがもう秋田の一般病院で行われているというのは、朗報である。ちょっと診察費用は高いらしいが、そのぐらいは我慢しよう。あの胃カメラだけは、何度やってもなじめない。
対談 [2025/12/24,10:35:00]
奥田英朗の長編小説を読み終わったら、ちょっと虚脱状態。とりあえず「沢木耕太郎セッションズ」全4巻(岩波書店)という対談集を読みだした。このT巻目の映画評論家・淀川長治との対談が面白くて2度読みしてしまった。同じ対談を2回読むなんてありえない。淀川は沢木がどんな人物なのか、ほとんど知らないまま対談をしている。ボクシングのような対談だ。淀川は沢木に毒舌を浴びせまくり、沢木のペースにはけして乗らない。あなたは幼稚で意地悪で坊ちゃん。ハイクラスで、私をバカにして、残酷な男……と、まあ一方的に決めつけて、いいたい放題しゃべりまくる。それが爽快で、嫌味でもひがみにもなっていない。逆に淀川の誠実さや真剣さすら感じさせるのだから不思議だ。東宮御所に呼ばれて皇族に映画の話をするときも、この調子でやるというのだから恐れ入る。沢木のほうもそんな淀川に、めげることなく真正面から向き合っている。途中であきらめて試合放棄をしないだけでも強靭な精神力だ。人間の器がこちらとはまるで違うのだろう。こんな面白い対談を読んだのは初めてだ。全4巻のうち半分を読み終わったが、この淀川以上の対談相手が登場するのだろうか、もう夜が待ち遠しい。それにしても対談集をこんなに真面目に読んだのは初めてだ。長く残り続ける対談集と言えば司馬遼太郎だが、、沢木の対談も、それに近い質を持っているのかもしれない。
正露丸 [2025/12/23,10:23:46]
夜中に胃液がこみあげてきて寝付けない。3年前に逆流性食道炎とわかり、ずっと薬を飲んでいて、これが効果テキメン、以後、胃の不快感から解放された。今回はだから、前日に食べた天ぷらそばの「天ぷら」が犯人だ。スーパーで買ったものを数日間放置してから食べたのだ。揚げ油が時間と主に劣化していたのを食べてしまったのだ。食道炎の薬を追加で服むしかないか……と迷った末、手許にあった正露丸を飲んでみた。、すぐに不快な胃液は消え去った。恐るべし、正露丸。服用後30分で効果があらわれる、という謳い文句はウソではなかった。どんな成分が効き目をもたらすのか、科学的な根拠はよくわからないが、海外旅行に行くときはかならず正露丸を持っていく。ちょっと恥ずかしいのだが、この効き目なら、やっぱり納得だ。
ハタハタ [2025/12/22,09:50:34]
今年もどうやらハタハタは絶望的なようだ。50年以上も前の話だが、学生時代、ハタハタを捨てるアルバイトをしたことがあった。もう記憶もあいまいになりつつあるのだが、その当時の状況を確認したいこともあり、当時の(昭和40年代)ハタハタ漁を書いた資料を探していたら、吉村昭に「ハタハタ」という短編小説があった。この当時は、獲れたハタハタを浜の近くにある貯蔵庫で箱に詰め、その場で商人たちに売り渡していた、という記述があった。漁が始まって1週間は高値が続き、ひと箱千円を超す。ひと箱には200尾のハタハタが入っている。それが1週間もたたないうちにひと箱は200円前後まで落ちる。そうなると1尾が一円、利益もくそもない。箱代のほうが高くつくから捨てるしかない。ハタハタが雷や時化の日を選んで接岸するのは、深海に住む彼らにその海水温度が適していること、海が荒れると海鳥やほかの魚に襲われる確率が低くなるため、とも書いている。吉村のテーマは漁そのものというよりも、日本海の寒村に残る伝承的、民話的な世界に翻弄される家族だ。漁師たちの言い伝えの縁起担ぎに利用されながら、遭難死した肉親をもつ一家が次第に漁村の共同社会から締め出されていく残酷な過程が描かれている。いっけん強固で暖かく見える共同社会と伝承伝統の中に潜む非情さを、リアリステックに抉り出している。
アマチュア [2025/12/21,14:34:33]
サッカーを初めて見たのは高校生の時。競技は知っていたが、グラウンドでプレーしているのを見たことがなかった。我々は野球がすべてで、それ以外はマイナースポーツだった。その日本のサッカーが、このところ世界レベルになって海外でも注目されている。ワールドカップ優勝も数年後には実現するかもしれない。Jリーグができたころ、ヴェルディの選手たちがスターのようにもてはやされた。勘違いした彼らはファッションや髪形、バラエティのテレビ出演にゲームより夢中になる。まるで芸能人だ。こんなチャラい連中のやるスポーツって、と当時から反感や違和感があったが、サッカーを全国区にしたインフルエンサーでもあった。日本が急に強くなったのは、試合後にディスコで酒を飲み、遊びまくる、といった彼らの「悪癖」から学び、トレーニングの練習、休養、栄養を自己管理できるようになったことが大きい、と元日本代表監督の岡田武史が沢木耕太郎のとの対談で語っていた。なるほど、やっぱりそうだったのか。あのチャラいラモスとか武田とかは、強くなるための反面教師だったわけだ。そういう時間を経てプレーヤーはアマからプロの意識を獲得していったのだそうだ。
背後関係 [2025/12/20,08:47:22]
長編小説「普天を我が手に」を描いた奥田英朗は岐阜の生まれ。08年に書いた『オリンピックの身代金』では、「秋田」を根城にして東京(国家)にテロを仕掛ける物語を描いた。昭和30年代の秋田や出稼ぎ、農村の貧困などがよく描けていた。秋田と関係のある友人などがいるのだろうと思っていたが、あるインタビューで「秋田と直接的な関係はない」と語っていた。今回の最新作でも、やはり随所に秋田が登場する。満蒙開拓視察のため渡満してきた秋田県代表団、主人公の一人、森村ノラの亭主になる東大出の通産省の役人は、秋田の貧しい農村の出身だ。そして「スリ」。これは「オリンピック」の時に重要な役割を果たす、土崎空襲で家族を失った「村田」という人物だが、なんと最新作でもまったく同じ名前のスリが登場する。ここまでくるとやはり、なにかしら秋田へ深い執着や興味を持っているとしか考えられなくなる。参考文献を見ても、秋田と関係をうかがわせるような資料はない。ごく一般的な基礎的な典拠だけだ。奥田と秋田の背後には何があるのだろうか。読後、ずっとそのことが気になってしょうがない。
第3部 [2025/12/19,10:01:26]
予約注文していた奥田英朗『第三部 普天を我が手に』が発売日その日に届いた。三部は、7日間しかなかった昭和元年生まれの主人公4人が、それぞれ検事や政治家、ジャーナリストやプロモーターとなって、お互いの運命を交差させながら、激動の戦後を駆け抜ける物語だ。大正天皇崩御からはじまった物語は、この3部の昭和天皇の大喪の礼で幕を閉じる。著者が「一生に一度の10年仕事」という大長編小説だが、合計1700ページの、普通の単行本にすれば7冊分くらいの本を、巻を措く能わず、一気呵成に読んでしまった。今年の本ベストワンだ。4人の主人公を一人ずつバラシて本にしても、4冊の単行本が可能だったのだろうが、その4人を歴史の中で交差させ、物語に面白さと深みを加えた。奥田ワールドの結晶ともいえる作品だ。9月から刊行がはじまり12月まで、この3冊の本で、読書の楽しさをたっぷり味わわせてもらった。
ローマ字 [2025/12/18,10:42:25]
ローマ字表記の国による決まりが約70年ぶりに変わることになったという。え、どういうこと。要するに「し」は訓令式を用いて「si」とこれまで定められていたが、これをヘボン式の「shi」を基本にすることにした、ということのようだ。「つ」は「tsu」で、「しゃ」は「sha」になる。統一されるのは悪いことではない。ワープロで印字する習慣がついた今では、ワープロ表記に従えばいいだけの話なのだが、撥音の「ん」は「n」で、促音は子音を重ねて表記する。まあ今まで通りなのだ。それでも「でゅ」や「どぅ」「つぁ」など横文字系の言葉が出てくると、印字の仕方が今もよくわからない。パソコンでは「dhu」「dwu」「tsa」と打ち込むのだが、手帳にメモしておいて、その都度確認してから印字する始末だ。よく出てくる言葉が「ピッツァ」で、これは「Pittsa」と印字する。いまだに覚えられない。

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