東北の本
2006年刊

東北民衆の歴史 近世・維新編
伊藤 重道(いとう しげみち)著
四六判・477頁 定価2800円+税
ISBN 4-89544-426-0

野にたって民衆史の視点から東北の近代を歩き、克明に記録したあるジャーナリストの労作。史学と取材のせめぎあいの中から生まれた新しい近代史。
冊数

目次から
プロローグ 東北──その歴史と風土
三内丸山・大湯環状列石・亀ケ岡遺跡/縄文系と渡来系/古代蝦夷と律令国家の死闘/蝦夷論の到達点/広大で豊かな大地/幕藩制支配と東北/世界に開かれた国際性/「国民国家」的日本史像への反省のなかで

第一章 『会津農書』の世界──近世東北農村の原風景
四面山嶽の地/東北の風土・気象条件ふまえ/小農(小家族農民)の自立/半畳に一人の下男部屋/画期的な開発の世紀/民勢さし潮の如し/会津藩寛延一揆/幕藩制的仁政イデオロギーと百姓一揆

第二章 紅花や蚕種・養蚕に生きた人びと
満地朱をそそぎたる如く/「最上千駄」で、全国一の生産額/商品経済と農民層分解/長瀞騒動と村山一揆/京都・紅花問屋の流通独占に反対し/蚕種・養蚕の里/三つの特産地と地域内分業の確立/技術改良と「奥州本場種」/一万人に及ぶ出稼ぎ労働者

第三章 封建の世への根源的批判者──安藤昌益
昌益から数えて十代・安藤義雄さん/二つの文書と「守農太神」/十八世紀中頃の二井田村/よみがえった『自然真営道』/八戸の安藤昌益/「法制物語」の世界/アイヌ社会論や未来社会論、性道徳/「太平記読み」と昌益思想の転換/「物語」論の攻勢に抗して

第四章 30万人の大量死──天明の飢饉が残したもの
碇ヶ関の関所/供養塔は語る/仙台では犠牲者供養のとうろう流し/『菅江真澄遊覧記』の世界/「餓死・病死、三十万人以上」の試算/商品経済と封鎖経済との矛盾/民衆の手による「米改め・蔵改め」/浅間山噴火とフランス大革命

第五章 天下のゆるる兆し──宝暦〜天明期の社会状況
上杉鷹山と“代表的日本人”/藩政改革の歴史的背景/藁科松柏と改革派グループ/百姓一揆の質的変化/豪農の誕生と「田沼時代」/百姓一揆物語と義民伝承/民衆の知的成長と出版文化/北上川流域の民俗芸能と「宝暦」以後

第六章 高揚する百姓一揆──天保期
「巳年の飢饉」と土崎港打ちこわし/前北浦一揆、奥北浦一揆/八戸の稗三合一揆/盛岡南方一揆と全領強訴/三閉伊一揆に先行するもの──伊達領越訴/大塩平八郎の檄文を写した南部の百姓/「三方領地替え」反対一揆の評価/天保期の画期性

第七章 秋田の鉱山、南部の鉄山
突如出現した大鉱山町/鉱山はどんな社会だったか──院内銀山の場合/金名子経営とは──阿仁鉱山の場合/金堀一揆/「友子制度」/“不思議の国”に広がる一大鉱工業地帯 番子や牛方たちの歌/「御手山名義」による経営/鉄山労働者の性格をどう考えるか/大島高任と洋式高炉/洋式高炉の画期的意義

第八章 南部三閉伊一揆の民衆像
近世三陸漁業発展の三段階/閉伊地方を直撃した軒別税、御用金/悪い狼を刈取らん=弘化の一揆/大量の“俊作文書”の発見/黒船来航にも匹敵する大事件=嘉永の一揆/衆民のために死するは 元より覚悟の事なれば……/指導者・三浦命助と『獄中記』/民衆思想史研究の新たな到達/畠山太助の最後と顕彰活動

第九章 世直し状況の広がり
信達世直し一揆/十万をこえる参加者/「金原田世直し八郎大明神」/一貫して民衆的立場貫く/紅花の里で──村山騒動/庄内、仙台藩三迫や、南部でも/民衆の立場からの反戦の訴え/都市・農村を貫く国民的規模の民衆反乱/「世直し状況論」をめぐって

第十章 明治維新と東北
余りに惨酷な酬い/白虎隊の悲劇、斗南での生活/王政復古史観の克服こそ出発点/絶対主義めざす二つの改革プラン/開国をめぐる基本政策の転換/会津ヤーヤー一揆

第十一章 続・明治維新と東北──明治初年の民衆運動を焦点に
「奥羽人民へノ告諭」/維新政権への民衆的反撃/菊の御紋を焼き捨てる/徴兵制・地租改正強行への怒り/明治の革命=庄内ワッパ事件/今に残る東北への差別=山野収奪/天皇制絶対主義及び絶対主義的天皇制

第十二章 夜明けをめざす女性たち
『獄中記』を運んだ女性/女性のいない日本近世史/人口構成にみる男女格差──福島の場合/一揆・騒動と女性/只野真亰(工藤綾子)の場合/婦人参政権を求めて

〔参考資・史料〕〔関連年表〕

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