教育・研究
2025年刊

誰がために祈るのか
ソウゼン信仰の人・家畜・カミの民俗誌
三津山 智香(みつやま ちか)
A5判・318頁 定価3800円+税
ISBN 978-4-89544-689-1

東日本を中心に祀られる「ソウゼン(家畜守護神)信仰」は、どのように存続してきたのか。その成り立ちから現在までを、文化人類学や民俗学の先行研究を参照に、整理、検証し全体像に迫った意欲的な論考。

冊数

【目次】
序章
第一節 問題の所在
信仰研究における個人と語り
生活への着目
人と動物との関わりを描く
家畜守護神は過去の信仰なのか
第二節 本書の課題と視座
課題
視座
第三節 本書の構成
第四節 調査地概要

第一部「家畜守護神」とはなにか
第一章「家畜守護神」の検討
第一節 家畜守護に関わるカミと行事
家畜守護神の分布
家畜守護神の?みられない行事
第二節 「牛馬」と「家畜
第二章 ソウゼン信仰の諸相
第一節 ソウゼン信仰の研究史
第二節 ソウゼン信仰の地域差
第三節 祭文と寺社縁起に描かれたソウゼン
祭文への着目
寺社縁起への着目
第四節 ソウゼンの伝承にみる「思い」

第ニ部 人・牛馬・ソウゼンの関係史
第三章 近代までの牛馬飼育とソウゼン信仰
第一節 信仰と政治
第二節 近世・近代の馬政─盛岡藩と軍馬補充部─
近世までの南部地域とウマ
盛岡藩のウマとウシ
近代の牛馬飼育
第三節 近世・近代のソウゼン信仰
盛岡藩におけるソウゼン信仰の展開
近代のソウゼン信仰
第四節 馬政とソウゼン信仰
馬匹政策における人とウマ
ソウゼン信仰の変遷
第四章 高度経済成長期における家畜飼育の変遷
第一節 経済成長と生業変化との連関
第二節 統計にみる家畜飼育の変遷
第三節 どの家にでもいる「牛馬」から畜産農家の「家畜」へ
H集落の場合
C集落の場合
第四節 家畜飼育における「手間」と「儲け」

第三部 信仰実践へ向かう「思い」
第五章 ソウゼンはなにを守護するのか
第一節 信仰の衰退か、変化か
第二節 願いを選ぶ─絵馬市にみる守護の対象の拡大─
氣比神社と絵馬師
絵馬市の変遷と現状
絵馬の購入者
ソウゼン信仰における絵馬
第三節 牛馬なき集落の蒼前神社
K集落の蒼前神社
S集落の蒼前神社
第四節 ソウゼン信仰の現代
第六章 畜産農家・家畜・ソウゼンの関わりから捉えるソウゼン信仰
第一節 産業社会における人と家畜への研究視角
第二節 畜産農家の求める「いいウシ」
家畜市場での評価
畜産農家の求める知識
第三節 畜産農家の語る家畜
ウシに語りかけるA氏
手間をかけないB氏
ウシしかないC氏とD氏
第四節 畜産農家のソウゼン信仰
「熱くなっている」A氏
「熱くなっていない」B氏
生活を営むC氏とD氏
第五節 畜産農家・家畜・ソウゼンの関わり
終章
第一節 結論
家畜守護神とは何か
生活と信仰の連関
信仰実践へ向かう「思い」
信仰をいかに捉えるか
第二節 展望─家畜守護神信仰研究の発展に向けて─
参考文献

三津山 智香(ミツヤマ チカ)
茨城県生まれ。筑波大学人文社会科学研究科歴史・人類学専攻修了、博士(文学)。専門は日本民俗学。筑波大学特任研究員、京都芸術大学業務担当非常勤講師など。
主な著書(共著)に『民衆画の世界─欧州と東アジアを比較する─』(三元社、2023年)など。
主な論文に「神社への奉納物の変遷─福島県白河市の勝善神社を事例に─」(『歴史人類』50号、2022年)、「人・家畜・カミの関係から捉える蒼前信仰─青森県十和田市を事例に─」(『日本民俗学』297号、2019年)、「馬産地十和田における昭和30〜50年代の変化─家畜飼養の変化に着目して─」(『国立歴史民俗博物館研究報告』207集)


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