福島県
東大巓(ひがしだいてん)
雄大な吾妻連峰の原生林と地塘群をめぐる静かな山旅
東北の山小屋(福島キャノン会編)より
弥兵衛平小屋・谷地平避難小屋
浄土平〜一切経山〜家形山〜烏帽子山〜明月荘〜東大巓〜谷地平〜姥ケ原〜浄土平
 広大な吾妻連峰は動植物の生態系が特有なものが多く、景観も岩稜帯、原生林、池塘、花畑などの変化が楽しめる。静かな谷地平をめぐる浄土平からの周遊コースをたどる。
 観光客が多い浄土平周辺から一歩一切経への登山道に入ると、人気も少なくなり荒涼としたガレ場の登りとなる。一切経山頂からの四方の見晴らしは素晴らしく、特にエメラルドグリーンの五色沼は周囲の景観と合わせて四季折々の彩りを見せる。
沼の西側を通り家形山へ登り返し、西吾妻への縦走路へ分岐を進む。その後は樹林帯に入りほとんど展望はなくなるが、ニセ烏帽子山を過ぎると南側に箱庭のような谷地平湿原が見下ろせる。烏帽子山頂からは、西に鏡沼、昭元(しょうげん)山、東大巓、そしてその右手に明月荘が小さく見える。昭元山を過ぎ谷地平への分岐付近からは樹林帯を抜け出し池塘のある湿原に変わり、夏場は一面のお花畑となる。東大巓山頂はコースから少し外れ展望もないが、1928mの三角点に立ち寄ってみたい。山頂から西へ進み今宵の宿、弥兵衛平小屋、別名 明月荘へ向かう。池塘がさらに多くなり木道が現れると明月湖畔の小屋は近い。泊まるなら明月湖周辺の夕日に映える池塘群の間の散策を楽しみたい。
 翌日は直接谷地平を目指そう。東大巓から谷地平までは荒れておりアップダウンが激しい。途中何個所か沢を渡り樹林帯へ入り、これを抜けると川を1本挟んで谷地平へと出る。
 湿原の中に木道が延び、振り返れば池塘群と空の間に、昨日歩いた稜線が浮かぶ。小尾瀬といった雰囲気で気持ちの良い場所だ。中吾妻山への分岐を右手に見送り、谷地平避難小屋に着く。小屋を後にし樹林帯に入り、姥ケ原に出ると姥石像が出迎えてくれる。鎌沼までくればそこはもう観光客がおり、静かな山旅は終了となる。
(手塚啓一)

弥兵衛平小屋

吾妻・谷地平避難小屋


谷地平から烏帽子山と昭元山

明星湖の夕暮れ


弥兵衛平小屋(明月荘)
 東大巓山頂の約1km北方に位置する。小屋に向かう木道から梢の上に(弥兵衛平小屋)明月荘 と大きな文字が壁に書かれており目標となる。明月湖ほとりに建つ。1階2階とも板張りで、2階へは中央部の土間から垂直な梯子を昇降する。小屋の中に水場の「銀名水」の案内板あり。
●小屋の清潔度/雰囲気:★★
●小屋の広さ:2階建て約60人収容
●小屋のトイレ:有り
●水場の有無:有り 徒歩15分 銀名水(小屋前の明月湖の水は飲用には向かない)
●小屋の連絡先:山形県米沢市役所観光物産課 TEL 0238−22−5111
●夏の小屋番:無人、無料

谷地平避難小屋
 谷地平、大倉川上流の沢の脇にある。平成9年末に建て直された。形で東側が入り口。中はコの字形に床がはってあり中央は土間。土間の上には中2階風の物置棚あり。登山者より釣り人の利用が多いようだ。
●小屋の清潔度/雰囲気:★★★
●小屋の広さ:約30人収容
●小屋のトイレ:無し
●水場の有無:有り(脇の沢水)
●小屋の連絡先:福島県庁環境政策課
 TEL 024−521−7250
●夏の小屋番:無人、無料

▼参考コースタイム
浄土平(1時間30分)一切経山(20分)家形山(2時間30分)烏帽子山(2時間15分)明月荘(3時間)谷地平(2時間)姥ケ原(50分)浄土平
▼アクセス
JR福島駅より福島交通バス 浄土平行き乗車で約60分。自家用車の場合は磐梯吾妻スカイライン浄土平駐車場を利用。福島市役所観光課 TEL024―535―1111、福島交通梶@TEL024―531―6681、浄土平ビジターセンター TEL024―543―0986
▼2万5000分の1地形図名
吾妻山、天元台、土湯温泉
▼アドバイス
吾妻連峰内は国立公園のためテントを張るなどの野営は禁止されている。植生を守るため登山道以外、特に湿原地帯には立ち入らないこと。吾妻連峰の登山口は豊富で、ほとんどが温泉が涌いている。帰りには温泉に立ち寄り汗と疲れを流す計画を立てたい。
数値等のデータは2001年現在のものであることをご了承下さい。

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