んだんだ劇場2004年02月号 vol.62

No20−古武術とヒップホップ−

12月29日〜1月4日
 29日(月)雷のなる不穏な朝。事務所は休みに入ったが営業を除く全員が仕事している。11時のANA便で東京。雲行きも怪しかったがパイロットの運転はもっと怪しく離陸から揺れがひどい。素人の私ですら「乱暴だなあ」とわかるほどアバウトなパイロットだ。その心配が的中、離陸3分後にゆれ続ける飛行機からバァーーーンッと大音響、目の前が一瞬真っ赤になり、ものすごい火の玉が機内に飛び込んできた。思わず「ギャア〜アアアア」と大声を上げてしまうが乗客のほとんどは冷静、というか肝をつぶしたのか無言。しばらく揺れ続け30分後、機内アナウンスで実は「右翼に雷が落ちたが異常ないのでこのまま東京に飛びます」という。それをきいて乗客からはじめて安堵の声が漏れた。生きた心地のしないまま(パイロットの運転技術が稚拙で着陸もドスンッ、グラングラン)羽田着。こっちは毎月2度以上飛行機に乗っている身、本当に腹が立つが怒りのもってき場がない。事務所に着いて片付けの後、神保町「やぶ仙」で「棚の会」の主なメンバーによる忘年会に。手作りの「カラスミの大根巻き」をもっていく。カラスミは「名舌亭」製の極上もの。神保町から神楽坂まで徒歩で帰る間4軒ほどの店を「有志」ではしご。しかし2軒も3軒も目的なしに酒を飲んで歩くという慣習は辛い。はしごの好きな人は、ただ単にはしごやお店が好きなだけ、別に酒が好きなわけでないのがよくわかった。
 30日(火)デスクワーク。来年のホームページ用「年頭のあいさつ」原稿を書く。午後から散歩をかね神保町に手帳とカレンダーを買いに。昨日から読み始めた山本甲士『あかん』(小学館文庫)が無類の面白さで一気に読了。早速アマゾンに前作も注文する。
 31日(水)午前中デスクワーク。午後カミさん上京。家族3人で近くのエドモントホテルの中華料理屋で食事。なくしたと思って落ち込んでいたマフラー、実は息子が使っていたことを知り、頭にくるやら安堵するやら。夜はテレビを見る気がしないので九段から皇居、飯田橋経由で約1万5千歩の散歩。途中、靖国神社の夜店を冷やかす。ヘミングウェイ『日はまた昇る』を読み続けるが3分の1で以前読んだ記憶がよみがえり読むのを辞める。いつのまにか新しい年になっているが感慨も何もなし。
 1日(木)カミさんがいるので朝寝。気分がいい。受験生には正月も休みもないようで朝早く息子は予備校の自習室。快晴。秋田も快晴のようだ。人通りの少ない都内をむやみやたら散歩。途中、にぎやかな後楽園遊園地でスーパーが営業していたので餅や酒のツマミを買う。カミさんは娘夫婦のところへ年賀。夜は赤ワインでおせち。松樹剛史『スポーツドクター』読了。中村航『夏休み』途中まで。
 2日(金)腰が痛い。寝床に問題がありそうだ。箱根駅伝前半だけみて、カミさんと日本橋へショッピングに。日本橋の高島屋・地下食品でおいしそうな、というか超有名店のお惣菜がいっぱいあったので何品か買う。「一生、お店にはいけないかも」というカミさんの声に脅されて『野田岩のうなぎ』や『菊の井の穴子寿司』、『フォションのクッキー』など。帰ってまだ日の高いうちからお惣菜で白ワイン。夕方一人散歩。帰ってきて今度はビール。こんなに食欲があるのは久しぶり。体重が心配。谷崎『痴人の愛』読み始める。さすがに面白い。腰が痛いので布団の下にさらに掛け布団を敷く。
 3日(土)朝起きたら腰に違和感がない。敷布団作戦が成功したようだ。正月気分は今日まで。朝から仕事モードで机に向かう。もし自分から仕事を取り上げられたらどうなるだろう、と思うことがある。昨年末に実家にいくと86歳の父が寝たきりになっていた。頭はしっかりしているが、身体はほとんど動かせない。いよいよ来たか、という感じ。一日でも長く現役で仕事をしていたい。仕事をしながら倒れるように逝きたい。そのためには足腰を鍛え緊張感ある仕事を続けるしかない、そんな思いを強くした。午前デスクワーク、銀行チェック。箱根駅伝。午後、カミさん帰秋。千代田区内をでたらめ散歩1万5千歩。夜は酒を抜きカレーライス。『痴人の愛』読み続ける。夜中、息子が咳をするたびに目が覚める。
 4日(日)今日も快晴。秋田に送り返す荷物を作り、冷蔵庫を整理、夜の食事の準備をして秋田へ。途中コンビニでお金を降ろす。銀行よりコンビニへ行く回数が増えてしまった。羽田でラーメン。機内で『痴人の愛』読了。秋田の事務所に帰って年賀状を読み、郵便物のチェック。夕食後、いつもの散歩コース。さすが寒い。手袋に羽毛防寒具で歩き始めるがしばらく手足がしびれるほど。それでも秋田はイイ。



1月7日(水)
 今年のエアロビ初めは水曜日Wさんのレッスン、「走る脂肪燃焼」50分に「筋コン」30分。この筋コンとは腹筋のこと。腹筋はほとんどついていけず今回もWさんに失笑されるほど。この惨めさ、何でこんなに腹筋が弱いんだ自分! 焦らずサボらず力まずに続けていくしか方法はない。自分のウィークポイントがわかれば「やる気」はでる、そこをプラス思考にして乗り切っていくしかない。痩せたといってもポコンと出たままの下腹、これがウィークポイントを象徴する具体的なカタチなのである。

 お正月前後から精神的にずっと落ち込んでいる。新しい年を迎えてやる気満々とはうまくいかない。長く生きているとこんなこともあるだろう。レッスンで10日ぶりに汗を流し、精神的には少しスッキリした。これがエアロビの最大の魅力で、だからやめられない。夜は散歩をパス、書斎に閉じこもり歌野晶午『葉桜の季節に君を想うということ』(文春)を一気読み。昨年度の超話題ミステリーだが、なるほどこんなどんでん返しがあったわけか。結末の意外さにあっけにとられて何度も前のページを括りなおす。筒井康隆の『ロートレック殺人事件』や『レディ・ジョーカー』ほどの衝撃はないが、ほんのりと温かい読後感があっていい。題名も『謎解き』の一部にはいっているようなので、これ以上詳しいことは書けない。

1月8日(木)
 昨日にひき続き昼からSさんのレッスン。ステップリーボック50分に「やさしいエアロ」30分、エアロはパス。夜の散歩もパス。夕食にめずらしく白ワイン1本、食後の甘いものもけっこう食べてしまう。たまにはいいか。夜は衛星放送で小津安二郎監督の映画『お茶漬けの味』。寝る前に読んだ山本周五郎『奉行日記』の中の短編に「生き様」という言葉が出てきて驚く。「死に様」の連想語として誰かが勝手に作った最近のデタラメ語だとおもっていたのだが、山本のような丹精で品性のある言葉を使う作家がつかっていたとはショック。

1月9日(金)
 なんと三日連続のレッスンである。長いエアロビ・ライフ(ベタな造語だなあ)でも初めての経験。体調がいいのか疲れはまったくない。久しぶりのアヤド「走らない脂肪燃焼」40分と「ヒップホップ」30分。アヤドレッスンは3ヶ月ぶりくらいか。あいかわらずメリハリが利いていて単純な動きなのに汗びっしょり。ヒップホップはリズムの取り方や身体の重心のかけ方が普通のスポーツの基本動作とまったく異なるので、なかなかうまくリズム感がつかめない。特に上半身の力を抜く(意識的な脱力感)というのがうまくできない。ふとやりながら思ったのだが、これは古武術家・甲野理論の中核にある「武士たちが真剣勝負するときの身体の使い方」に近い動きなのではないか。違うかなあ。それにしても三日連続レッスンでも身体にそう疲れは感じないのはどうしたことだろう。夜の1万歩散歩を意識的に止めたのがよかったのだろうか。だとすると散歩はかなりの運動量で身体の負担になっているということか。まあ、とにかく自分の身体とブツブツ独り言で対話するのは楽しい。



1月14日(水)
 朝から氷点下の猛吹雪。が、Wさんの「走る脂肪燃焼」と「筋コン&ストレッチ」は熱い。私にとって水曜日がいまや一番の目玉レッスンだ。筋コンこと腹筋トレーニングは今回で4回目、これまでほとんど付いていけず醜態をさらしていたのだが、今日は半分ぐらいまでこなすことができた。メチャうれしい。もう2,3回のレッスンでかなりのところまでいけそうだが、明後日から東京なので今月はあと1回しか出られない。悔しい、なんとかならないものか水曜日。東京のセントラルで似たようなレッスンを探したが、ボクシング・エクササイズや太極拳、フラメンコ、ヨガといった「芸もの」が多くて、基礎的フィットネス・レッスンが少ない。そういえば今日のレッスンのなかにもボクシング・エクササイズが取り込まれていた。この調子でいけば秋田にも「テコンドー」や「スピニング」(これはどんな運動なのかよくわからない)「気功」「アロマストレッチ」といった東京と同じ芸ものレッスンが多く登場するのも時間の問題かもしれない。

 スポーツクラブに行くとき、財布を持っていくか置いていくか、いつも迷う。去年改装になってからロッカーはキーカードになり安全性は増したので最近は持っていくようになった。明後日からの東京行きのため預金をおろしたばかりで10万円近いお金が財布に入っていたので少し心配だったのだが、これまで15年近く事故は一度もない。ロッカーからジャケットを出し入れする時、意識して財布の存在を確かめるようにしているのだが、今日はその後が問題だった。汗が引かないのでジャケットを手に抱えたまま車まで戻り、乗る間際に羽織って車に乗り込んだ。エンジンをかけて1分ほど目を瞑ってエアロビの心地よい余韻に浸っていたら、コンコンと窓ガラスを叩く音。隣のパン屋さんから走ってきた若い女性が「ジャケットから落ちましたよ」と私の財布を手にしているではないか。現金のほかにカードが10種類ほど入っているものだ。汗はたちどころに引いた。もしこのまま立ち去っていたら、財布の中に名刺が入っているとはいうものの、現金の額からいって戻ってこない可能性のほうが高い。今ごろは警察に届けたりカード会社に連絡したり、会員権の再発行手続きなどで大事件になっていたのは間違いない。偶然にも向かいのパン屋さんのお客さんがこちらを見ていたので救われたわけで、車に乗ってすぐ発進していたら……いやぁ、もう冷や汗が出るのでやめよう。これからは財布を持ち歩かないことに決めた。それにしても、あまりのことにショックを受け、拾ってくださった若い女性にちゃんとお礼をしなかったのが悔やまれる。

 事務所に帰って、膨大な新聞スクラップの整理をしていたら、出版や時事、秋田や話題といった項目の中に「健康」に関する切抜きが多い。医学的な記事から芸能人の健康談義まで、参考になりそうなものは片っ端から切り抜いてある。そのなかには秋田市体育協会会報の広報委員談話などというものまであり、これは「自分は運動中に水を飲むなという指導を受けてきた。運動中にスポーツドリンクを飲むと、大丈夫かな、と思ってしまう」という自分の無知を公表して反省したものから、最近の「アエラ」特集、「単に運動してもしょうがない。筋肉に負荷をかけるトレーニングのみが有効。基礎代謝が増え太りにくくなる。さらに筋肉を休ませる時間を持つことも重要」という理論まで千差万別。最近、身体を鍛えて倒れるように逝きたい、などとかっこいいことを書いてしまったが、それは「老いて寝たきりになることを否定する差別的な自然、人間観」と批判されていた。なるほど。私がすごいなあ、と尊敬しているのはジャーナリストの鳥越俊太郎さん。彼は63歳で「耳鳴り」という難病を持ち、その病気と共存しながら前向きに生きている。健康のため食事は朝クッキーに紅茶、昼は軽くめん類一品、夜は野菜と刺し身とビール1杯で終わり。腹筋は1回3セットで900回を日課にし、決めたらやりぬく人なのだそうだ。こんな記事を読むとがぜん彼の言動に興味と信頼性が増すから不思議だ。



1月16日〜22日
 16日(金)10時JAS便で東京。秋田は朝から猛吹雪。機中、小倉千加子『結婚の条件』(朝日新聞社)読み続ける。東京はウソのような青空。「地方・小」に川上社長をお見舞い(網膜はく離で入院していた)し一緒にお茶。山梨日日の出版部の人も同席する。市ヶ谷駅前の蕎麦屋で腹ごしらえ(お銚子にカレー蕎麦)、世田谷パブリックシアターにヨン・フォッセ作、太田省吾演出『だれか、来る』を観にいく。「21世紀のベケット」といわれるフォッセの作品を太田がどのように演出するのか、荻野目慶子がどのような演技を見せるのか、興味尽きなかったが期待通りの面白さに満足。会場にはフォッセ自身も姿を見せノルウェイ大使館のお偉方やテレビ局も取材に来ていた。終わって劇場下のスーパーで買い物、家に帰って息子と遅い食事。
 17日(土)息子は今日からセンター試験。朝から雪の予報だったが晴れ。午前中デスクワーク。午後から掃除、買い物、洗濯をすませ神保町アクセスへ。晶文社営業のTさんもいてしばし雑談。岩波ホールで黒木和雄監督『美しい夏キリシマ』を観る。主演の柄本佑の自然な演技に感動。素晴らしい映画でエンドマークが出てからもしばらく立ち上がれなかった。感動の余韻をかみしめながら家に帰るのももったいなくて渋谷・ブンカムラで『生誕百年記念展 棟方志功』。夕食は渋谷駅前「元祖くじら屋」。夜、角田光代『みどりの月』読む。
 18日(日)大船渡市で『岩手開発鉄道』の出版パーテイがあるので仙台へ。駅前のジュンク堂で安斎氏(小舎の仙台営業をボランティアで手伝ってくれている人)と待ち合わせ彼の車で大船渡へ。約3時間かかる。パーティはアットホームで気分のいい会だった。途中で退席また3時間かけて仙台まで戻りホテル泊。
 19日(月)仙台は朝から雪。ホテルの朝ご飯はパン。体重が落ちてからパン食が好きになった。食の好みが明らかに変化しつつある。午前中仙台市内の書店回り。『写真帖 仙台の記憶』は順調に売れているようで一安心。新幹線で東京まで帰り(?)、またもや青空の都心をフラフラ。神保町でエアロビクス・ウェアー三点買う。事務所に帰って肉じゃがを作り、センター試験の終わった息子と近所の焼肉屋「牛角」へ。久しぶりに食べた肉はおいしかったが、若い店員(アルバイト)がカウンターでおしゃべりに余念なく肉に「つば」が飛ぶのが見えてうんざり。
 20日(火)午前中、神保町の書籍販売会社の小山さんを訪ねる。小舎が3月刊行予定の『戦国武鑑』の販促を依頼。昼は高校時代の同窓生・佐藤さんとタンメン。ふだん昼は抜いているのでカロリーを消費するつもりで神保町から秋葉原、上野から本郷、水道橋経由で飯田橋を抜けて家まで歩く。歩行数2万7千歩。夜も佐藤さんと神田の焼き鳥屋、ご馳走になる。家に帰ると中学時代の恩師(女性)が68歳の若さで突然死したとのメール。合掌。
 21日(水)昨日食べ過ぎたので今日は一日絶食することに。買い物に出たときコーヒーとサンドイッチを食べてしまったが、後は何も食べなかった。近所のビデオ屋から借りたウディ・アレンの『セレブ』と『ワイルドマン・ブルース』を観る。『ワイルド』はウディのバンドのヨーロッパツアー・ドキュメントで、いやぁミーハーなファンとしてはこたえられない映像。息子の夕食にゴーヤチャンプルつくる。
 22日(木)朝、爽快な目覚め。絶食がきいている。神保町の本屋を回って、銀座の文具屋で文具を買い、いったん家に帰り、秋田への帰り支度。4時半の飛行機なのだが羽田に着くと大雪のため「庄内」「富山」など欠航、とのアナウンス。どうやら飛び立ったが、機内で何度か「引き返すかも」のアナウンス。結局30分遅れで到着。羽田を離陸した直後からものすごい雪が突然秋田で降り始めた、ということらしい。

1月23日(金)
 朝から玄関の雪かき。雪かきというよりも雪の中から玄関を堀り出すという感じ。朝から来客、電話多し。午後1時からアヤドレッスン。先日ヴィクトリアで買ったトレーニングパンツをはくがウエストのあたりに違和感。仕事のため前半で終了。ヒップホップ出たかったのになあ。着替えて駅前ホテルでお話。公営の会館運営担当者らの集まりだったが、いつものように「自分はなにをやってるのだろう」という懐疑が頭をもたげてくる。終わっていったん事務所に帰り「和食みなみ」である人と食事。湯豆腐にシシャモに熱燗。歩いて家まで帰る。途中「ツタヤ」で新着ビデオ「アバウト・シュミット」借りる。エアロのある日は1日が充実している。



1月26日(月)
 このごろ散歩の後の深夜(といっても11時前後)、ビデオ映画を観るクセがカムバックしつつある。昨夜はショーン・コネリー出演の『小説家をみかけたら』とヘップバーンの『マイ・フェア・レディ』。いささか寝不足だが月曜日のSさんステップ・リーボックとコンビネーションは週はじめの大切な儀式。気分をしゃんとするために普段ほとんどすることのないネクタイをしめる。月曜日のスタートをうまく切れれば1週間うまく乗り切れる、月曜のレッスンは重要だ。理想をいえば月、水、金と週3回通えれば、それぞれ特徴のある別のインストラクターのレッスンを受けることができる今年はこの曜日に固定して通うというのはどうだろう。月はルーティン・ワーク、水は腹筋、金はヒップホップが目玉だ。

 レッスン終了後、レンタルビデオを返すためビデオ屋に行き、隣の喫茶店でスパゲティのランチ。お腹がすいてどうにも我慢できない。帰って家の前の雪かき。午後から来客多し。客用の大テーブルに置かれたパンをおやつ代わりに食べてしまう。いかん、食いすぎだ。おまけに東京の村上さんから自家製の干し柿が送られてきていたので2ケ食べる。うまい。

1月28日(水)
 朝からどんよりとした天気。ぼた雪も落ちてくる。10時40分からSWさんの「走る脂肪燃焼50分」。スタジオは30人を越える人で立錐の余地もない。見慣れぬ人も多い。今セントラルで最も人気のある教室なのだ。いつもの自分の場所がとれなかったので「筋コン」のトレーニングに入ると同時に場所を移動、最前列へ。場所が変わったせいなのか香水のにおいが鼻につく。レストランもそうだけどフィットネスにも強い香水は考えものだと思う(タバコよりはいいが)。腹筋は今日のメニューが軽めだったせいもあるが7割弱ぐらいまで付いていけるようになった。確実に腹筋はついてきている。うれしい。
 以前、ロッカールームのシャワーがしょっぱいと苦情を書いたが、これはどうも私自身の唇の塩分なのではないかと反省している。夜、寝るときに唇をなめるとしょっぱいのだ。体質上の何か兆候なのだろうか。

 1時から山形の来客があり、急いで事務所に帰り、汗を流しながら応対。この寒空に汗を流しているオヤジというのも怪訝な…と客には見えたことだろう。あいかわらず前日はビデオ映画三昧、完全にドツボにはまっている。1月は来客こそ多いが仕事がそんなに忙しくないというのが問題だ。特に午後の4時前後というのが「空白帯」で、昨日は秋田県のホームページをネットサーフィンして遊んでいた。15歳の「藤原鎌足の子孫」と名乗る歴史好きの少年の博学さと大人っぽい語り口のホームページに驚いたり、連日連夜の飲み会をただ日記にダラダラ書いている「秋田の酒飲み父さん」のしゃれの利いたエッセイに大笑いしたり、けっこう「ひきこもりオヤジの楽しみ」を満喫している。これで家に帰るとビデオ映画ばっかし見ているのだから、「ひきこもり」という言葉もあながち誇張ではない。怖いぞ自分。今月は30日(金)にもう一度レッスンにでれればパーフェクトだなあ。



1月30日(金)
 アヤド・レッスン。今週は月水金3回、それぞれインストラクターが違うレッスンを受講でき純粋にうれしい。偶然だがレッスンに向かう車のカーステレオから綾戸智絵が原信夫とシャープ&フラッツと競演したライブCDが流れていた。しかしアヤドレッスンはよく汗が出る。ヒップホップの間中も汗が止まらず(集中力が切れなかったということもある)、事務所に帰ってからもしばらくダラダラ流れ続けた。汗を搾り取られる感じだが気持ちはいい。体内の毒素を全部吐き出してしまったような爽快感というか。それにしてもこの黒人から生まれたストリート・ダンス(ヒップホップ)はリズムの取り方や身体の使い方が、近代スポーツの身体理論とは正反対。NBAで黒人の大男たちが迅速に相手を抜いていくときの身体の使い方あるいは「フェイント」と近い。翻って武士たちが真剣勝負のときにみせる身体の使い方、ようするに甲野の井桁理論と同じレヴェルにあるような気がする。黒人のストリート・ダンスと江戸時代の侍の身のこなしが同じというのは、もちろん私の推論に過ぎないのだが、いつか甲野さんに会う機会があったらそのへんのことを訊いてみたい。今月は8回レッスンに出た。年初めの時期にしては上出来。この調子で1年いきたいものだが、そううまく人生は行かない。

 昨日は弟からの電話で急遽、実家の老親のもとへ。親父はほぼ寝たきりになり、その介護で母がぐったり落ち込んでいるとの報告で励ましに行ってきた。親父は寝たきりとはいえ耳はちゃんと聞こえるし、話す事にも不自由はない。顔には皺も老人斑もなく肌はぷりぷりのもち肌。足が弱って動けないだけなので、逆に母は手間がかかって世話が焼け、その勝手な言動に腹が立ってしょうがない。いっそ寝たきりで何もできなくなった方が扱いやすい、というわけである。4時間ほど母の相手をし、親父のおしめを換え、帰ってきた。義父の看護でしもの世話やヘルパーの真似事は経験済みなのですぐに慣れたが、おしめを換える時、「尻を上げて!」といったら腹筋で即座にブリッジしたのには驚いた。下腹部の肉がしまっていて(肉が落ちたのだろうが)、下腹の出っ張りがコンプレックスの私はおもわず「おれの負けだ…」とつぶやいてしまった。親父を持ち上げてベットに乗せ移動させていると、身体を鍛えておいて本当によかったとしみじみ思う。人生は思い通りにはならないが、努力にはそれなりに報いる仕組みを確実に内在させている、だからすてたものでもない。


無明舎Top ◆ んだんだ劇場目次