んだんだ劇場2004年08月号 vol.68

No26−少々疲れ気味−

7月9日(金)
 今年も折り返し点を過ぎてしまった。2004年前半を総括するとひとこと、「絶不調」。2名の舎員が退舎し、本は売れない、仕事量は例年の半分ほど。個人的にも2月の帯状疱疹から最悪のスタートで、ほとんどいいことがない。長い人生にはこんな時期もあるサ、と自分を慰めているのだが、その一方で「禍福はあざなえる縄の如し」にも期待をかける。こうも不調が続くと、かならずいいことがドカンとまとめてやってくる、この「ご都合主義」は小生の人生哲学だ。

 調子が出ないときは、ひたすらずっとうずくまって機が来るのを待つ。そんなわけで暑い東京にはなるべく近づかず、家の書斎と事務所を往復するだけの日々。仕事に隙間が出れば、その時間はほとんど「食文化あきた考」というテーマで原稿を書いている。いつか書きたいと思っていたテーマなのだが、うまい具合にあるところで夏以降連載してくれそうだ。待てば海路の日和あり。
 じっとクーラーに下にいるのも不健康なので、高校野球の取材もしている。野球を入り口にして農業の問題を考えられないか、という発想からスタートしたのだが、もしかすると面白いドキュメンタリーができるかも。ウィークディーはほとんど事務所にいるが、土日は食の現場や高校野球の取材で外に出るようになった。そのついでに県内各地域で催されているイベントやユニークな会合にも積極的に顔を出す。こんなことはここ数年間考えられなかったことだ。

 先日は仙台に1泊旅行。前から原稿依頼していたYさんに会って直談判。ようやく重い腰をあげてくれそうだ。仙台で小さな本屋さんを開きたいというTさんも同席。いろんな収穫があった。秋田に帰ってきて重度の障害をもつ中学教師・三戸先生の授業参観、これはすごかった。三戸君には教師としての才能があるし、豊かな人間性が子どもたちとの授業に十全に生かされているのに感動。ここ数年、トラブル続きであきらめかけていたある本の企画が人を得て蘇った。これも驚くやらうれしいやら。エアロビ仲間のIさんからは「復帰はいつ」というあたたかい励ましのメール。もう見捨てられたと思っていたのでうれしい。暗い谷底の中でも、いくすじかの光明が見えつつある。

 久しぶりに秋田駅前に出たら見知らぬホテルができていて、なじみの飲み屋が消えていた。1年かそこらでこれだけ変わるものなのか。歩道わきの無人の車にグルルルルッと突然エンジンがかかり、「これは事故だな」と直感して周辺を見回したら、向うの歩道でアンチャンがリモコン操作していた。紛らわしいことをするな。医学部では構内全体が禁煙という英断をしたばかりなのに、今度は県内の総合病院であいついで「ケータイ許可」。タバコよりケータイのほうが世の中にかける負荷と罪は大きいと思うのだが。まあ、年をとると世の中に対して罵詈雑言を浴びせたくなることばかり、やれやれだ。



7月30日(金)
 暑い。東京に行かなくても十分に暑い。どんなに暑くても朝夕になればスーッと熱気が去っていく…はずの雪国の夏なのにずっと暑い。どうしたんだ。
 1ヶ月があっという間に過ぎた。東京には一度も行かなかった。充実した日々だったが、少々疲れ気味でもある。9月から始まる朝日新聞秋田版の連載エッセイ(週1回!)の取材と執筆、資料読みに忙殺された。新企画(秋田の文化入門ブックレットシリーズ第一期100冊)を立ち上げることになり、この準備にもてんやわんや。外でいろんな人と会い、そのうえ自分の本を書くために二つのテーマで取材中である。めちゃくちゃだ。身体は疲れ気味だが気力は充実、というところである。その一方で、すでに終わった仕事の入金が遅れて資金繰りに久しぶりに苦しんだ1ヶ月でもあった。ようやく月末ギリギリに入金して、定期を崩すという大失態は免れたが、小なりといえども経営は難しい。体調は散歩にダンベル体操を組み合わせてから好調だが、右胸の帯状疱疹痕がまだときどき痒くなる。完治していない証拠なのでスポーツクラブの今年度復帰は無理かも。逆にいえば、これまではエアロビレッスンが何よりも優先していたから会いたい人とも会わず、行きたいところにもいけなかった恨みがあった。それが自由に時間を使えるようになり、いろんなところに出かけ、人と会う機会が格段に多くなったのは逆エアロビ効果。
 14日、白桃房の芦川さんら舞踏家たちの聾学校でのワークショップを見学後、彼女らを半日間、秋田案内する。
 17日、取材を続けている大曲農業高校太田分校野球部の県予選を観戦のため横手の球場で、若者たちに交じって応援。
 21日、永六輔さんの講演お手伝い。会場の土崎の祭りもはじめてみた。
 23日、絵本の仕事で画家の金子さんと土崎の自宅で打ち合わせの後、倉田さんの定例の個展を見て、あるガラス工芸作家の作品を数点買う。美術まみれの一日。
 25日、長女が子供を連れて夏休みに帰ってきた。こまごまとした家事をやってくれるのでずいぶん私の仕事は軽減。それだけでもうれしいのだが食卓がにぎやかになると幸せな気分になる。10日間滞在の予定。
 28日、「食文化」取材で鹿角へ。東京に行くより遠くに行く感覚があったが、道路がよくなって2時間弱で行けるようになった。途中の大館でI氏と会ってブックレットの執筆を依頼。鹿角では「美ふじ」という店で美味しい郷土料理をいただいた。驚いたのは「現代の鹿角の郷土料理」といわれているホルモン鍋を食べたことだ。その美味しさにもびっくりしたがジンギスカン鍋でキャベツと一緒に「煮て」食べる調理法がユニーク。どこにルーツがあるものだろうか。


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