あこがれの海外旅行
教師2年目の終わり頃から、海外に憧れていました。"行ってみたい"と思うようになりました。
『外国の教育事情を知りたい。障害者教員と交流したい』
ずっと、行く機会を伺っていました。当時から、知人に"海外に行きたい"気持ちをメールで送っていました。"どこの国に行くの?どうやって行くの?"と具体的なことは、何もありませんでした。具体的なことを知るため、知人にメールを書いていました。また、海外に行ったことがなく、一人で行くとなると不安がありました。できることなら、一緒に行ってくれる人を探していました。英語という語学的な不安よりも、電動車椅子使用者である僕のサポートの不安です。
昨年の12月に、「外国に行って、外国の教育事情や障害者教員と交流したい」と前任校の土崎中の教頭先生に海外への気持ちを伝えました。教頭先生は「三戸さんの気持ちに沿う研修がありますよ。ただし、これは今年度の事業だから、来年度も継続するか分かりませんよ」と教えてくれました。【教職員海外コミュニケーション研修(海外自主企画研修) 実施要綱】でした。
・ 研修期間⇒1週間〜3週間程度
・ 研修先,研修内容⇒自主企画
・ 派遣人数⇒10名程度
・ 応募資格,条件⇒本県勤続年数が3年以上経過した心身ともに健康なもの
・ 服務⇒研修期間中は、職務免除扱い
・ 補助対象経費⇒研修に要する経費は、25万円を上限として助成する
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今年の1月に知人宅で、新年会がありました。そこで、海外への気持ちを話しました。「今年の夏に、アメリカのアーカンソー州の友人宅に遊びに行くので、良かったら一緒に行きませんか?」と誘ってくれました。前任校の土崎中の保護者Nさんでした。Nさんとは、土崎中に赴任する前から知り合いで、年に数回、知人宅でお酒を飲む"飲み仲間"でした。3月中旬に、Nさんから手紙が届きました。【家族旅行の手続きは進んでいます。友人宅のJane Scroggs, PhDに貴方のことを話しています。貴方の調べたいことをJane Scroggs, PhDに聞いています】
4月。秋田市立秋田西中に転勤となりました。早速、教頭先生に「今年度も海外自主企画研修事業があるのでしょうか」と聞きました。「ありますよ」とすぐに確認してくれました。4月下旬に実施要項が届きました。「〆切が5月17日だから、提出書類をゴールデンウイークに作成してこい」と教頭先生。5月17日付で、校長先生に【平成16年度教職員海外コミュニケーション研修(海外自主企画研修)派遣推薦願】を提出しました。(詳細:ドキュメントファイル)《○○スクールの訪問。○○教育施設で、1日体験学習。○○さん(障害者の教師)にインタビュー。○○へ行き、障害者の労働について聞く》と漠然とした研修内容をメールに書きました。僕の気持ちを基に、具体的な研修内容をJane Scroggs, PhDが計画してくれました。
6月2日
午後1時30分から、秋田県庁第二庁舎で面接がありました。教員採用試験以来の面接で、とても緊張しました。面接官は5人の先生で、研修の動機・研修目的・研修の成果をどのように活かしていこうと考えているのか…質問を受けました。事前に校長先生は「提出した書類を何度も目を通して、何を聞かれてもすぐに応えることができるように」とアドバイスをしていただきました。面接の準備として、アーカンソー州のHPを見ました。クリントン前アメリカ大統領の出身地であること、日本よりも気温が高いこと、乾燥していることが分かりました。研修先のイメージが沸いてきて、ますます行きたくなりました。面接後、「1週間から10日後に、面接結果をお伝えします」と担当者。学校に戻り、校長先生に報告しました。「ごくろうさん。後は結果だけだね。勤続年数や年齢など、いろいろなことを考えて、判断すると思うから、仮に今回ダメでも落ち込まないで、"次の機会にチャレンジ"という前向きな姿勢を大切にしよう」
6月17日
放課後、職員室で仕事をしていると、校長先生が「チョッと!」と言い、校長室に入りました。すると、「おめでとう!!たった今、海外研修の結果が届いて、三戸さんの派遣が決まったよ」と校長先生。「ありがとうございます」と僕は少し興奮気味。ずっと気になっていた結果が届きました。「先生方へは、どのような形で報告すると宜しいのですか」と尋ねると、「朝の打ち合わせのとき、三戸さんから皆さんに伝えてください。それまでは、内緒にして下さいね」と校長先生。「がんばってこいよ」と校長先生は握手をして、激励をしてくれました。家に帰り、Nさんにメールで報告しました。
〔よかったですね。おめでとうございます。では早速国内での移動の手配やホテル予約、航空機予約しましょう。近いうちに連絡します。お互い体調に気をつけましょう。小学館の人(名前忘れた)にもよろしく。本にしてもらうといいかも。ではまた。〕
6月28日
朝の打ち合わせがありました。「嬉しいお知らせが2つあります。1つ目は、先日、産休の先生が元気な子どもを産み、母子とも健康だそうです。そして、2つ目は私の口から言うよりも本人の口から言った方が伝わると思います。では、三戸さんどうぞ」と校長先生。同僚の先生方は、ビックリした様子。その日の放課後、「今日の三戸さんの話は、驚いたよ。"いつの間に"…出産の後だから、結婚と考えたよ。だから、三戸さんの話を聞いて、"なんだ〜"と思ったよ」と同僚の先生。その話を聞いて、思わず笑ってしまいました。「ところで、そういう話はないの?あるのなら、事前に教えてね」と同僚の先生。「今、彼女がいなくて、誰かイイ人を紹介してくれませんか」と聞くと、「そういうことは、自分で探すのよ」と別の同僚の先生。
研修に向けての準備が始まりました。旅行代理店「E&Tインターナショナル」の大澤さんからメールがありました。〔電動車椅子に関しまして:予約便機内には持ち込めませんが、国内、国際線共、携行品として無料で到着地まで運んでくれます。但し、事前に付属電気バッテリーのタイプが、ドライかウェットかを航空会社に先に知らせておく必要が有りますのでタイプをお知らせ下さい。〕その返信メール。〔バッテリーのタイプは、ウェットになります。福祉関係者に聞くと、国際線を利用する場合、「電動車椅子をバラバラに分解して、現地に着いたら、組み立てる。組み立てるのに、2時間もかかった」という話を聞いたことがあるよ。と言っていました。国内線は、バッテリーを取り外すだけで電動車椅子は分解しません。到着してから、バッテリーを取り付けるだけです。国際線の場合の電動車椅子は、どのようになるのか、確認してくれませんか。もし、ネジなどを取り外し、バラバラ状態の荷物になるとしたら、現地に到着したら、どのような対応をしたら、よろしいのでしょうか。〕
最近、知り合いになったJCI(オーダーメイドの車いす、福祉用具の開発と販売、福祉用具のレンタルを行う民間会社)秋田支店支店長の太田さんから聞いた話でした。大澤さんからのメール。〔ご指摘の、解体される可能性ですが、国際線、日本航空はボーイング707の大型ジャンボ機で問題は無さそうですが、日航、アメリカン航空の国内便がやや小さい機種に成りますので先生のご指摘の点を確認しましたところ、該当、電動車椅子のサイズ、(縦、横、高さ)と重量を知らせて欲しいとの事でしたので安全を期する為、お知らせ下さい。その際、車椅子のメーカー名、機種等、もお知らせ頂くと、航空会社で参考になると思われます。本件はとても大事な事なので、更に確認を続け、先生が安心して旅行にお出かけになれる様細かい点、判り次第、お知らせします。〕
電動車椅子で海外へ行くことは、結構大掛かりな事になりそう。
太田さんに聞き、大澤さんにメールを送りました。
〔電動車椅子のメーカー⇒秋田スズキ
機種⇒MC−16
重量⇒88kg(バッテリ−1個15kg×2,本体58g)〕
詳しいサイズは、太田さんが図面を送ってくれました。それをそのまま大澤さんにFAXをしました。
1つ大きな問題が起こりました。電動車椅子の高さです。高さが70cm以上ある場合、「シカゴ⇔ファイアットビル」間のアメリカン航空の貨物入れに入らないとのこと。飛行機の貨物入れは飛行機の大きさに比例することが分かりました。太田さんに愛用の電動車椅子の高さを聞いたら「70cm以上あるよ。その対策を考えなければ…」と一言。
このとき、人とのつながりの大切さを感じました。このことを知らないで、行っていたら、現地でしどろもどろになっていました。初めての海外。一つ一つのことを体験しながら、学んでいきたい…ひょっとしたら、これも研修かも…と思えてきました。
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