んだんだ劇場2005年8月号 vol.80

No38−気の抜けない熱い日々−

ハードで熱い1週間が過ぎて
7月24日〜30日
しばらくぶりで秋田を留守にして出張。6月は東京事務所の引越しでほとんどの時間をとられ、7月はしゃにむに仕事をこなし事務所2階の部屋にこもって外に出なかった。今年は、まだ前半が終わったばかりなのに危機感もあったせいか30点近い本を出した(去年は1年間で20点余)。この一週間の出張中にも3本の本ができてくる。まあこれで前半戦の打ち止め、40日間ほど新刊のない期間に入る。その束の間の休暇(ではないけど似たようなものか)。
24日(日)仙台へ。『熱血こうごろう荒町風雲録』の出版パーティー。出版パーティーといっても普通のお祝いではなく前半は音楽コンサート(入場料500円で4百人ちかく入っていた)で、後半が場所を移しての立食パーティー、こちらは50人ほどか。著者の出雲さんは70歳を超えている仙台の町おこし名物オヤジで、とにかく精力的。パーティー途中で抜け出し(最近は最後までいることはほとんどない)ホテルに帰って佐藤優『国家の罠』(新潮社)を読む。車中の続きを読みたくてしょうがなかったのだ。外務省のラスプーチンと呼ばれた、あの鈴木宗男議員の朋友の獄中記なのだが、民主党を秘書費流用で辞めた山本某の『獄中記』よりはるかにおもしろい。担当検事との戦いと友情、といった構成をとっているのもユニークで、その辺のミステリー作家真っ青の内容だ。
25日(月)午前中の新幹線で東京へ。東京駅からそのまま羽田に向かい、4時半の高知行きの飛行機へ。羽田・高知間の往復チケットはインターネットの割引でも5万円以上する。秋田東京間とフライト時間は変わらないのに、なぜ2倍以上もするのか。片道2万6千円もするチケットというのは異常だ。飛行機に乗ってからホテル代込みのツアークーポンを買うべきだったことに気がつき、愕然とする。たぶんホテル代2泊コミで3万前後でこれたのではないか。いつも旅していても、こんなチョンボをしてしまうのが情けない。車中機中ともパーカーの『束縛』(ハヤカワ文庫)を読み続ける。女性探偵サニー・ランドル・シリーズの第3弾である。夕方、はりまや橋付近のホテルにチェックイン。右足くるぶしのあたりにいやな感じの痛みがある。何年も前に患った通風の予感。7時、高知市内の印刷所で出版の仕事をしているKさん、Nさんのお二人の女性に「とんちゃん」というなかなか味のある居酒屋でごちそうになる。高知では有名な古い焼トン屋さんのようだ。帰りに繁華街の柳町をぶらぶら。夜のババヘラ(路上アイス)を取材。いろんなおもしろい話が聞けた。今回の高知は、この路上アイスの取材が目的。早めにホテルに帰り『束縛』の続きを読む。右足くるぶし、猛烈に痛む。これは通風の前兆だ。
26日(火)午前中、大正期から路上アイスを売っているというはりまや橋の「1×1=1」という珍しい名前のアイス屋さんを取材。午後からは我慢できなくなり、ホテル近くの大きな総合病院に飛び込む。血圧は133の77で異常なし。若い医師に事情を説明し、とりあえず通風の痛み止めの薬を出してもらう。薬を服みホテルで2時間ほど仮眠をとると、たいぶ痛みがとれた。読む本がなくなったので文庫を数冊購入。その同じ百貨店でインターメッツオの夏用ズボンも買う。旅にでるとかならずといっていいほどインターメッツオの服を1着買うのが習慣になってしまった。ふだんはまったく服を買ったりしないからちょうどいい機会なのだ。夜は一人で「すごろく」という寿司居酒屋のようなところで飲む。ここは高知のライターMさんから紹介されたところで、高知では一番うまい店とのこと。その言違わず大満足。おまけに安い。
27日(水)右足の痛み、かなり引く。高知はピーカンの真夏日。朝から精力的に活動開始。高知城まで歩き、アイスクリンを探すが昨日に引き続いて空振り。不況やコンビニの影響で日曜以外、観光地でも路上アイスは出なくなったようだ。バスで今度は桂浜に移動。ここにはかろうじて一軒のみ。いろいろ話を聞く。せっかくなので坂本竜馬記念館にも入るが中身の薄っぺらさにガックリ。桂浜からタクシーで高知竜馬空港へ。ここまで竜馬かよ。高知は坂本竜馬に依存しすぎ。飛行場の中でアイスクリンを食べている人が多いのに驚き、こっそり写真を一枚とる。6時半羽田着。今日から仲村清司『住まなきゃわからない沖縄』(新潮文庫)。高知で沖縄というのもヘンな気分だが、仲村さんは先日の沖縄行きでも大変にお世話になった人、本も面白い。中野の事務所について片づけ、お茶漬けで晩飯。ホッとする。
28日(木)旅の疲れをとるべく今日は休日。仕事はしない。午前中に本屋に行き、10冊ほど文庫本を購入。午後からは部屋の片づけで時間を費やす。片づけるほどの広さもないのだが、6月にあわただしく引っ越してその整理をしていないのだ。だいぶ片付き、秋田に送り返す荷物がダンボール4個ほどになった。夕方、気になっていた近所の「第2力酒蔵」という変わった名前の居酒屋に入る。中野では有名な人気居酒屋で、魚のおいしい店とのこと。入ってまずはアルバイトの兄ちゃんがいないことにホッとする。板前だけで10人以上働いている居酒屋というのは壮観、魚もうまい。ここは常連になりそうだなあ。本棚にあった『神楽坂ホン書き旅館』(NHK出版)読み始める。
29日(金)もう飛行機はウンザリなので新幹線で秋田に帰ろうと朝早く東京駅に行くが、午前中の便の「禁煙指定席」はすべて売り切れ。やむをえず喫煙席を取るが、どう考えてもあの煙たなびく靄のかかった車両に4時間いるのは堪えがたく午後の禁煙席を取り直す。大丸・紀伊国屋書店(三省堂だっけ)のコーヒーショップで時間をつぶす。4時間の移動はさすがにきついが「神楽坂」読了。「和可菜」が木暮美千代の妹の経営する旅館だったと知らなかった。
事務所につき、いつものたまった仕事をかたづけ、家に帰ると長女が息子を連れて里帰り中。私は「ジイジィ」と呼ばれる老人になってしまう。こんなハードな仕事を精力的にこなしているのに。夜中まで残務整理。
30日(土)昨夜読み始めた山本甲士『ばちもん』(小学館文庫)がおもしろくて3時まで起きて読了、眠い。それにしてもこの著者の『どろ』『あかん』『かび』とみんなおもしろくて大ファンなのだ。今日は午後から市内のホテルで『安成貞雄を祖先とす』の出版パーティー。高齢者の多い会だったが何年ぶりでお会いする方も。2次会に誘われるが「孫と遊ばなければならないので」とそそくさと帰ってくる。これで激動の一週間の予定はほぼ終了。来週からお盆にかけてはミラノやサンパウロなど外国のお客さんはじめいろんな人が来舎予定。そのうえ8月中に150枚くらいの分量の本を1冊書き下ろす予定なので、まだまだ気の抜けない熱い日々が続きそうだ。


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