夏休みをとって
8月30日〜9月4日
7月、8月の両月とも続けてエアロビクスは、ゼロ。仕事に集中していたといえばカッコいいが、行くだけの心と身体の余裕がないのだ。仕事は確かに忙しいし、それ以外の時間は散歩と読書、大型テレビ(東京事務所から持ち帰り2階のシャチョ―室に置いてある)だけで、いっぱいいっぱい。ふらりと外に出たり、小さな旅行をしたり、映画を観にいったりも、まったくしていない。とにかく仕事中心で、その行動半径は小さくなるばかり。そして、いつのまにか今月は決算月だ。身体の調子もまあまあだし、仕事もようやく本来の状態の8割がた戻りつつある。さてさて今年の後半戦は気分一新、「暴れん坊将軍」で飛び回るぞ、って意味がわからない。この時期、夏休みを1週間とることができて、うきうきする気分を久しぶりに味わっている。
30日(火)午後2時半のANA便で東京。中野についてすぐに神楽坂に直行。今日は若手編集者らの集まりがあり、その飲み会に参加。出席者は筑摩や中公、学陽、ポプラといった出版社の編集者たち。若い人と話すのは楽しい。ずっと「海堂」というハイカラな瓶に入った薄めの芋焼酎。最近、いろんな店でこの焼酎が置いてある。東京の酒場はとにかく口コミや流行に弱い。どこかでAという酒を置いて評判がいいと一晩でそのウワサは街を駆け巡ってしまう。会を終え今日の主催者のT子さんと近くのバーで打上げ。タクシーで中野まで帰る。
31日(水)組み立て式のベットで寝ているのだがギシギシとうるさい。すぐ横に息子が寝ているので熟睡とはなかなかいかない。なんとかしなければ。昼近くまで寝る。久しぶりに神保町に出て書店を四,五軒ハシゴ。10冊ほど本を買う。アマゾンでばっかり本を買っていると書店に入る喜びを忘れそうになるが、棚ぞろえの見事な書店に入ると「本屋っていいなあ」とやはり思う。でも文庫本はアマゾンのユーズド(古本)でたいてい1円から80円くらいまでの価格で買えるから、なかなかアマゾン離れができないでいる。昼ごはんは高校時代の友人Sさんと、いつもの「出雲蕎麦」、「ルノワール」でコーヒー。「アクセス」を冷やかし(というよりも本が重いのでアクセスから秋田に発送)、市ヶ谷の地方小センターへ。今日は小社担当のKさん57回目の誕生日。Kさん、社長と小生の3人で神楽坂のぼり口の老舗の鰻屋へ。この3人で飲むというのはかなり珍しい。早めに帰って桐野夏生「柔らかい頬」を読む。
1日(木)昼まで寝る。夜やはり眠られず朝方ようやく寝付く。中野の飲食街の蕎麦屋へ。古民家風や民芸風のつくりで、メニューがやたらと多く、板前が若者で、「いらっしゃいませ、こんにちは」と若い店員がオームのように復唱する店は99パーセント、まずい。そんな店の一つに入ってしまった。気をつけてはいるのだが。今日も神保町を散策。センターに顔を出し中野へ。中野駅前で息子と待ち合わせて寿司屋で夕食。来週からペルーに一人旅するというので2人だけの送別会。駅前で別れて赤坂にオープンしたばかりの生ハム専門バーのスペイン料理「グランビア」へ。店は地下にありなかなか風情がある。秋田から進出したなじみの店なので表敬訪問したのだが、盛況でうれしい。ワインに酔いながら千代田線で帰宅。
2日(金)今日から「旅」に出る。東京駅に行ってから行き先を新潟に決めた。車中「柔らかい頬」読了。新潟市についてから一番近い駅前のワシントンホテルに宿泊。駅ビル地下で桐野夏生「アウト」を買う。もう彼女の小説に夢中。会話や人間関係のリアリティがたまらない。人殺しやミステリーは苦手なのだが彼女のものは無条件で大丈夫。ずっとどこにも出かけず本を読んでいたかったので、夕食は駅前ビルの居酒屋へ。ところがこの店が大当たり。メニュー少なく、板前は中年男性、接客は中年女性の「いらこい店」(いらっしゃいませ、こんにちはを連呼する若者のバカ店)とは正反対の居酒屋で、ノドクロの刺し身、やきとり、地元産の枝豆、海草サラダ、皆ものすごくうまい。新潟の見事な地酒もそろっていたが、これを飲みだすとヤバイほど肴がおいしいので焼酎で切り抜ける。いやはや新潟の食のレベルはかなり高い。ホテルに帰ってさっそく「アウト」上巻を夜中までかかって読了。この小説は昔読んだはずなのだが、まったく憶えていない。恥ずかしい、けどおもしろい。
3日(土)今日は朝から新潟市内を散歩。駅からまっすぐ海まで出て、街をジグザグに戻ってくるデタラメコースで1万3千歩。約2時間。街を流れる信濃川がきれいで街に潤いを与えている。きれいな街で長身の美人が多い。午後の電車で村上市へ。駅に降り立つといつものようにまっすぐに歩き出し、突き当たりの「お城山」までいって、ゆっくりデタラメに寄り道しながら駅に帰ってくる。1時間1万歩。ここは有名なお酒「〆張鶴」の故里だが、大洋盛という酒蔵もある。お酒はもうこの10数年、新潟の「酒・ほしの」で買い求めているので、新潟の酒には馴染みが深いのだ。駅前からタクシーで宿泊地・瀬波温泉へ。夕陽がきれいにみえる温泉宿というので決めたのだが、残念ながら薄ぼんやりした夕陽しか見えなかった。風呂にはいって夕食、そそくさと寝床に入って「アウト」の下巻を読みはじめ、夜中まで読了。先週から寝ても醒めても桐野夏生である。新刊の「魂萌え!」があまりにおもしろく、結果、せっかくの夏休みが寝不足の日々になってしまった責任はひとえに彼女に。
4日(日)朝9時の羽越本線「いなほ」で秋田へ。車窓からきれいな日本海が見えるのだが桐野本のおかげでずっと眠り続け、いつのまにか秋田着。駅で立ち蕎麦を食べ、いざ戦場へ。まあ、いい夏休みだった、といっておこう。
気仙沼のひどい寿司屋
9月18日〜22日
18日(日)前日眠れなかった。次の日に何かあるような夜に限って眠れなくなるのは小心者だからだろうか。このところ体調はいいし、仕事も回復基調で忙しい。そんなときだからこそリフレッシュの意味もあり、ずっと行こうと思ってもなかなか機会のなかった三陸へ行くことに決めた。3連休の中日、寝不足のまま10時の新幹線で一関へ。本当は花巻で降りて、ある農協の産直販売所を取材する予定だったが、日曜でアポが取れない。この知らない土地に行くと、まずは駅からまっすぐ歩き出す。突き当たったらデタラメに曲がりくねりながら駅まで戻ってくる。こんな何もない旅が楽しい。一関では駅前の蕎麦屋で昼食をとり、市街の中心部を流れる磐井川へ。「いものこ会」のシーズンが始まっていて河川敷に何組かの鍋好きたちが群れていた。山形の「芋煮会」とちがって、この岩手のいものこ会は小生の故郷湯沢のいものこ会と同じ形式の鍋なので(牛肉を使わない)親近感がある。磐井川沿いには全国に名を知られるジャズ喫茶「ベイシー」がある。店主の菅原さんとは何度もお会いしているのだが店に行くのははじめて。噂どおり「ものすごいリアルなレコードの音」に驚いた。菅原さんと30分ほど話して駅前まで戻り、書店にふらりと入り新刊の『身体の言い分』(内田樹)を買う。棚ぞろえも接客もいいし、店の雰囲気も活気があり、お客さんもたくさん入っている書店でビックリしたが、気仙沼に向かう大船渡戸線の車中で、あの書店は有名な「北上書房」であることに気がついた。経営者のご夫婦には何度もお会いしているのに、レジにいた奥さんに気がつかず挨拶もせずに帰ってきたドジな私。気仙沼には夕方着。駅前のホテルで寿司屋の名前を聞き、そこまでテクテク歩いて夕食に出かける。出前で忙しいらしく上1人前にお銚子1本出てくるのに1時間かかり、勘定4千円なり。ほとんど詐欺同然で店は不潔、寿司はべちゃべちゃ、酒はまずい。「今日は日曜なのでうまい店はすべて休み」とタクシーの運転手にいわれたが、後の祭り。
19日(月)翌朝はバスで唐桑半島を1周。観光バスではなく普通の通勤バスで、これがなかなか楽しい。近い将来、唐桑の本を出す予定なので、その下見を兼ねていたのだが本当に何もないところだなあ。気仙沼まで戻り大船渡戸線で一関、新幹線で東京へ。新幹線は連休帰りで満席、運良く仙台から座席をゲットすることができたが、立ちっぱなしだときつかっただろうなあ。中野の事務所に着いたのは9時を回っていた。息子はペルー旅行中で2日前にメキシコにいると連絡入る。インターネットカフェからのメールで、気楽なもんである。ひとりゆっくり、のびのびと寝る。
20日(火)昼まで熟睡。秋田と仕事の連絡を取りファックスで確認。ファックスって本当に便利だ。はじめて早稲田通りを越へ哲学堂公園を経て新井薬師駅まで散歩。9千歩。夜の7時からは「アクセス」の女性陣3人、明石書店のF君の計5人で、神保町の「名舌亭」で宴席。ここのレバーはいつ食べても絶品。アクセスの店長のリクエストで2次会は赤坂のスペイン料理屋「グランビア」へ。ワインを2本あける(この数時間後の翌朝、ズームイン朝というテレビ番組で、この店が紹介されたらしい)。
21日(水)今日は何も予定が入っていない。1日ブラブラ散歩でもして過ごそうと早稲田通りを左に折れ高円寺周辺を3時間散策。1万2千歩。それでも歩き足らなくて電車で神保町まで。ブラブラ本屋をはしごして、東京堂書店で、いつも昼飯を一緒する高校同窓生のSさんとバッタリ、神保町は狭い。神保町の居酒屋でなにはともあれ一献。今日も酒を飲んでしまった。
22日(木)朝早くおきて、帰りの準備。飛行機の時間までけっこうあるので品川駅を見物することにする。駅構内を探検し、周辺の高層オフィス街を往復して1万歩。昼飯も駅ビルでとり、スターバックスで短い仕事用の原稿を1本書く。午後の飛行機の便で秋田へ。秋田は小雨でもう半そででは寒かった。もう当分遊んでる暇はなくなるなあ。