んだんだ劇場2005年2月号 vol.74
No19  お金は出ていくばかり

出費、出費、また出費
 チェンマイでは相変わらずからっとした気持ちのいい天気が続いている。洗濯が趣味の私としては、なんともうれしい限りである。朝干した洗濯物も、昼にはぱりっと乾いてしまう。ああ、ずーっとこういう季節だといいのになあ。
 さて、念願の冷蔵庫、オーブン付のガス台、そして電子レンジを買った。夫の城であるキッチンも、狭いのが玉に瑕ではあるが、それらしく整った。そうそう、トースターに炊飯器も。どうせいつかは買うのだから、今まとめて全部買ってしまえ!と思い切って一気に購入したのだが、我が家の懐はどんどん淋しくなっていく。
 それに加え、長女も幼稚園に行き始めたので、その学費、諸費一般に送り迎えの車のガソリン代と、出費はとどまるところを知らない。
 夫と二人で、
「引っ越したばかりだからね。最初は出費がかさむけどしょうがないよね。」
となぐさめあっている。
 収入のない現在の私たちにできることは、なるべく買い物に行かないこと(必要ないものも、ついつい買ってしまう!)、外の用事はまとめて済ませ、なるべく出かけないこと(ガソリン代の節約)、そして外食しないこと(基本的に食べ物は安いが、夫も私も大食いなので結局高くついてしまう)である。
 現在職探し中の私ではあるが、リサーチの準備が整うまではなにかとばたばた忙しく、今仕事が見つかったとしてもすぐに働き始めることができない。人生、こういうときもあるよね。しばらくはじっとがまんの私たちである。

幼稚園その2
 さて、長女の幼稚園である。先月書いた幼稚園その1は、体験入園2日目でストップ。そして今度は、いくつか見に行った幼稚園の中から、1月からの入園も可能であった私立の幼稚園に行ってみることにした。もし、よさそうであれば、新学期が始まる5月から正式に入園する予定である。
 今度の幼稚園は教室の中におもちゃもあり、いろいろな絵や文字で壁もきれいに飾られている。夫の友人の子供たちも卒園した幼稚園とのことで、あまり深く考えず(私の悪い癖なのであるが)、長女を送り出した。
 ところが、数日たったある日、幼稚園からの帰りの車の中で長女が言ったのである。
「髪の長い先生がね、髪の短い先生のこと、いつもいつも怒るの。(一つのクラスに先生が2人いる)」
子供の前で怒るのは、ちょっとなあ、と思いながら、
「ほんとうに?」
と聞くと、
「うん。子供のおしりも、何かでぶってたよ。」
というではないか。3歳児に体罰???
 急に心配になり、次の日教室の外から見学させてもらうことにした。
 そして、またしても見てしまったのである。
 一日に一度だけ、子供用の番組をみることになっているテレビ。それなのに、朝一番からニュースが流れ、子供たちはテレビの前にならべられた椅子に座ってそれを見ている。
 子供たちがそろうと、幼稚園の庭で歌って踊って朝の会。
 その後、教室に入ると、先生が子供を1人ずつ前によんで宿題をチェックしているよう。その間、他の子供たちは、自分の順番が来るのをじっと座って待っている。そしてやっと30人分の宿題を見終わった先生が立ち上がった。
 今度は勉強の時間で、文字や数字を書く練習をするようだ。子供たちは先生からずーっと離れた教室の端っこにかたまって座り、先生は前に立ってノートに書かれた小さな文字を指差しながら、何か説明している。子供たちに見えるのかなあ、と思いながら見ていると、案の定、子供たちが退屈しておしゃべりを始めたようだ。すると先生がそのうちの一人を教室の外に出して、ドアを閉めてしまった。しばらくはよかったが、また子供たちがおしゃべりを始めたようだ。するとまた先生が一人の子供を外に出そうとした。しかしその子が必死に抵抗したためあきらめた模様である。
 今度は一人一人に紙が配られた。それぞれ字を書く練習をし、出来上がったら一人一人先生に見てもらう。と、順番を待っている子供たちが騒ぎ出した。すると今度は先生が、定規を持って立ち上がり、騒いでいた子供たちのお尻をたたいて外に出してしまった。
 それで午前中が終わってしまった。念のため、もう一人の先生にその後の予定を聞くと、昼ごはんの後、2時間の昼ね、おやつ、そして帰宅とのこと。午後はとりたてて何もしないらしい。
 一体子供たちはいつ遊ぶのだろう??先生に、
「毎日、こういう風に勉強するんですか?」
と聞くと、そうだとのこと。何だかとても3歳児のクラスとは思えない。しかも3歳児にあの体罰。なんだか子供たちが不憫になってしまった。
 ここの教育システムでは、幼稚園からかなりの読み書きを学ばなくてはならないらしい。それは私がどうこう言えるものではないが、同じ学ぶにしても、教師が前に立って説明するだけではなく、もっと子供たちが楽しみながら学べる方法があるはずである。3歳児に、先生の長い説明を静かに聞けというほうが無理なのではないか?それを、黙って聞いていないからといって体罰を与えるなんて、私には納得がいかない。子供が興味を持てるような教え方ができない教師の側に問題があるのではないか。つい熱くなってしまう私なのである。
 そして何よりも、私は長女にもっと思いっきり遊んでほしいし、彼女の好きなことを好きなだけやってほしいのだ。そして彼女の持っている個性、可能性をどんどんのばしてほしいのだ。小学校に入ったらいやでも勉強しなくてはならない。今思いっきり遊ばなければ、一体いつ遊ぶのだろうか。この年齢の子供たちにとって、遊ぶことは学ぶことなのに。
 それなら幼稚園に行かせずに、家で遊ばせればいいじゃないかと言われてしまうかもしれない。でもそれでは、いつも親とだけ遊ぶことになってしまう。親と遊ぶよりも他の子供と遊ぶ方がずーっと楽しい長女にとって、幼稚園は子供同士で遊べる数少ない場所のひとつなのである。
 見学に来た時に、もっと時間をかけてよく見ておくべきであった。本当に長女には申し訳ないことをしてしまったが、もう一度気合を入れて幼稚園探しをする必要がありそうだ。今度はしっかり半日見学させてもらわなくては。

タイ語
 先週からタイ語を習い始めた。以前タイで働いていた時に習ったことはあったのだが、結婚して以来、夫に頼りっきりで、全く上達しなかった私のタイ語である。
 今回は、リサーチで子供たちにインタビューしたり、絵を描いてもらったりするときに、ある程度自分でコミュニケーションを取りたいというのが目的なので、ちょっと気合が入っている。
 しかし、タイ語は難しい。同じ音でもトーンによって全く意味がかわってしまうのだ。そして、このトーン、私はとっても苦手なのである。あやしげなトーンで話す私を、
「なんの歌、歌ってるの?」
といつも夫はからかうのだが、でもいいのだ。今度こそ、今度こそ、タイ語をものにするぞ!

お菓子作り
 夫と私の共通の趣味はお菓子作りである。共通とはいっても、作るのが趣味なのは夫で、私は食べる係である。
 もともと私が大の甘い物好きなので、約5年前にロンドンに住んでいた時に暇をもてあましていた夫が、コミュニティーカレッジのベーカリーコースを受講した。その後、長女が生まれ、彼女の1歳の誕生日のバースデーケーキを作ったのを皮切りに、何かの記念日には必ず、そうでなくとも月一度はケーキを焼いている。
 しかし、家で作るケーキの味に慣れてしまうと、市販の特に安いケーキはあまりにも甘い上、香料がきつくて食べられなくなってしまう。とこう言うと、夫はとってもうれしそうな顔をして、もっと作ってくれるので大変うれしい。
 去年はピザづくりにも挑戦してみたが、これもなかなかであった。やっぱり自分の家で作るのはおいしい!以前はイタリア料理があまり好きではなかった夫であるが、このピザづくりをきっかけに、イタリア料理も食卓にのぼるようになったので私はとても幸せだ。
 子供がうまれてからは、何かとケンカの多い私たち。しかし、ケーキを焼けば、おいしくて私はにこにこ、ほめられて夫もにこにこ、とお菓子作りは我が家の家庭円満の秘訣である。


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