んだんだ劇場2005年5月号 vol.77
No22  日本の春は、いいな

久々の桜
 約1年ぶりに日本に帰国した。
 私の実家の辺りでは、4月も第2週に入ってから桜が咲き始め、まさに抜群のタイミングであった。夫にとっても2人の娘にとっても、初めての桜である。よくよく考えてみたら、私も、故郷の桜を見るのは高校を卒業して以来、なんと実に18年ぶりであった。
 久々に見る桜はやっぱりよかった。満開の桜は、幼稚園生だった頃、ビニール袋に花びらをいっぱい拾い集めた遠い記憶まで呼び覚まし、あれからもう30年以上も経っているんだなあ、と何だか不思議な気持ちになった。
 実家では母が、私と妹が小さい頃遊んだおもちゃを、孫のためにと出してきてくれた。なんとも懐かしいリカちゃん人形や着せ替え用の服、お手玉に折り紙。よくとっておいてくれたものである。つい私の方が夢中になってしまい、「あーっ、無理に引っ張っちゃダメー!」と長女に声を上げる始末。ほんとに懐かしいおもちゃばかりで、すっかりタイムトリップしてしまった。
 さて今回は約3週間滞在し、週末には妹家族に会ったり、高校や研修医時代の友人、北京にいた時の友人に会ったりした。結婚して子供ができると、独身時代の友人とはどんどん疎遠になってしまいがちだ。しかもこんな生活をしていると尚更。そんなわけで、帰国した際には多少無理をしてでも友人に会いに出かけていくようにしているのだが、さすがに乳幼児を2人連れての電車移動はちょっときつかった。でも久々に会う友人たちは相変わらずで、研修医時代の友人に会えば10年若返り、高校時代の友人に会えば20年若返り、短い時間であったが本当に楽しいひと時を過ごすことができた。
 実家では長女がおじいちゃんおばあちゃんにべったり。おいしい甘いものも食べさせてもらえるし、私に怒られればかばってもらえる。食事前にお菓子を食べさせたりしてしまうので、私はちょっとむっとしていたのだが、年に一回位はこういうことがあってもいいのかもしれない。それに、長女が「おばあちゃん、遊ぼう!」と行ってくれると、私の身体にも心にも余裕ができて、とってもよい。やっぱり核家族は子供にとっても親にとっても、ちょっと息苦しい空間なのかもしれないなあ。
 それにしても、日本の春はやっぱりいい。家のまわりにはつくしが顔を出し、オオイヌノフグリやホトケノザ、ナズナやタンポポが咲き乱れている。今まで帰国するのはいつも夏だったのだが、これからは春にしようかなあ。

家のこと
 さて、日本からチェンマイに戻ってきた。家はまだそのままで、立ち退くようにという連絡もない。でもいつ何時、引っ越してくださいといわれるかわからない。なんとも落ち着かない感じである。
 電話をつけよう、庭をきれいにしよう、と考えても、どうせいつかは出て行かなきゃならないからなあ、という思うと踏ん切りがつかない。とっても中途半端なのである。
 今回帰国した時に会った友人たちは、しっかり地に足のついた生活をし、特に結婚して子供のいる友人は、自分の家もしっかり持っていた。
 我が家の場合は、無収入の上、私がいつ終わるかわからない学生生活を送っているというダブルパンチで、不安定極まりない。しかしそれだからこそ、せめて住む場所くらいは決めたいなあと思うのだ。今後チェンマイに定住しないことになったとしても、やはり年に一度帰省する場所も必要だ。
 でも引っ越す場所を決めるとなると、いろいろなところを見て歩く必要がある。となると、ここチェンマイでは自分の車であちこち行くことになるのだが、このところどんどん上がっているガソリン代がきつい。ガソリンを入れるたびにどんどん消えていく500バーツ(日本円では1500円弱だが、こちらの感覚では5000円くらい)。く、苦しい。夢に見てしまいそうだ。
 貧乏だからしようがないのだが、それだけに、どこで思い切って使うかという決断がとても重要になってくる。でも、それがなんとも難しいのだ。
 一体どうしたらよいのか?
 ちょっと真剣に考えようと夫と二人、紙と鉛筆を前に座っても、次女がすぐに寄ってきて、紙を取って食べてしまう。全然集中できないではないか!
 しかも部屋の扇風機は、暑い空気をただただかき回すだけで、全然涼しくない。あー、もう昼寝してしまえ!とみんなで川の字になって寝てしまう、最近の私たちなのである。

おまけ
 今月はおまけとしてカレン語の歌を紹介したいと思う。これは振り付きで歌われる歌である。
 
♪大きい頭に大きな耳、それからぴょこんと飛び出たお尻
それが私の名前
私が道を歩けば、みんな叫ぶんだ
"見て見て!
大きい頭に大きな耳、
それからぴょこんと飛び出たお尻が来るよ!
トゥララララララ!"


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