んだんだ劇場2005年7月号 vol.79
No24  ぼちぼちでんなあ

果物の季節
 雨季はおいしい果物の季節だ。マンゴー、ライチー、マンゴスチン。私の大好きな真っ赤なランブータンもたくさん市場に並んでいる。
 私が生まれて初めてタイを訪れたのは19歳の夏休み。やはり雨季で、市場は色とりどりの果物であふれかえっていた。それまでマンゴーとパパイヤの区別もつかなかった私にとって、初めて見て食べる珍しい果物の数々は感動以外の何ものでもなく、毎日毎日果物ばっかり食べていた。
 中でも私が特に好きなのはマンゴーとランブータンである。マンゴーはまだ青いのをぽりぽり食べてもよし、よーく熟したとろとろのを食べてもよし。でも何といってもおいしいのは、真ん中が熟しかかった青いマンゴーで、その甘酸っぱい味は文句なしの一等賞!である。
 ランブータンは赤い皮にとげとげの生えた面白い形をしている。なぜこういう外観なのか、それにはきっととっても深―いわけがあるのではないか、と私は考えているのだが、中身は意外にシンプルな半透明の白い実で、甘過ぎずスッキリした味の果物だ。

とげとげランブータン
 私の夢は、いつか家を建てることができたら、庭中にありとあらゆる果物の木を植えること。そして定年退職後は、庭になる様々な果物を眺めながら(もちろん食べながら!)のーんびりと暮らすのである。あー、楽しみ!

データ収集開始!
 6月からとうとうデータ収集が始まった。小学校の3年生から6年生までを対象としたアンケート調査である。
 ボランティア1人、リサーチアシスタント、私と次女(面倒を見てくれる人がみつからなかった)の4人で小学校へ。
 リサーチに参加してくれる小学校は地域の公立小学校で、生徒数は100人から200人。各学年1クラスずつなので、大体20人弱から30人強のクラスとなる。午前中に2クラス、午後に2クラスというあんばいだ。
 まず、ボランティアのJさんがギターを片手に教室に入り、私たちの紹介と訪問の目的を簡単に説明。その後は振り付きの歌で子供たちと盛り上がる。ひと段落したら、アンケート用紙を配りJさんが質問をひとつひとつ読み上げる。そしてみんなが答え終わったら、また歌で盛り上がってしめくくり。
 その間、私とリサーチアシスタントは担任の先生から、エイズ患者を親に持つ生徒の日頃の様子を聞く。次女はベビーカーに乗せられ、歌にあわせて手拍子をしたり、誰かに抱かれて校内を散歩したり。

歌で盛り上がる

小学校の子供たち−真ん中でつぶされそうになっているのが次女
 さすがに初日はちょっと手間取ったが、2日目からは要領もつかみ、スムーズにいくようになった。
 しかし3年生の中には読み書きがあまりできない子供もいて、果たしてどこまでアンケートの答えを信用してよいのか、という感じである。パイロットの時には3年生の子供にも答えてもらって、これなら大丈夫と思っていたのだが、、、。もしかしたら4年生以上の答えのみを使うしかないかもしれない。
 5日間かけて5つの小学校をまわった。手元には答えてもらったアンケートの山ができた。が、コンピューターにデータを入力する間もなく、今週からは先生へのインタビュー、子供たちとのフォーカスグループディスカッションのために、また小学校を訪問だ。これが終わったらすぐにデータの解析を始めなくてはならない。一体どんな答えが返ってきたのか、楽しみでもありちょっと不安でもあり。結果がでたら、ここでも徐々に紹介していきたいと思う。

お仕事
 さて肝心の仕事のほうであるが、一言で言えば、ぼちぼちでんなー、という感じ。5月は旅行シーズンだったこともあり、日本人の患者さんも多かったが、6月に入ってからは少なくなった。まあ、あせってもしようがないので、タイ風に私もあせらずのんびりいくことにする。
 患者さんは、こちらに仕事で来ている方を始め、退職後長期滞在されている方もかなり多い。日本で暮らすのにはちょっと物足りない年金でも、チェンマイでは余裕のある暮らしができる、というのがポイントなのであろう。でも、私たちが年金世代になった時には、もうそんな余裕さえなくなっているのだろうなあ、とふと思う。それこそ年金なんかもらえるのであろうか??やっぱり今のうちにチェンマイに家を建てておくべきなのかもしれない。そしてゆくゆくは自給自足の生活??うーん、わからないが、とりあえず今は日々食べていくために働くしかないのである。

ベビーサイン
 まだ言葉の話せない赤ちゃんと手話を使ってコミュニケーションするベビーサイン。我が家も長女のときからやってみているが、これがなんとも感動なのである。
 我が家は空港のすぐ裏にあるので、ほぼ一時間おきにゴーッというものすごい音とともに飛行機が発着する。現在10ヶ月になる次女もその音が気になったらしく、ある日、私のほうをみて、「これは何の音?」というような顔をした。そこで私は、両手を広げて飛行機の真似をし、「これは飛行機の音だよ。」と教えた。
 そして約一時間後、また飛行機が離陸した時に、なんと今度は次女が両手を広げて、「ううーっ」と言ったのである。つまり、「あ、また同じ音。飛行機だ!」というわけである。その時私はベビーサインを教えようと意識していたわけではなかったのだが、彼女はそれをサインとしてあっという間に覚えてしまったのだ。
 そうそう、ベビーサイン、長女の時にもやったっけ、と思い出した私は、早速 "ワンワン(犬)サイン"を教えることにした。これは手を握ったり開いたりするだけという簡単なものである。そして近所にいる犬を指差して、「これはねワンワンだよ。」とサインをしてみせた。次女は今回もあっという間に習得し、遠くで犬の鳴き声が聞こえても、私の顔をみながら「わうわう。」といいながら手をにぎにぎする。
 幸いなことに、飛行機の音は一時間おきにするし、近所には犬がいやというほどいるので、次女はそのたびにサインをしながら私の顔をみる。そして私が、「ほんとだ。飛行機だね。」とか、「あ、ワンワンがないてるね。」と言うと、満足そうな顔をする。私も、あー、通じ合ってるなあ、となんだかとても幸せな気持ちになる。
 言葉が話せるようになるずっと前から、赤ちゃんはいろいろなことを伝えたがっているのだ。言葉が話せないということと、何もわかっていないということは全く別のことで、赤ちゃんは大人が思うよりずっとずっといろんなことがわかっているのだ。それを大人に気づかせてくれるベビーサイン、やっぱりすごい!
 最近は、スーパーで近くにいた人の携帯電話が鳴っても、すぐに手を耳に当て、「あ?あー?」と電話サインをする次女。もしかして天才?二人目でもやっぱり親馬鹿になってしまう私である。


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