んだんだ劇場2005年11月号 vol.83
No28 3人目は・・・

風邪と心配性の母
 どうやら雨季も終わりに近づいたようだ。毎日よい天気が続き、夜はだいぶ涼しくなった。なんだか奇妙なのは、日中はどうみても夏なのに、夜6時すぎには日がとっぷりと暮れてしまうこと。日がどんどん短くなっているのだ。そりゃそうだよなあ、日本だったら秋だもんなあ、となんとなく日本の秋が懐かしくなる。
 ついうっかり体調を崩し、長女からもらった風邪で私も久々にダウン。続いて次女もダウンし、夫は私たち3人の看病に明け暮れた。
 うっかり母親に風邪をひいてしまったと電話で言ったら、その日から頻繁に電話がかかってくるようになった。「具合はどうなの?大丈夫なの?」ととても心配している。あー、言うんじゃなかった、と後悔する。母親というものはいつもいつも子どものこと(それから孫のこと)が心配なのだ。
 とはいえ、3人とも一週間ですっかり回復したので全く心配なしである。これからはあんまり余計なことを言わないように気をつけなくては。でもあれ以来、電話で、「どう?元気なの?」と聞かれ、「うん、元気だよ」と私が言っても、「本当?何か隠してるんじゃないでしょうねー。」と妙に疑い深くなってしまった母親である。日頃いかに心配をかけているか、何だか改めてしみじみと申し訳ない気持ちになってしまった。

リサーチその後
 やばい。だらけきっている。10月はタイの学校が休みなので、データ収集もちょっと休憩。それにつられて、こっちもすっかりお休みムードになってしまって、まーったくなーんにもやる気がしない。ここに書くのもおぞましいのだが、6月にやったアンケート調査の結果をコンピューターに入力するのが終わったのがつい最近。子供たちに描いてもらった絵が、ちょっと変色してきたので(!!)あわてて写真にとって保存したのもつい数日前。
 去年つくったリサーチ計画には、データ収集と並行して分析もする、なんてカッコつけて書いてあるのだが、はっきりいってそういうレベルではない。ときどき病院で患者さんに、「日曜日と月曜日以外の日は(私の勤務日は日曜と月曜のみ)一体何をしているんですか?」と聞かれる。「実は大学院生なので、リサーチをしているんですよ。」といいながら実際のところ何にもしていないので、ちょっと後ろめたい気持ちになる。
 こんなことでいいのか??もちろんよくないに決まっているのだが、日中は子供の世話に追われ、夜8時には子供と共に就寝し、朝6時半に起床する私の心はこの季節のチェンマイの空のようにすっきりと晴れ渡り、あせりというものは影も形もない。今までの私はどちらかといえば、現状に満足せずにもっと上を目指していくぞ!という、結果はともかくとして向上心あふれるタイプの人間であったのだが、今はもうすっかり現状に満足満足。そのせいかどうも切羽詰り感というものがないのだ。しかも窓の外をみれば、近所の牛たちが草をむしゃむしゃと食みながら通り過ぎてゆき、それを見た次女が、「うぉうぉ!」と手をにぎにぎするベビーサインをしながら、一生懸命それを私に伝えようとしているではないか。あー、なんと愛しく平和な情景なのであろう。
 大体がこんな感じなので、あせること自体がとうてい不可能なのだ。こんなんでは進歩が望めないといわれてしまいそうだが、そんなことはどうでもよいのである。しかも、「子供2人産んだんだもの、私の人生十分意味があったよね。」とさらに満ち足りてしまうあたり、私はどうにかなってしまったのであろうか。
 というわけで、とても心静かに落ち着いた日々を送っているのだ。このところは、「このまま、チェンマイでもいいかな・・・」とふと思ってしまったりすることもあるが、唯一私を現実の世界に引き戻しているのは、今の収入では子どもの教育費に問題ありという事実と、去年イギリスで費やした多くのポンドなのである・・・。ああ、やばいなあ。
 
3人目
 といっても妊娠したわけではない。なぜか最近また妊娠したくなってきたのである。妊婦さんとすれ違ったり、赤ちゃんを見たりすると、「あー、いいなあ。私ももう一回赤ちゃん産みたいなあー」とため息がでてしまう。
 もともと子供は3人ほしいと思っていた。できれば年子で3人、そうでなければ2度目の妊娠は双子で、と予定(?)していた。しかし予定通りにはいかず、長女を産んだあと高プロラクチン血症で治療をしていたため、次女との間が3年も空いてしまった。そして次女が産まれてからは、2人の世話に追われ、もうとても3人目なんてという感じだったのだ。
 が、ある朝長女が言ったのである。
「ねえ、夢でねえ、ママから男の子の赤ちゃんが産まれたよ。」
ちょうど3人目のことを考えていた頃だったのでちょっとびっくり。これはやはり神のおぼし召しか??とついその気になってしまう私なのだが、現実はそう簡単ではない。
 だいたい子供2人に手を焼きまくっているのだ。この上もう一人増えたら一体どうなってしまうのか。しかも私も夫ももう35を過ぎているのだ。体力的にもつらい。経済的にも苦しい。それに来年は大学院3年目。なるべく4年で終わらせたいのでこれからは結構忙しくなるはずだ。
 やっぱりやめたほうがいいよねえ。
 でも我が家のようなちょっと複雑な家庭環境の場合、子供たちに兄弟・姉妹という一番近い仲間を作ってやることは親の義務のような気がしているのも事実なのだ。もしかしたらまたどこかに放浪していくかもしれないし、そうなった場合、子供にとって近くに遊び仲間がいて悩みを打ち明けられる人がいることはとても大切だと思うからだ。
 でも、ねえ。悩みながらも、次女のベビー用品や衣類などをまた大切に保管してしまう私なのである。


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