んだんだ劇場2006年1月号 vol.85

No42−人並みにいろんなことがあった−

いろんなことのあった1年だった
12月15日〜20日
15日(木)久しぶりの出張。11月からずっと忙しく土日もほとんど仕事をしていた。月金までは本業、土日は自分の原稿書きや取材、そんな毎日で飛ぶように日々が過ぎていく。夜はアマゾンのユーズドで買ったウディ・アレンのDVDやビデオを観て、1時間半の散歩をすれば、1日は終わる。短い。カミさんの帰りは8時ころ、夕食の準備に1時間かかるので7時までじっくり仕事できるのはうれしいが、散歩の時間枠を取るのが大変になった。
それにしても今年は雪が早い。12月で早々と雪景色、雪かきの日々になるとは思っていなかった。ふだんですら事務所にこもっているのに、雪のせいでますます「閉塞感」が嵩じてしまう。午後の新幹線で仙台へ。ある著者(候補)と打ち合わせの後、ホテルで仮眠。冬の太平洋側の青空は散歩フリークにはたまらない魅力だが、やっぱり少々疲れている。夜は仙台の専門書店(政府刊行物)の店長T君と駅前の居酒屋。最近人と話していないせいかT君相手に饒舌になってしまう。しゃべりすぎで自己嫌悪。ホテルは乾燥していて唇とノドがカラカラ。バスマットを水浸しにしてベッド横に置き、風呂に湯を張ってから寝る。こんなところで風邪をひいてはたまらない。そういえばここ数年まったく風邪を引いてない。これは自慢していいよなあ。
16日(金)仙台から東京へ。移動中はキヨスクで買った林真理子の文庫本(「聖家族のランチ」)。おもしろくてやめられなくなり、もう1冊似たような文庫買う。中野の事務所で一休みして、神保町へ。やはり雪のないにぎわいの街を歩くのは気分がいい。何冊か本を買い、神楽坂へ。ここで地方小の忘年会。終わって社長のK氏とビールで2次会、早めに事務所に帰って寝る。
17日(土)昼ころまで寝てしまう。午後から東京駅に行き頼まれていた買い物をする。いつも行く大丸6階の紀伊国屋喫茶店で2時間読書。それにしても外吹く風はけっこう寒いのに建物に入ると暖房の効きすぎで苦しくなる。この温度差は雪国の人間にはこたえるなあ。神保町に移動、アクセスで一仕事したあと向かいの中華料理屋で息子と待ち合わせて夕食。事務所に帰ると土曜なのにSから連絡事項がいっぱいファックスで入っている。そのほとんどが頭の痛くなるような事案ばかり。出張に来たことを後悔。自費出版でやむなく出した本の著者から「印税をよこせ」とケチをつけられたり、好意で出した本なのに無理難題を吹っかけられる。秋田にいれば即座に怒鳴り返しているのだが、離れているのでそれもできないのが歯がゆい(冷静になれて、いいのかも)。ある秋田県内の私立の高校入試問題にうちの出版物の写真を使うので許可してほしい、という連絡もあった。その入試とやらが数日後なのだという。所有者への許可申請や著作権の問題もあり「ダメ」と直接教頭に電話して断る。このごろの教師の頭の中身はどうなってるのか。県のある外郭団体の連続市民講座も主催者のお役人的対応に嫌気がさして、丁重にお断りする。講師などというと格好いいが1時間半しゃべって1万円程度の謝礼を渡されるのが関の山。安さに文句を言いたいのではない。「知」や「情報」への敬意がまったくないのが腹立たしい。タレント文化人には何十万も払うくせに。
18日(日)朝から日本橋の周辺をウロウロ。高島屋向かいの老舗の鰻屋で昼食。酒は刈穂と天の戸が置いている。そこが気に入り熱燗3本でほろ酔い。そのまま新幹線で静岡へ。市内でひとつ打ち合わせを済ませ、駅そばのファミレスで夕食。ホテルに帰って海外ミステリー・『ある日系人の肖像』を読み始める。ここのビジネスホテルも乾燥がひどく読書に集中できない。
19日(月)午前中に静岡市内を軽く散歩。喫茶店で今年1年の覚書のようなメモを作る。こうしてじっくり自分と向き合う時間はありそうでなかなかない。コーヒー2杯で2時間ねばる。新幹線で名古屋へ。名古屋も50数年ぶりの大雪。うちの著者のK氏と手羽先で有名な「世界の山ちゃん」で一献。ホテルに帰る。とにかく外での飲食をさっと切り上げられるようになった自分をほめてやりたい。食欲が年とともに薄れただけだが、腹八分目というのが気持ちいい。こんなことがわかるまで時間がかかりすぎ。
20日(火)今日はボーナス支給日で新刊の「秋田むがしこ」もできてくる日。この日のうちに秋田に帰らなければならない。朝9時の新幹線で東京まで出て、そこから「こまち」で秋田着は午後4時。いやぁ日本はけっこう広い。空はきれいな青空から北に向かうにつれ鉛色にグラデーションのように変わっていく。車中ひたすら平凡社ライブラリー『逝きし日の面影』を読み続け、まったく退屈せず秋田まで帰ってこられた。やっぱり旅は本だね。今年はいろんなことがあった。たぶんこの何十年のなかでも特筆すべき1年といえるかも。いろんなことがありすぎてとても一気には書けないが、いずれ時間がたってからこの1年を振りかえりたい。事務所に帰るといつものように山のように仕事。エアロビ仲間のIさんからも久しぶりにメール。すぐさま「忘年会をやりましょう」と送信。何の組織や趣味の団体にも所属していないので、毎年、忘年会といえば会社、友人との2人会、地方小、棚の会(出版関係者)と4つしかない。これにエアロビの仲間の忘年会がくわわれば、けっこう人並みかな。


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