んだんだ劇場2006年8月号 vol.92
No38
韓国へ

 昨年の10月下旬、秋田県教職員組合(以下、秋教組と略する)の組合行事を紹介する1枚のビラに、目が留まりました。そのビラには『イムジン河を越えよう!秋教組平和の旅 韓国編 参加者を募集します』と見出しがありました。そのビラを見ながら、"韓国かぁ…"と取り留めのないイメージを抱きました。期日は『2006年1月9日〜12日』の3泊4日。申込受付まで、日程的に余裕がありました。その期間に、"今回、韓国に行くことができるチャンス"と思いを巡らせていました。
○ 行先…ソウルとその近郊
○ 経費…1人10万円程度
 2004年8月のアメリカ研修は、初めての海外でした。出国前は不安でしたが、帰国したとき、明らかに僕の意識に変化を感じました。アメリカのアーカンソー州での1週間の滞在は、僕に幅広い価値観や視野の広がりを与えてくれました。アメリカの文化や風習に触れて、日本と比較できるようになり、人間的に一回り成長しました。アメリカ研修を終えての率直な感想は、"大げさに言えば、僕の世界観が変わるので、これからも積極的に海外へ行きたい"でした。何だか、ここまで考えていたら、自然と行きたくなりました。母に話をすると、「あなたの好きにしなさい」の一言。(そうだよな〜)と思いながら、「母さん。韓国に行くからね」。「私は行ける機会があれば、どんどんと行った方が良いと思うよ。きっと、あなた自身のためにもなるのでは…」と母。僕は組合の方に電話で、「韓国に行きたいので、申込をしたい」と伝えました。『募集人員15名程度(申込順)』と書いていたので、定員オーバーかなぁと少し不安な気持ちが過ぎりました。「まだ、大丈夫だよ」と組合の方の話を聞いて、安心しました。「申込書に記入して、秋教組本部にFAXするね」と言うと、「私から担当者に伝えるからいいよ」と言ってくれました。ビラの最後に書いてある今回の旅行の基本方針が気に入りました。
・ ゆったりした計画で、リフレッシュできる旅にする
・ 手作り、手探り旅行に徹し、非効率と不便を楽しむ
・ その原則としてガイドはなし
 12月中旬、秋田西中の一室で、簡単な打ち合わせをしました。今回の旅行は僕を含めて、男性4名の旅であることと、3泊4日の行動予定表が渡されました。

1月9日(月)
9時30分 僕の自宅に迎えに来る
10時30分 秋田空港着
12時10分 秋田空港発
14時40分 仁川空港着
16時40分 ホテル着

1月10日(火)
7時30分 朝食
 9時00分 ソウル市内歴史研修
《主なコース:パコダ公園,西大門刑務所歴史館,朝鮮王宮,安重根記念館》
17時00分 ホテル着
18時00分 夕食(ソウル市内レストラン)
19時30分 フリータイム・グループ研修

1月11日(水)
7時30分 朝食
 9時00分 イムジン河に出発
14時00分 統一展望台訪問
17時00分 夕食
19時30分 ホテル着、フリータイム

1月12日(木)
7時00分 ホテル出発
9時55分 仁川空港着
12時10分

「だいたい、このような日程で進めていくよ。予定通りにならないことも、旅の面白さでもあるからね」と今回の研修の主担当。僕と旅行するとき、僕の移動手段で共通理解を図る必要があります。「今回の旅行で、三戸さんは、どのような移動手段を考えていますか」と聞かれました。「電動車イスを考えています。韓国の冬は雪が積もらないので、電動車イスが雪に埋もれることがないと思って」と話しました。このときも、アメリカ研修の経験が役に立ちました。電動車イスを利用して、国際線に乗りました。そのときに、どのように乗ったのか、その経験があるので、とても心強いです。体験をしていないと、イメージは付き難いですが、単に国内線と機内に乗り込む手順が同じでした。
 実際に、学校の玄関にある僕の通勤用の電動車イスを見てもらいました。
 主担当「電動車イスの重さは、何sあるのですか。折りたたみはできますか」
 僕「全部で80sあります。折り畳むことは、できません」
 主担当「旅行中、タクシーで移動するときもあるので、折りたたみできる方がいいなぁ…」
 僕「折り畳みの車イスは、手動なので、僕が自由に移動できなくなります」
 主担当「ワハハ…大丈夫だよ。みんなで、押していくよ」
 僕「では、よろしくお願いします」
 主担当「組合の本部に、手動の車イスがあるので、当日はそれを利用しましょう」
 旅行前の、このような確認は必要です。僕にとって、旅行の行動予定と同じくらい、移動手段のことが大切です。それは、僕と一緒に旅行へ行く全員が同じ思いだろうと感じました。だから、お互いに確認しあって、不思議な安心感がありました。
 韓国へ旅行することになったら、韓国のことが気になりました。ニュースを見ていて、韓国のソウル市内が中継されると、意識して見るようになりました。(まもなく、ここに行くのだなぁ)と期待が溢れてきました。確かに、映像を見ていても、雪が降っていなく、道路が乾いていました。傍目から、(ソウルの冬は暖かいのかな)と思いきや、1日の最低気温は−7℃くらい。秋田に住んでいると、【冬=雪】のイメージがあり、−7℃で道路が乾いていると言われても、ピンときませんでした。
 海外旅行に行く前は、準備のために買い物をしました。【韓国は、骨身に沁みる寒さ】と、数人が口を揃えて話をしてくれました。ある人は「ニットの帽子を持っていった方がいいよ」とアドバイスをくれました。普段、僕は帽子を被る習慣はなく、ニットの帽子を持っていませんでした。そこで、ニットの帽子を買いに行き、ついでに厚手のセーターとズボン、足元まで隠れるベンチコートを購入しました。また、今回の韓国旅行に向けて、大きな買い物をしました。それは、手提げ鞄に入る"モバイルパソコン"を購入しました。宿泊を伴う場合、空いた時間に気になったことをメモしたり、写真の整理ができたりして、とても効率が良いなぁと思いました。アダプタを含めた重さが約1.37s。ショルダーバックに入れて、肩にかけても、普段の通勤時に比べて、軽いような印象を持ちました。前日に、スーツケースに衣類などを収納しました。だけど、アメリカ研修の経験があるので、海外旅行なのですが国内旅行のような気がしました。アメリカ研修は成田空港からシカゴ空港まで、飛行時間が約13時間でしたが、今回は秋田空港から仁川空港まで飛行時間は約2時間30分。時差もないので、全く不安を感じることはありませんでした。だから、"外国へ行くぞ"という重い決意のノリでなく、"外国へ行くんだなぁ"と軽いノリでした。物理的に、韓国は近いなぁと印象を持ちました。
 1月9日(月)。朝から、雪が吹雪いている天気。僕のアパートは雄物川の川沿いにあり、さながら地吹雪のようになっていました。予定通り、9時30分頃、僕のアパートへ迎えに来ました。スーツケースと手提げ鞄が僕の手荷物です。車で、約1時間で秋田空港へ着きました。韓国旅行のメンバーは、Iさん、Sさん、Tさんと僕の4人。4人の共通項は、秋田県教職員組合の組合員であること。荷物を降ろし、国際線ロビーへ向かいました。
 大韓航空のカウンターの前で、パスポートを見ながら、『出国申告書』を記入しました。「私が代筆しましょうか」とSさん。何となく、自分で書きたかったので「ありがとう。でも、自分で書くよ。書いてほしいとき、お願いするよ」と言いました。
 大韓航空のカウンターに手荷物を預け、出国手続きをしました。空港内は全て係員が僕の車イスを押してくれました。僕にとって、当たり前な光景ですが、「親切に対応してくれるんだね。やはり、障害者と行動を共にしないと、気が付かない部分」と他のメンバーは口を揃えていました。
 「お客さまは、最初に案内させていただきます」と係員。機内に入る30分くらい前に、手動の車イスから機内搭乗用の車イスに乗り換えました。そして、手動の車イスはコンテナでしっかりと収納。いつもなら、すぐに機内搭乗用の車イスに乗り換えますが、今回は1時間以上の待ち時間があり、「ぎりぎりまで手動の車イスを使用してもよい」と話がありました。
 機内に乗り込みました。いよいよ、海外2回目韓国編。


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