んだんだ劇場2006年6月号 vol.90
No35 複雑なるファミリーの行末

虫たちの季節
 このところ、夕方になると強風とともに雨が降る。雨が降り出したとたんに、庭の植物が見違えるようにいきいきしてくる。虫たちも元気いっぱいで、羽蟻やカナブンの大群が毎晩家の中までやってきて、大暴れした挙句にそのまま虫の息になってしまうので、次の日はその処理で大変だ。私はとりあえず掃除機で、みんなしゅーっと吸い込んでしまうことにしているのだが、その後彼らが掃除機の中で何をしているのか、それはあまりにも恐ろしいので考えないことにしている。
 夫は嬉々としてこれらの虫たちをつかまえ、フライパンで煎って味付けして食べている。近所の皆も大好きだ。昆虫類は北タイの名産特産なのである。
 私は食に関しては結構なんでもイケルくちなのだが、昆虫類だけはどうも苦手だ。食わず嫌いということはわかっているのだが、どうも食べる勇気が出ない。夫はそんな私にもう見切りをつけ、今回はいつのまにか次女に食べさせていた。「ちょ、ちょっと、やめてよー。」と思わず叫んでしまったが、よく考えてみれば、高蛋白の栄養食品? で、でもその虫を食べた口で、私のおっぱいを飲むんだよね。う、、、ち、ちょっと複雑な心境。

女の園
 現在長女が通っている幼稚園のクラスでは11人中8人が女の子である。市内の他のインターナショナル幼稚園の年中クラスでも、10人中8人が女の子、もう一校では15人中10人が女の子と、圧倒的に女の子が多い。
 長女はチェンマイ市内に住む日本語を話す子どもたちのための子ども会にも入っているのだが、その子ども会も26人中19人が女の子。うちの近所の子どもたちも11人中男の子はわずか3人である。そういえば、ロンドンで仲良くしていた夫の友人たちの子どもたちも6人全員が女の子で、男の子は1人もいなかった。
 偶然といってしまえばそれまでだが、それにしてもちょっと気になる極端さ。私はひそかに、これは異変だと思っている。
 環境ホルモンのせいか、現代社会のストレスのせいか、それとも何のせいかわからないけれど、とにかく生物学的に強い女が世界的に増えているような気がする。
 このままいけば、我が娘たちが結婚適齢期となるころには、相手を探すのにひと苦労するのは必至である。そうなると、一夫多妻制が導入されるのか、はたまた結婚せず、子供も持たない女性が増えるのか、それとも??ということになる。
 既に長女のクラスでは、女の子全員の間で、ラモン君というかっこいい男の子の争奪戦が行われているのだ。うーん、なんだかちょっと心配だなあ。

父親のこと
 今日の夕方、東京に住む妹からメールが入り、父が脳梗塞で緊急入院したと知らされた。ここ数年ずっと体調がよくなかった父なので、いつも気にかかってはいたのだが、いざ入院となるとやはりあせる。
 彼女もまだ父に会っていないとのことで、詳しい状況はあまりよくわからないが、しばらくは絶対安静らしい。とりあえず明日彼女が様子を見に行くので、その報告次第では一度帰国する予定だ。
 もし長期入院、療養ということになれば、私たちもチェンマイを一旦引き揚げて、早めに帰国することも考える必要があるだろう。こんな勝手気ままに放浪しているが、一応二人姉妹の長女。両親の面倒をみるのは、やっぱり私の責任だ。特に私のような親不孝者はどう考えても罪滅ぼしをしなくてはならないよねー。
 両親はいつまでも元気でいてくれるような気がしていたのだが、ふと気づけば、私も30代後半。当時としては遅く結婚した両親が、すでに高齢者となっていても何の不思議もないのだ。でもそれに気づくのは実際に何か起こってからなんだよね。
 父親の病状に、私の論文、就職、そして子供たちの学校。うーん、さらに複雑な構図になってしまった我がファミリーの行方。一体どうなることやら。


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