んだんだ劇場2006年12月号 vol.96
No40 やり直しに、片付けに、んー

ロンドンへ、そしてチェンマイの冬
 10月の末から11月初めにかけてロンドンに行ってきた。例によって指導教官とのミーティングのためである。寒さを覚悟していったのだが、意外にも空は快晴、暖かく、過ごしやすい毎日であった。
 さて、今回改めて驚いたのは、ロンドンの人の歩く速さである。誰も彼もが、ものすごい早足で前かがみになって歩いている。なぜ、そんなに急ぐのか、よくわからないけれど、異様に速い。まるで徒競走をしているようだ。私も試しについていこうとしたが、すぐに息が切れた。私の体はのんびりゆっくりのタイのペースになっているらしい。でもどちらかというと、このペースの方が健康的な気もするなあ。
 さて今回のミーティングでは、自分なりにやってみた統計分析の間違いを指摘され、また一からやり直すことになってしまった。ま、また、やり直し、、、。しかし、論文が完成してから間違いに気づくよりは、ずっとよいのだ。がんばろう。
 そして今回は今後の予定についても話し合った。結論としては、今年中に全て書き上げ、年明けすぐに指導教官に提出。1月末にもう一度ロンドンへ行き、指導教官とミーティング。2月3月中に論文を大学院内の他の教官に読んでもらい、コメントをもらう。そして最終的に論文を手直しして、4月中に完成、提出。そして7月ごろに口頭試問、とこんな感じだ。
 いよいよ、という感じである。
 いよいよ、なのだが、この期に及んでもまだ怠け癖が抜けず、睡眠時間9時間の毎日である。最近ぐんと肌寒くなり、朝晩には暖かいジャケットが必要な今日この頃。布団のなかはぬくぬくと気持ちよく、一度入ってしまうと出られないのだ。んー、つらい、、。

引越し
 約6年間お世話になった家に別れを告げ、とうとう引越しをすることになった。家主がローンの支払いをしていなかったため、銀行に差し押さえられられていた例の借家。その後どう話がついたのかわからないが、ある日家主がやってきて、買い手がみつかったのでそろそろ出てほしい、と言ったのだ。
 いずれはこうなるだろうと思っていたので、チェンマイ郊外に小さな土地を買い、家を建てていたのだが、それもようやく完成し、とうとう引っ越しのはこびとなった。
 が、引越ばかりしている私も、今回はちょっとつらかった。
 2000年にロンドンから帰国したときから借り始め、長女が生まれ、育ち、そして2004年暮れから現在まで、長女と次女の成長をずっと見守ってくれた家なのだ。気づけば、庭の木々もいつのまにか大きくなっている。
 引越しの荷物をまとめながら、出産後病院から戻ってきた長女を寝室に寝かせていたら、アリがやってきて目の脇をかんだことやら、初めての授乳で乳首が切れて、泣き泣きおっぱいをやったことやら、やっと寝付いた長女の脇に寝転んで、窓の外を飛び交う蛍をみたことやら、いろんなことが急に思い出されて、なんだか涙が出そうになってしまった。
 実際のところ、長女を産んだときと今回を除いて、この家には毎年一度か二度帰省した際に滞在しただけだ。しかし、「我が家」と呼べる場所はやはりここで、いつもここから出発し、またここに帰ってきていたのだ。そう考えてみると、このチェンマイの家には日本の実家の次に長く住んだことになる。この家との別れがつらいのも無理はない。
 またとてもよい隣人たちに恵まれ、子供たちも近所の子供たちといつもよく遊んでいたので、これもさびしい。家は買えても、よい隣人はそうはいかないので、本当に残念である。
 心の中で家にお別れを言って、新しい家に向かった。
 ダンボール箱、スーツケース、その他、捨てるはずだったのに、なぜか荷物に紛れて持ってきてしまった不用品の数々。ものすごい荷物に囲まれながら、すぐに片付けを始めなくてはならなかったのだが、な、なんと私と夫が下痢、嘔吐で倒れてしまったのである。
 幸いなことに一人ずつ順番に倒れたので、子供たちの世話は何とかすることができたのだが、片付けは遅れに遅れた。やっとなんとか形になってきたのが、ごく最近のこと。とはいえ、まだまだ家のなかはごちゃごちゃである。引越しの感傷に浸っているヒマもない。
 いつになったらすっかり片付くのだろうか、、、。ちょっと不安な今日この頃である。きちんと片付くまでは、落ち着いて論文も書けやしない、、と言い訳をしている誰かさんもいるし。困ったなあ。


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