んだんだ劇場2007年10月号 vol.106

No17− 気がつけば秋−

靴のサイズを間違えて半世紀
 山登りの靴を履くようになって、自分の靴のサイズが、もの心ついてからずっと間違えていたことに気がついた。遅すぎる。
 普段に履くサイズは26・5センチ。スキー靴でも革靴でもウオーキングやエアロビ用の運動シューズも、試し履きしてから買うことはほとんどない。見た目とサイズで衝動買いが常で、履いているうちに足になじむもの、と信じて疑わなかったのだ。
 その雲行きが怪しくなったのは5年ほど前、エアロビクス・シューズのつま先がきつく、運動中に爪にうっ血ができた。
 靴を買い換える時、ショップで従来のサイズより大きい27センチを薦められた。履いてみるとつま先に余裕があり違和感がなく履きやすい。少し大きめの靴を買って、ひもで調節するのがスポーツシューズの基本、ということすら知らなかったのだ。スキー靴がきつくて、足の負担が尋常ではなかったのもサイズが合わなかったからで、それまではスキー靴はきつくて履きにくいもの、と疑わなかった。
 このあたりから買う靴はすべて27センチにサイズアップした。こうなると以前買った26・5センチはすべて窮屈で、長く履いているのが苦痛になってしまった。
 今年に入って、歩くときの姿勢矯正のためMBT(マサイ・ベアフット・テクノロジー)というちょっと特殊なシューズを買った。この時にかなり正確に足のサイズを測ってもらった。裸足では左右とも26センチ。思っていたより小さい。でも靴の適正サイズは28.3センチ。これが一番フィットすることがわかった。自分でもビックリ。
 最近買ったハイキングシューズのサイズは28・5センチ。何足を履いてみた結果一番ピッタリなのが、このサイズ。つま先に余裕があり、横幅に窮屈感のないのが靴選びの重要なファクターである。靴は何足も履いてから買うもの、という当たり前のことを、還暦近くなって初めてわかったオヤジでした。
アウトドア関係はすでにサイズアップ
普通履きはいまだ26・5で間に合わせてます

インターネット的な秋?
 気がつけば秋。朝夕の冷え込みを感じるようになった。
 今年3回目になる「愛読者のためのDM通信」送付の時期だ。早いなあ。3カ月にいっぺんだから7,8月は何をしていたんだろうと考えてみたら、ほとんど新聞や書下ろしの原稿書き。事務所にこもっている。
 週末は山歩きで、うまくストレスを発散できていたので、原稿書きもそれほど苦痛ではなかったのだが、本業の仕事のほうは低調でヒマ。
秋からは少しずつ忙しくなる予定だが、ここ数年の傾向として仕事の好不調の波がくっきりしてきた。
 本の売れ行きが劇的に好転するということはありえないだろうが、目に見えない新しい波のようなものが、すぐ近くでうねっているような気もするのだが、それがどのようなものなのか、皆目見当がつかない。

 ずっと前に読んだ糸井重里著『インターネット的』(PHP新書)を再読してみた。2001年に読んだ時、あまり意味がよくわからず印象に残っていなかった本だが、妙に気になり6年後に再読、やっぱり、にらんだとおり示唆に富んだ言葉が満載の「すごい」本だった。6年前の自分がアホで内容についていけなかっただけだ。
 ネットの可能性やビジネスとの相性といった下世話な話は皆無だ。ネットを自家薬籠中のものにすることで、自分と周りの仕事や暮らしがどのように変わるか、「難しくない哲学」として論じている。今読んでもまったく古くないどころか、逆に今だから「目からうろこ」のエピソードが詰まっている。コンピュータやインターネットと言う武器を手に入れた時、糸井は、これで大きな組織にぺこぺこ従属するようなイヤな仕事をしなくてすむ「場所」を手に入れることができるかもしれない、と感じたという。その場所が「ほぼ日刊イトイ新聞」なのだが、糸井はもう一つ「消費者のクリエイテブ」という哲学も披露している。ネットのバラ色の未来を脳天気に書いているバカ本とまったく違い、ドッグイヤーといわれる進歩の激しいネット社会の本質をやわらかく描き出している一冊である。
いい本ですよ
岩手山の中腹で

ピンボケですが東京猿楽町のうまかったイタリア食堂

秋・訃報・コインランドリー
 秋のDM準備も今週末で終了。久しぶりにノンビリ、週末をゴロ寝で過ごしてます。新聞連載も河北新報が半年間26回分の原稿を書き終わり、9月中には終了します。残っているのは朝日県版の月1コラムと北鹿新報(大館市)の週1コラム(「メタボオヤジのどすこい奮戦記」)だけ、ずいぶん楽になりました。
 秋になると「読書の季節」でもあり、いろんなところから「お話」の声がかかるようになります。私の話すようなことでいいのなら、と出来る限り出かけるようにしてますが、今年は紅葉の山登りを最優先に決めています。山登りの日程を先に決め、あいている日であれば、どこにでも出かける予定にしています。

 この夏、知り合いがずいぶん亡くなりました。1度しか会ったことがない言語学者の柴田武先生や劇作家の太田省吾さんなども含めれば10人近い知り合いを亡くしました。その多くが突然の死です。よく行った本荘市の蕎麦屋の親父は蕎麦打ちの最中の死でした。仕事でも世話になった料理学校の岸和子先生も唐突だったし、黒テントの俳優・福原一臣さんは奥さんの訃報に続いての不幸で、驚きました。数週間前まで舞台に立っていたというから、なんともやり切れません。この年になると、日々、死からは逃げられないことを覚悟しながら生きていますが、友人や先輩たちが倒れていく報を聞くたび、やっぱり深く落ち込んでしまいます。
 近所に2軒目のコインランドリーが出来ました。それがどうした、といわれそうですが、このコインランドリー、実に便利なことにようやく気がつきました。大きなカーペットや事務所のカーテンなどの汚れ物を一度に放り込んで、いっきょに乾かしてしまえる大容量がとにかく魅力です。以前はクリーニング屋さんに出していたのですが、出来てくるまでに1週間はかかりますから、この速乾性にはかないません。おまけに靴の洗濯、乾燥が出来ます。先日、はじめて山靴とエアロビ・シューズを何年ぶりかで丸洗いしました。いやぁその気持ちのよかったこと。汚れがこびりついていた靴のクリーニングは半ばあきらめていました。大げさなようですが、これはもう福音です。
秋の雪国の海。かなたの山は男鹿寒風山
これが靴専用の優れもの洗濯機と乾燥機


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