んだんだ劇場2007年1月号 vol.97
No41 希望の新年

クリスマス
 寒い。とても寒い。今朝は12度まで下がった。でもみんな寒い寒いと文句をいいながら、なんとなくうれしそうである。実は私もそうである。もこもことたくさん服を着て、朝の冷たい空気にぶるぶるっと震えるのはなんとも新鮮で、わくわくする。
 チェンマイはタイの北部にある県だが、この季節には、この寒さを体験するため、わざわざバンコクからチェンマイにやってくる人もいるらしい。その気持ちもなんだかわかるような気がする。やはりタイで「寒さ」は貴重なのである。
 さて12月はクリスマスということで、なにかと催し物が多かった。チェンマイの合唱団のクリスマスコンサートを聴きに行ったり、国王の誕生日を祝って行われたバレエやダンスの公演を観に行ったり。いつもは長女だけを連れて行くのだが、最近何でも長女と同じでなければ気がすまない2歳5ヶ月の次女。そこで今回は次女も連れて家族全員で行ってみた。
 次女には退屈かなと思ったコンサートだったのだが、熟睡している長女の隣で、歌が終わると拍手をしながら、
「じゅねー!!(上手ねー)」
と感嘆する次女。
 しかし、シィーンとした中で、彼女の
「にゃにー?あれー?(何で静かなのー?)」という声も響きわたり、やはりはらはらしどおしであった。
 そしてクリスマスがいよいよ近づくと、(我が家では夫がクリスチャンなので、)教会の子どもたちや若者の合唱団がクリスマスキャロルを歌うために家までやってくる。チェンマイにはたくさんの教会があって、それぞれの教会のグループが別々にやってくるので、ほとんど毎日のようにどこかのグループがやってくるのである。
 彼らは、「こんばんわー」と言いながら家に入ってきて、特に前置きもなくいきなり歌いだす。みんな上手なので、私はいつも聞き惚れてしまう。そして3曲ほど歌うと、あっさりと「おやすみなさーい」と言いながら次の家へ向かっていくのだ。彼らはその教会に行っている人々の家や知り合い、友人の家もまわるので、最後の方は真夜中になる。夜8時ごろだとちょうどよいのだが、就寝時刻が9時の我が家としては、夜中11時ごろに彼らが来た場合、誰も起き上がることができず、彼らが玄関のすぐ外で歌っているのを夢の中で聴く、という場合もある。
 それにしても、毎晩のようにクリスマスの歌を聴けるなんて幸せである。クリスチャンではないけれど、日本人なのでついつい気分が盛り上がってしまう私である。

や、やっと書けた
 先月書いたように、統計分析の大幅なやり直しをすることになった論文。本当にこれであっているのだろうか、と不安になりながらもやり直し、疑問な点を統計専門の指導教官にメールで送ったが、返事が来ない。今日来るか、明日来るか、と待っていても全然音沙汰がない。もう一度メールしてみても返事が来ない。このままでは論文の締め切りに間に合わない!
 そこでもうあきらめて、自分でなんとかやることにした。気づくのが遅かったのだが、統計の疑問点はインターネットの検索で結構答えが見つかることがわかり、必死に探す。多分75%くらいはあっているかな、というところで見切りをつけて分析をやめ、結果を書くことにした。
 この大学院では博士論文は大体10章くらいのものを書くことになっている。私の論文も合計11章の予定であるが、これから考察、結論とあと2章も書かなければならない。統計の結果を書いて、これまでに書いた9章をもう一度手直しし、さあ、いざ考察と結論だ、という時点で既に残り一週間。
 今まで一つの章を書くのに少なくとも2週間はかかったのに、最後の一番肝心な章二つを書くのにそれぞれ3日間というのは、いかがなものか。でもしようがない。
 書く、書く、書く。ひたすら、書く。引越してからは、物置件作業部屋で論文を書いているのだが、現在長女が冬休みで日中も家にいるので、夫に彼女をまかせ、私は部屋に鍵をかけ耳栓をしてコンピューターに向かう。いつも駆け込みセーフでやってきたが、今回もまたそうであった。
 そして、とうとう論文(草稿だけど)が完成した!実に2007年1月1日午前1時のことであった。よ、よかった。早速指導教官にメールで送り、これで次回1月末にまたロンドンに行くまで、しばし自由の身だ!やったー!!

チェンマイの新年
 最後の詰めでコンピューターに向かっていたら、一斉に花火の上がる音がした。時計を見るとちょうど1月1日に日付が変わったところである。
 庭に出てみるとあちこちの空に花火が上がっている。新年を祝う花火だ。街の方角でもどどーん。山の方でもどどーん。近所の家でもひゅーっ、ぽん、ぽん、となんともにぎやかだ。
 そして晴れた夜空をゆらゆらと昇っていく熱気球。これは薄い紙でできた大きな紙風船で中に固形燃料がぶら下がっている。これに火をつけると、ふわふわと上がってゆくのだ。かなり高くまで昇ると、ちょっと赤みがかった星のように見える。
 タイ北部では祝い事などがあると、みんなこの熱気球を上げる。この新年を祝って、みんな家族や友人と一緒にこの熱気球を上げたのだろう。何百個もの熱気球が空に浮かんで、何とも幻想的だ。
 海外でのお正月はどこでもさらっと終わってしまうので、なんだか淋しいなといつも思っていたのだが、この夜空を見るとチェンマイでの新年も悪くないなと思う。
 今年は就職活動や帰国の可能性も含め、忙しい一年になりそうだ。どうか家族みんなが怪我や病気をせず、健康に過ごすことができますように、と夜空に向かってお祈りした。


無明舎Top ◆ んだんだ劇場目次