んだんだ劇場2008年1月号 vol.109

No20− 今年もどうにか…−

華やかなパーティに出てきました
 久しぶりに華やかなパーティーに出席してきた。
 古い友人(先輩)である山口県のマツノ書店・松村久さんが菊池寛賞を受賞したのだ。
 記念式典はホテル・オークラのコンチネンタルルーム。ここは前に山際淳司さんのお別れの会で来たところだ。
松村さん以外の受賞者は阿川弘之、市川団十郎、桂三枝、小沢昭一といった方々で、各自のスピーチに大笑いした後、最後が松村さん。巻紙に書いてきた文章を読み、朴訥に飾らず無難に切り抜けたのはさすが。それにしても桂、小沢という日本を代表する話芸の達人の直後にスピーチしなければならないというのは、どんな気持ちなのだろうか。このスピーチの順番だけで受賞を返上したくなった、とは当人の弁。
 授賞式の後はそのまま主催会社・文藝春秋の忘年会パーティー、周辺のほとんどが高名な物書きばかりだった。知り合いの朝日の記者が「ここに爆弾しかければ日本の文化は滅びるね」といえば、辛口のある出版社社長が「そのほうが、よくなるかもよ」と受けていた。
 かろうじて知っている秋田出身の作家・西木正明さんをみかけたので、ご挨拶。秋田駅前に出店したばかりのジュンク堂のO専務には「出店広告ありがとうございました」と声を掛けられた。地元紙に出した小さなご祝儀広告を本社の専務がチェックして覚えているのだ。30年以上仕事をしていて地元の書店から「新聞広告ありがとう」なんて声を掛けてもらったことは1度もない。
 もう一つ、印象に残ったのがパーティーの料理。メインはお鮨で10人近い職人が会場の一角で握るのだが、ここには長蛇の列。10分ほど待たされて食べてみたのだが、これがうまい。エッ、すごい、と店の名前を確認に行くと職人の白衣の胸に「久兵衛」の刺繍文字。なるほど、うまいわけだ。いやしく2回目にチャレンジしようと思ったが列があまりに長いのでやめた。
 たまにはこうした別世界にも出席して、自分の狭い世界の反省をして見るのも悪くありませんね。
受賞者です。真ん中の女性は講談社社長です
これが話題の鮨コーナー
この人が山口県・マツノ書店の松村さん

飲食・偶然・物忘れ
あわただしく1週間が過ぎてしまった。週のうち3日間は外でお酒を飲む、という最近では珍しい展開になった。ひとつは仕事がらみで新聞社の人と差し向かい(男だけど)。二つめは「一人酒」。これはある会から抜け出す口実だった。三つめはエアロビの古くからの友人たちとの忘年会(これは小生以外全員女性)。週に三回の外食はさすがにきつい年齢になってしまったが、酒量はかなりセーブできるようになった。いい気分になって一人で二次会に出かけたり、〆にラーメンを食べたりする暴飲暴食はすっかり影を潜めています、いまのところ。
雪に備えて植木を吊る作業
飲み会の話で思い出したが、先週、東京での菊池寛賞の翌日、仙台に寄った。友人と国分町の小さな居酒屋カウンターで飲みながら、昨晩の受賞パーティーや盛大な文春忘年会のことを友人に自慢げに披露していた。しばらくして隣に女性3人が座った。「エッ、あなた京大なの?」「どんな作家、好き?」と、最近の若い女性らしからぬ話題で盛り上がり出した。やたら本に詳しそうな様子から見て同業者か? とその会話に興味を持ちはじめたら、「阿川佐和子さんがさあ……」とか「桂三枝と小沢昭一のスピーチが……」といった言葉が飛び込んできた。驚いて「もしかして昨晩ホテル・オークラにいらしてたんですか」と声をかけると、「はい、わたし担当者(文春の社員)です」とのこと。あとの二人の女性は仙台の大きな書店の社員だった。昨日、東京の同じパーティーに出ていた同士が24時間後、何の関係もない仙台の居酒屋で再会したのである。こんな偶然があるんですね。いやはや、ビックリしました。

またぞろ夜はDVDで映画鑑賞にはまっています。本と違って映画は基礎的知識が圧倒的に不足しているので、レンタルビデオ屋で選ぶのが一苦労です。本なら何の予備知識がないまま本屋を一回りしても、自分のその時の気分や興味の方向性から、自分にピッタリの「読むべき本」をすぐに見つけることができるのに、映画はそうはいきません。借りる映画の8割は観てから「失敗だ…」とうなだれてしまうものばかりで、徒労感もかなりのものがあります。それにつけて加えて「物忘れ」にひどさもあります。この2年ほどの間に、ヒッチコック監督の「ミス・スミス」(でしたっけ)という作品を計3回借りています。前に観たことを忘れているのです。3回目は最近ですが、前半部を見終わるまで、すでに2回も見ていることを失念しているのですから筋金入りのアホです。
映画の中盤になって「次はこんな人物が登場して笑いをとるんだっけな」と次のシーンが読めるようになって、「あれっ、これ、観たよな」となる。あ〜あぁぁぁ〜いやだいやだ。どんどん、こんなことが多くなっていくんだろうな。いっそ前に観たことがぜんぜん思い出せなくなってくれれば……。
仙台駅構内
オープンした秋田駅前のジュンク堂

再び「交通誘導員」と肥満について
道路工事等の交通誘導員は太っている人が多い。工事中の路上で見かける「交通誘導員」はなぜか体格のいい人が多い。これには何か事情や理由でもあるのだろうか……ということについて、先ごろこの欄で書いたばかりだが、補足というか新たな事実のようなものが、少しずつだがわかってきた。
交通誘導員の中には、相撲取りかと見まがう若者もいて、もしかしてこれは「肥満関係専門の求職斡旋所のような組織があって就職活動支援をしているのでは」と正直なところ疑っていたのが、これはどうも当方の単純な思い込みだったようだ。実はあの交通誘導員、建設会社の従業員ではなく警備会社からの派遣社員であるケースのほうが多いようなのである。となると彼らが太っている理由も納得がいく。警備会社では防犯上の理由から、武道などのスポーツ経験者を採用するケースが多いからだ。これは確かめたわけではないが、よく知られた事実である。柔道や相撲経験のある体力自慢、少々の辛さには弱音をはかない屈強な体格の若者たちが、「道路誘導員」として選ばれて派遣されている、と考えれば、これはなるほど、納得できる。どうだろうか。

今週は、ほとんど事務所の中に閉じこもって1週間が飛ぶように過ぎていった。朝起きて、事務所で仕事をし、夕方は自宅で食事。1時間ちょっとの夜の散歩をしてから、事務所で(大画面テレビで)DVD映画を観て、ベッドで30分ほど本を読んで寝る……という判で押したような生活を繰り返している。エアロビは月曜の一回のみ。冬の間は街道歩きも山歩きもなし。早くスキーに行きたいのだが田沢湖も雪不足。何にもすることがないから張り切って散歩をしすぎ、左ひざに鈍い痛みがある。とにかく1週間があまりに早いので、ものすごいスピードでゴール(死)に向かっているような気分になり、ひどく落ち込んだ。仕事では、ずっとうまくいかなかった写真絵本のレイアウトが、あるきっかけでようやくスムースに動き出した。明るい話題といえば、この程度。
手をつないで横断歩道を渡る老夫婦。この2人とはよく出くわす
ビギナーズなんとかで、5箱ぐらい玉が出たので怖くなり、やめる
ご覧の通り、今週は真っ白なスケジュール・カレンダー


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