奇蹟の2月のこと
思いもかけないこと、というのを体験してしまった。
2月末日、いつものように2つの取引のある印刷所に支払いをするべく、その金額を経理に伝えると、「F印刷はもう残債がありません」と言われた。えっ印刷所の残債がない?なにそれ。
無明舎をはじめて35年余、こんなことは一度も経験がない。来る日も来る日も、月末は印刷所の支払いが待っている。これは決まりきったことで、それをクリアーして経営者の1ヶ月はようやく終わるのだ。逆に言えば月末の印刷所への支払いが終わらなければ、一息つくことはできないようになっている。
それが2月は支払いゼロだという。こんなことは35年の仕事人生ではじめてだ。
F印刷は無明舎を旗揚げした時から付き合いのある会社だ。20年程前には残債が3千万を越えたことがあり、さすがにそのときはお偉いさんがきて、「手形を切ってください」と目の前で直談判された。親父が手形で苦しむ姿を少年のころ何度も見ていたので「手形は使うまい」と心に決めていたが、あの時はにっちもさっちも行かず、手形を切った。忘れられない出来事だ。
その手形事件も含めて、月末の支払いが「なし」だったという月は1度もなかったから、やはりこの2月は「奇蹟の月」といっていいのかもしれない。
3月には新刊や増刷や雑誌類の印刷物がどっさり納品になるから、来月からはまた通常の月末支払いが待っているので、喜んでばかりもいられないが、まずはこの奇蹟の2月を、自分ひとりでひっそりと寿いでいるところです。
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