んだんだ劇場2008年6月号 vol.114

No25− 大いに原稿を食す−


5月3日(土) 前日、美女2名と川尻の「金谷洋食堂」。オムライスが有名な店でワインもうまくて大満足。軽い二日酔いのまま朝9時、車で酒田へ。高速を使うと2時間弱。ほとんど混んでいないのが、逆にさびしい。酒田市内で開催中の「池田拓写真展」に顔を出し、GW中、山行を一緒にするSカメラマン、大阪の三人の女性陣と顔合わせ。昼飯は生石・大松家で蕎麦。午後からさっそく遊佐町・十六羅漢岩のそばにある鳥海山・猿穴周辺を散策。ブナの若葉がみずみずしい。友人宅泊まる女性陣と別れ、男性二名は海沿いの旅館・酒田屋泊。魚づくしの夕食がうまいだけでなく、宿のたたずまいが風格あっていい感じ。

5月4日(日) 7時行動開始。今日は鳥海山・鶴間池。暑くなりそうだが、雪が残っているのでアイゼン、スパッツ、虫除けネットを装備。山スキーを担いだ人でいっぱい。車のナンバーはほぼ日本各地から。雪と新緑を楽しみながらブラブラ。大阪の女性陣はやたら花に詳しく、写真撮影に夢中。とにかく虫がすさまじい。頭からすっぽりかぶる防虫ネットが大活躍。下山後、温泉に入り、鶴岡市内の中華料理店「香雅」で夕食。鶴岡ユース泊。ユースホステルは実は初体験。スリーピング・シーツの使い方がわからずSさんに笑われる。ipodで落語を聴きながら、いつのまにか眠りに落ちる。

5月5日(月) 朝6時起床。6時半からユースの周辺を散策。聴診器でブナの鼓動を聴くが、よく聞こえない。野外で朝食。9時から金峯山登山。生まれて初めてギフチョウとその卵を観た。途中から雨になり隣りの母狩山は中腹で断念、急いで下山する。二つとも低い山だが、新緑が気持ちいい。温泉に入り、夕食は農家レストラン「菜ァ」。ほうれん草鍋にたけのこ(孟宗)料理。庄内の人はたけのこが好きだ。ユースに帰って部屋で12時近くまで全員で宴会。

5月6日(火) 最終日も好天で、お天気に恵まれたGWだった。鶴岡近郊の熊野長峰に登った後、荒倉山に巨大ブナを見に行く。午後からはクラゲの養殖に成功した加茂水族館。ここでスケジュールはすべて終了。酒田市のホテルに帰り、風呂を浴びて4日間の山の汗を流す。全員そろっての打ち上げはホテル2階のレストランで、夕食バイキング。大阪組はこの日の夜中、日本海で帰阪。

5月7日(水) 熟睡し、目覚めもさわやか。これでGWは終わり。午後からは事務所に戻って普通どおり仕事。楽しい4日間だった。
ずっとこんな感じで歩いてました
ユースの部屋は刑務所とちょっと似ている
池田拓写真展で父親の池田先生と


上野近辺・「かもめの日」・森吉ひとり登山
久しぶりに東京2泊3日の旅。2日間とも夜は重要な会合(飲み会)があり、緊張したが、陽の高いうちはブラブラ都内をさまよった。上野で開催されている「薬師寺展」はぜひ観たかったものだが、会場に行くと80分待ちの長蛇の列にガックリ。お隣、芸大で開催中の「デッサウのバウハウス展」へ鞍替え。ピンチヒッターだったが、けっこう見ごたえがあった。
それにしても上野近辺は面白いなぁ。個人的には今最も注目の地域で、これも前から興味あった千駄木・往来堂書店を訪ねてみる(店長はいなかったが)。さらに両国の江戸東京博物館へ移動、「ぺりーとハリス展」を観てくる。お隣の国技館は場所中で、支度部屋入りする力士が到着するたび黄色い声が上がる。こちらもつられて垣根越しに間近を通る力士にシャッターを押す。それにしても力士の着物姿が「似合わない」。なぜなんだろう。とくに下っ端力士の浴衣姿がだらしなく感じられる。

今回の東京行きは行き帰りとも電車。飛行機を使わなかったのは電車の中でチェックする原稿と読みたい本があったから。一心不乱に4時間も集中できるチャンスはこんな時しかない。原稿チェックは2時間ぐらいで集中力が切れた。そのかわり(?)読書には集中。読んだ本は黒川創『かもめの日』(新潮社)。この小説は面白かった。黒川さんもこの1冊でプロの小説家としての地位を不動のものにしたのでは。ジャンル分けはもう古臭いが純文学とエンターテイメントが絶妙にブレンドされていて、もっと読みたい、という気持ちになった。

最後にちょっと自慢話を。17日(土)に一人で森吉山(1454m)に登った。生まれて初めて一人で山に登ったのだが、誰も褒めてくれないので、その夜は一人で祝杯。地図やガイドブックを何度も読み入念に準備して出かけたのだが、行ってみるとほとんど雪山で登山道は消えていて、うろたえた。のっけから通過点である一ノ腰山頂ルートを外れ、迂回ルートで道に迷い後から来た中年夫婦の後を付いていくことで切り抜けた。2時間半でどうにか山頂に立つことができたが、帰りが不安で早々と下山。途中で「山の学校」のM親子にバッタリ。再び一ノ腰分岐点前にして迂回ルートがわからなくなり、後から来た女性の後をくっついて一ノ腰山頂に。そこから一気に下山したのだが、災い転じて行き帰りを違うルートで楽しむことができたわけである。天気は上々だったが「雪」という難敵をまったく計算に入れていなかった。次の単独山行は太平山の予定だが、「ヤバイと思ったらすぐ下山」をモットーに、なんとか登頂したいものだ。
彼方にみえるのが森吉山頂
まじかで力士を見ても迫力が…
「薬師寺展」は長蛇の列


草を食べる象のように
 5月も終わった。いやはや、あわただしい1ヶ月だった。
 今、机の前にある書き込みカレンダーをみながら、この原稿を書いているのだが「空白」がほとんどない。こんな月も珍しい。書き込みをするのは大切な個人的用事や、本の刊行日、山行、出張などの「特別な日」だけなので、この汚れたカレンダーをみただけで、いろんな予定が詰まっていたことがわかる。
 花のゴールデンウィークは、ユースに泊まりながら友人と鳥海山の里山を歩いた。中旬には仕事がらみだが久しぶりに東京出張があった。仕事がすべてうまくいき、気分よく秋田に帰ってきた。
 山は白木峠に鳥海山、森吉山。森吉山は生まれてはじめての単独行。八幡平も予定に入っていたのだが、親族が亡くなり葬儀のためキャンセル。
 カルチャースクールの講師のまねごとも四度。これも多いなあ。
 本は根深誠著『ゴンボホリの系譜』一冊のみだったが、出版広告は朝日、読売2紙に5段12割。
 人間ドッグ(健康診断)もあったし、飲み会も五回ほど。これもいつもの月に比べたらダントツに多い。
 でも最も時間をとったのは原稿読み。仕事だから当たり前だが、なぜかブログを本にする企画が何点か続き、そのプリントアウトした膨大な量の原稿を、草を食べる象のように読みまくっている。これを毎日四時間平均やっていると、目が乾き、頭が白っちゃけてきて、甘いものが欲しくなる。読む原稿がみんな面白いので続いているようなもので、首を傾げたくなる内容だったら、2日ぐらいでギブアップしていただろうな。 この原稿読みの間に、なぜかたまたまいろんな行事や遊びや来客が混じりこんでしまった、というのが忙しさの原因のようだ。
単独行の森吉山頂で
カレンダーはこの通り
ある新人研修の会で、講師席から撮ったもの


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