んだんだ劇場2008年9月号 vol.117

No28− 夏を乗り切る−

DM・秋の超目玉・「訳万葉」
 来週には恒例の年4回「秋の愛読者DM」発送作業が始まります。
 この準備に半月ばかり忙殺されました。いつものこととはいえ毎回、新刊点数や売りたい本の数が微妙に違います。今回はかなりリキが入っていて、かつ新刊点数も多く、チラシや通信の製作に長い時間がかかってしまいました。
 このDMのチラシや通信の印刷代、郵送費は1回につき100万円近い費用がかかった時もありましたが、今は削れるところは極力削って、その6割位にまで落ちました。わが舎にとってはほぼ1冊の本を出すのと同じくらいの時間と費用をかけた「販促イベント」です。
 秋号の通信では、もうHPでは先行して実施しましたた「絶版本放出コーナー」を特集しています。DM通信購読者にしか買えない本なども掲載しています。
 その秋号で実は「秋の超目玉新刊2冊」の刊行予告をしています。
 どちらも発売は10月を予定しているので、時期的には冬号(11月下旬を予定)に載せるべきものなのですが、ちょうどDM発送の真ん中の刊行になるため「刊行予告」という形で掲載しました。
 1冊は、椎名誠さんが編集長をつとめる「本の雑誌」社の営業マン・杉江由次さんの「『本の雑誌』炎の営業日誌」(仮題)です。ウエッブ版「本の雑誌」のブログを書籍化したもので、もともと超人気ブログとして出版界の話題をさらっていたものです。さまざまな縁があり、うちで本が出ることになりました。
 もう1冊は、塩野米松さんの長編小説「ふたつの川」(仮題)。昭和初期の東北の小さな村を舞台にした物語です。山の湖からクニマスが消えていく過程が、炭焼きや漁師、医師たちの交錯と、不穏な時代背景を舞台に克明に綴られていきます。原稿用紙1000枚を超す力作です。どちらもすごい本ですよ。
 まあ、それにしても本は売れません。愚痴は言うまいと決めているのですが、活字ばなれを憂うというより、活字文化に対して「畏敬」の念が薄れている時代に、なんとも忸怩たるものを感じてしまいます。
 そんななか先週、1年半も前に刊行した小舎の復刻本『訳万葉』(村木清一郎著)が全国の地方紙の記事になりました。共同通信の配信で、書評ではなくニュース扱いのカラー写真つき。そのせいかものすごい反響がありました。沖縄から青森まで30都道府県ぐらいの地方紙に掲載されたようで、この記事で1万2600円の本が「うん十冊」動きました。読者はいるんですね。私たちがうまくそうした人たちと出会えないだけで。それにしても新聞の力、まだまだ、あなどれません。


鳥海山・お盆・オリンピック
 その時々の体調や仕事の具合や天候にも左右されるのだが、この1週間はずいぶん長かった印象がある。  というのも1週間前、友人と二人で鳥海山に登ぼった(矢島口)。ヘロヘロに疲労困憊し下山したのだが、週1ペース登山による疲れに違いない、と確信し、「来週は山登りを自粛しよう」と固く誓った。ところが、これを書いている今、あの一週間前の出来事などケロリと忘れ、また週末恒例とばかりに山行(ひとり乳頭山)準備をしている。いやはや、本当に先週の鳥海山は、もうずっと過去の出来事に思えてしまうのだから、やはり1週間は長かった、のだ。

 それにしても先週の鳥海山は、なんとなく登りはじめからヘンだった。天気は快晴、寝不足がちょっと不安だったが準備は万端。張り切って登りはじめたのだが、はなっから足が重い。一汗かけば調子は戻ってくるはず、とゆっくりペースで歩き出すが、一向に自分のリズムにならない。ほうほうのていで4時間かけて頂上にたどり着いた。ひどかったのが下山だ。岩場で足がつりそうになり3時間10分もかかって、ようやく祓川ヒュッテにたどり着いたころには、疲労で口をきくのも億劫なほどだった。寝不足や過労が原因なのはまちがいないのだが、初心者のクセに自分の力量を過信、分不相応の山だったようだ。でも今年中に鉾立側からもう一回チャレンジを計画しているので、懲りないオヤジです。

 お盆は、ずっと事務所で仕事をしていました。電話もメールも少ないこの期間中は原稿書きがはかどります。週一で連載している北鹿新聞のコラムや朝日新聞県版エッセイ、HPの書評など、まとめて数回分を書き溜めしました。
 お盆に入る直前に、秋のDM発送のための準備作業をすべて終えていたので,精神的にもリラックス、執筆モード全開になれたのがよかったようです。
 オリンピックはあまり興味はないのですが、マラソンだけは大好きなので、野口みずき事件には、ちょっとショックを受けました。
頂上は快晴
余裕の笑顔ではなく疲労困憊の笑顔
これはヘロヘロ下山途中


夏休み・弘前にて
今年の夏休みは土日を入れて3日間。ということは「1日だけの夏休み」ですね。笑っちゃいます。それでも少々欲張って弘前に2日間宿をとり、藤里駒ケ岳、八甲田、八幡平と山三昧の3日間にしようと張り切ったのですが、初日の藤駒は登山道が雨のため不通、八甲田はものすごいガスで視界不良で登山は無理、3日目の八幡平は、「もういいや」と投げやりになり、けっきょくはどこにも登らずに、虚しく3日間(正味一日)の夏休みを終えました。
 2日目の弘前でこんなことがありました。駅前ホテルの傍にあるカジュアルなイタリア食堂で、スパゲッティでも食べようと入ったのですが、白のグラスワインを頼んだら、若いウエイトレスに「食後にしますか、食前にしますか」と訊かれました。食後にワインを飲む人もいるんですか、と意地悪をしたら、悪びれることなく「はい、います」と突っ返されました。
 その後、スパゲッティをすすっていると店内の電気が突然消えました。すわ地震か、とうろたえたのですが、店員たちは落ち着いたもので、5,6人が行列をつくりながら、私の隣の家族連れのテーブルに来て、やおらケーキのロウソクに火をともし、ハッピバースデーツー何とかちゃん、と歌いはじめました。そのセレモニーの間、店内は真っ暗。が、その祝ってもらう家族も歌う店員たちも、他の客のことは一切無視、露ほども気にかけていません。そのセレモニーが終わって電気が点されても、客にはなんのお詫びもなく、フツーの日常業務に戻りました。あぜんぼーぜん、文句を言う気力さえ奪われてしまいました。
 ま、そんなこんなで、またしても8月は泡のごとく消えてしまいました。20日ごろからは朝夕の風がめっきり冷たくなり、長袖もそろそろ、といった気分にさえなりかけています。1日しか夏休みが取れなかったことからもわかるように、なにかれと小さな用事が立て込み、あわただしい1ヶ月でした。9月はもっとあわただしくなりそうです。夏を乗り切って油断したあたりに疲れで寝込んだりする人も多いのだそうです。皆様もご自愛ください。


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