んだんだ劇場2009年1月号 vol.121

No32− 憩いの場所−

汗を流すのは気持ちがいい
 毎日のように雨。事務所に閉じこもっていると、気持ちはドンドン落ち込んでいくばかり。思い切って近所のスポーツクラブに出かけ、汗を流してきた。それがきっかけで2年ぶりくらいにジム通いが復活した。
 なにもしないで、グダグダといらぬことを考えるより、身体をいじめて汗を噴出させるのがいい、というのは長年の経験で実証済み。それが最近は週末の山歩きで、とてもエアロビクスまで手を出す余裕はなかったのだが、このところ山は雪、いきたくともいけない状態が続いていた。
 エアロビクスも山登りも、汗を流すことに変わりはない。汗を流している時間が長い分だけ、山のほうに達成感があるような気がするが、終わった後の達成感はそう違いはない。汗を流す楽しさはエアロも山も変わらない。
 汗をかき終わって、汗まみれの用具(ウエアー)を洗濯籠に放り入れ、次回のための新しい用具を準備する。この時間がえもいわれぬ快感である。
 山歩きも同じで、一仕事おえ靴やレインウエアーの手入れをするときがたまらない爽快感がある。運動で汗をかく行為そのものより、その後の用具の手入れがとんでもなく楽しいのだ。この感覚は私だけなのだろうか。
 エアロビクスは靴とウエアーがすべてだが、もう10年以上使い込んでいるものたちだ。登山用具にしても何十回となく労苦を共にした「同志」である。用具への熱い思いはスポーツの場合、特に強く心に刻まれるものなのかもしれない。
 大館市の「北鹿新聞」に、毎週1回、もう2年近く「メタボ・オヤジどすこい奮戦記」というコラムを連載している。最初はスポーツジム通いと自分の健康をおもしろおかしくルポしていたのだが次第に山歩きに夢中になり、そっちの記述が多くなった。いわば本筋から外れてしまったのである。連載は100回まで続くのだが現在は77回あたり。本題のスポーツクラブに早く戻りたかったのだが、これでようやく本筋に戻ってこられた。
 スポーツクラブといっても、元気な女性陣を別にすれば、男たちのほとんどは定年退職で暇になったオヤジたちだ。中高年の「憩いの場所」である。ロッカーでタバコを吸い、カップ酒を飲み、雑談に興じる。ひがなプールを歩いているだけの肥満男、ランニングマシンに乗っかって何時間もテレビを見ているおっさん、ただひたすら新聞を読んでるだけの老人もいる。
 本当はこうした人間模様を面白いコラムにできる才覚があればいいのだが、自分のレッスン(持ち時間)をこなすのが精一杯で、彼らにまで関心が向かないのがつらいところだ。


スタバのないところなんてイヤっ!
2年に一回の恒例行事になっているのだが年末、書庫に溜まった本(読了本や資料本)を放出(ゴミ出し)する。今年は自分の書斎の読了本も一緒に処分したので1000冊以上の放出になった。最初に小説類の好きな友人のSさんに段ボール箱2個分の本を仕分けし、舎員それぞれが好きな本を家に持ち帰り、来舎した人たちに好きな本を選んでもらう。それでもなかなか「完売」とまではいかないので、あとは産廃として清掃会社に引き取ってもらうことになる。今年は運のいいことに近くの高校生が「読書の未来」というテーマで取材に来舎する予定なので、彼(女)らに好きなものを自由に持ち帰ってもらっおう。
本と同時に舎内の不要な書類、棚類の大幅リストラも敢行。原稿や備品をストックするために必要だった棚が、時間と共に増え続け仕事場が「ものであふれかえった」状態だったのだが、これですっきりした。とくにロッカーや棚の上に物が積み上がっていたものを取り除くと、みごとに空間から圧迫感が消えた。事務所に余白ができると、事務所を建てた初期のころのことが思い出され、気持ちに余裕というか、爽快感すらあった。捨てた備品類というのも、もとをただせばこの10年のデジタル化の波で使用頻度の落ちてしまった文具類がほとんど。
夜は雨が多いので、仕事の合い間を縫って日中に散歩。駅まで歩いて戻ってくるだけなのだが、駅前のスターバックスでコーヒーを飲んでくることが多い。30万都市といってもスターバックスは市内に2,3軒しかない。ドットールも似たようなもの。週末に東北のいろんな街に出かける機会が多いのだが、フシギなことに仙台にも盛岡にも弘前にも八戸にも酒田にも、スタバは圧倒的に少ない。ドットールはけっこう見かけるのだが、東北にスタバが少ないのはなにか理由があるのだろうか。そのスタバだが、わが近所の秋田大学病院中オープンがきまった。2,3軒しかないもののうちの1軒が近所にできるのである。これはうれしいニュースだが、はたして高齢者の多い外来患者や入院患者たちはスタバを必要としているのだろうか。病院という立地条件で採算ラインに乗るものなのだろうか……なんて、考えていたのですが、関係者に話を聞いて納得。別に外来患者がスタバを必要としているわけでなく「研修医確保」のための特別措置なのだそうです。「スタバもないところに行きたくない」という研修医が多く、医師不足に悩む病院側は彼らの引き止め策として「やむなく」スタバをオープンした、のだそうで、いやはや驚きました。


郷土学習と神室そば
 最近、事務所に中高生がよく訪ねてきます。ナントカ郷土学習というやつなのですが、基本的にこれまではお断りしてきました。わざわざ中高生が訪ねて来てくれることがうれしくて、専用のガイドスタッフまで決め、丁寧にちゃんと対応していた時期もあったのですが、これがけっこう煩雑で、いつのまにかお断りするのが慣例になってしまいました。
 「本」の定義からはじまって編集や出版の意味を解説、中高生がわかるように仕事の実際を見てもらっても、後はなしのつぶてですからガックリきます。それに、ウチのような超零細イナカ出版社を見学しても、彼らの将来のためになるわけではアリマセン。できれば有為の若者にはもっと将来的展望のある職場見学をしてもらいたい、という老婆心からお断りしていたのですが、このところの依頼は、生徒たちの熱気がきちんと伝わってきたため、それにほだされたものです。実際は生徒のために何時間も仕事がストップするわけですから、心に余裕があるときでないと引き受けられません。
 湯沢市秋ノ宮で農業をしながら蕎麦を打つ栗田健一さんの「神室そば」がついに復活しました。これは朗報。店舗なしの宅配そばで、朝打ったものが夕方に着きます。栗田さんの蕎麦は西音馬内そばの流れを汲むもので、つなぎに「ふのり」を使っています。そのため3日間ぐらいは賞味期限がありますから宅配でも大丈夫です。1箱5人前で、つゆ付きの2300円。数量は自由に頼めますが、これが基本です。前日に頼めば翌日の夕方食べられます。
 注文はファックスで0183−56−2554まで。料金は郵便振替の後払い。とにかく美味しいので一度お試しあれ。
 つい最近、秋田市にできたばかりの蕎麦屋さんにさっそく行ってみたのですが、久しぶりに大声で「まずいっ」と叫びたくなる蕎麦を食べてきました。手打ち蕎麦なのにウズラの卵がついてきたあたりで、首を傾げそうになったのですが、残さず一人前食べるのが苦痛で、涙が出そうになりました。店主が目の前で見ているので残せなかったのです。いやはやあきれた蕎麦屋です。でも、もうこんな愚痴ともおさらばです。よかったよかった。


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