んだんだ劇場2009年5月号 vol.125

No36−春の陽気に……−

屋久島にて
 一週間、休暇を取って屋久島に行ってきた。
 念願の縄文杉を見たかったこともあるが、昔、親しくさせていただいた山尾三省さんの墓参りもしたかった。
 屋久島は滞在中ずっと雨。「月に35日雨が降る」といった林芙美子の言葉に納得だが、それにしても寒いのには参った。吹雪の秋田を出発、着いた鹿児島の南の島で寒くて震えていた。日本は広い。
 縄文杉には感動した。朝の六時に出発、下山してきたのが午後五時だった。11時間歩きっぱなし、雨はバシャバシャ、トロッコ道もほとんど川になっていた。もうすっかり雨への免疫ができた感じだ。
 翌日はレンタカーを借りて島内をフラフラ一周。一湊港の近くの山尾さんの未亡人を訪ね、お線香を上げさせてもらう。三省さんは東京の人なので、御仏前に「とらや」の羊羹を買っていったのだが、案の定、「三省の大好物でした」とのこと。奥さんは山形南陽市の生まれなので、いろんな話をする。
 屋久島を発つ日、皮肉にも雨はやんだ。
 鹿児島南港からタクシーで鹿児島駅へ。飛行機の時間まで四時間ほどあるので駅に出て、そこからブラブラ街中を歩こうと思っていたのだが、乗ったタクシーの運転手に、調子に乗って「東北の庄内地方に西郷隆盛の神社がある、何て知ってる?」とエラソーにカマをかけると、なんとその運転手、「鹿児島の人は知らない人もいるけど、市内の公園に西郷さんと庄内藩家老の会談記念像が建ってますよ、行きますか?」とかえされた。郷土史というか明治維新史に詳しいドライバーで、彼に市内観光を頼むことにした。三時間で飛行場まで送り届けてもらい七〇〇〇円だった。楽しい三時間で、あっという間に過ぎた。屋久島や西南戦争について、ガイドブックには書かれていないいろんな話を聞くことができた。

 それにしても、屋久島の民宿でテレビをつけると、さかんにPC3を秋田に配備した、というニュースをやっていた。屋久島まで来て秋田のニュースかよ、という感じ。帰りの鹿児島空港でも、来る時に東北地区のニュースを読んでいた若いNHKのアナウンサーが、なんと鹿児島ローカルの六時台のニュースを読んでいた。そうかサラリーマンは異動の季節か。空港は黒いスーツを着たフレッシュマンたちであふれていた。


春は財布のヒモも軽くなって
 良い陽気になってきました。うれしいですね、単純に。
 今年はハードな雪山登山が3回しかなかったので、フラストレーションがあるのかもしれないが、芽ぶきのはじまったやさしい春の山が無性にいとおしく感じてしまいます。
 屋久島から帰ってきて、まだ疲れが残っているのに、翌々日には大仙市の姫神山と伊豆山に登りました。小さな低い山ですが、アップダウンがきつくて、息が上がってしまいました。屋久島では11時間歩きっぱなしでも平気だったのに、県内の山々では筋肉がパンパンに張って2,3日ヨレヨレ。

 少しは休めよ、と自分で自分に突っ込んでいるのですが、どうにもこの陽気では心と身体は勝手にバラバラ、ホイホイと外に出てしまいます。
週末以外は、おとなしく、まじめに、ちゃんと仕事はしているのですが、単調な仕事が続くと、楽しみみは近所のスーパーに食材を買いに行くことぐらいになってしまいます。気分転換ですね。
 そこからちょっと足を延ばし、家電スーパーもよくのぞくようになってしまいました。これが良くなかったんですね、結果的に。すでにデジカメはネットで買い換えしていたのですが、必要からカーナビ(これは車を編集長と交換したため)を買いました。ここから勢いがついて、デスクトップのパソコンを買い、さらにはipod用のスピーカーを買い、安い卓上加湿機を奮発してしまいました(ペットボトルのやつ)。これはもうケーズデンキに表彰されてもいいショッピング・オヤジと化してしまいました。

 パソコンはほぼ寿命だったので、ソッコーで買い換えても悔いはありませんが、他はまああってもなくても、特にいまでなくても、大丈夫なものばかりです。普段は外出することが少ないし、居酒屋へもめったに行かないし、本はネットで買うので、おカネを使う機会はないんですが、なんとなくこの春の陽気に狂わされて、財布のひもが軽くなってしまったようです。

医師つながりの日々
 ずっと好天続きで、外に出ないともったいないように感じてしまう日々だった。怒られそうだが、こちらは週末さえ晴れてくれれば何の不満もない。明日からは大田町にある川口渓谷を歩いて、明後日日曜日は「山の学校」の開校式。

 身体の調子が悪いわけではないが、歩きすぎなのか、左足のかかとが火照るような感じで、長く歩いた後は痛みがある。M治療院で鍼灸の治療を受けているのだが、鍼も灸もほとんどこれまで経験がないので、おっかなびっくり。終わってみると違和感もないし、足の痛みのほうもずいぶんひいていた。

 WHOの医師でカンボジアで医療活動をしている遠田先生が帰国、母校である秋田大学医学部で特別講義をするという。このHPで連載報告を描いてもらっているので、聴講に行ってきた。大学の授業を受けるなんて何十年振りだろう。医学部は事務所からすぐの場所にあり、まずは大学病院のスターバックスでコーヒーを買い、大きく深呼吸して講義室へ。医学部2年生200人近くが階段教室にびっしり埋まる中、講義がはじまっていた。わかりやすいワクチンの話で、笑い声が絶えない。興味深い授業の進め方に感心、やはり実践活動している人の言葉は伝導率が高い、という印象だ。

 週1の割合で歯医者に通っている。それも今週で1段落した。「他に気になる歯はありますか」と訊かれたので、前の歯医者に「むりやり」入れ歯にされた奥歯の不具合を訴えると、それもこれから直してくれるという。今の駅前ビル内にある歯医者さんの世話になる前、近所の歯医者さんに飛び込みで通いだしたのだが、素人目でも無愛想、高飛車、腕のほうも首をかしげたがる歯科医だった。その不信感から今の歯医者さんに鞍替えしたのだが、すでに2本の奥歯が何の理由もなく「入れ歯」にされてしまった。「こんな治療(入れ歯のこと)する必要あるんですかねえ、」と、今の歯科医は首をかしげていたから、わが素人判断も間違ってはいなかったようだ。だから前の歯医者の事後処理というかやり直し治療に通っていたのである。それにしても歯医者通いは当分終わりそうにない。いやはや。


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