屋久島にて
一週間、休暇を取って屋久島に行ってきた。
念願の縄文杉を見たかったこともあるが、昔、親しくさせていただいた山尾三省さんの墓参りもしたかった。
屋久島は滞在中ずっと雨。「月に35日雨が降る」といった林芙美子の言葉に納得だが、それにしても寒いのには参った。吹雪の秋田を出発、着いた鹿児島の南の島で寒くて震えていた。日本は広い。
縄文杉には感動した。朝の六時に出発、下山してきたのが午後五時だった。11時間歩きっぱなし、雨はバシャバシャ、トロッコ道もほとんど川になっていた。もうすっかり雨への免疫ができた感じだ。
翌日はレンタカーを借りて島内をフラフラ一周。一湊港の近くの山尾さんの未亡人を訪ね、お線香を上げさせてもらう。三省さんは東京の人なので、御仏前に「とらや」の羊羹を買っていったのだが、案の定、「三省の大好物でした」とのこと。奥さんは山形南陽市の生まれなので、いろんな話をする。
屋久島を発つ日、皮肉にも雨はやんだ。
鹿児島南港からタクシーで鹿児島駅へ。飛行機の時間まで四時間ほどあるので駅に出て、そこからブラブラ街中を歩こうと思っていたのだが、乗ったタクシーの運転手に、調子に乗って「東北の庄内地方に西郷隆盛の神社がある、何て知ってる?」とエラソーにカマをかけると、なんとその運転手、「鹿児島の人は知らない人もいるけど、市内の公園に西郷さんと庄内藩家老の会談記念像が建ってますよ、行きますか?」とかえされた。郷土史というか明治維新史に詳しいドライバーで、彼に市内観光を頼むことにした。三時間で飛行場まで送り届けてもらい七〇〇〇円だった。楽しい三時間で、あっという間に過ぎた。屋久島や西南戦争について、ガイドブックには書かれていないいろんな話を聞くことができた。
それにしても、屋久島の民宿でテレビをつけると、さかんにPC3を秋田に配備した、というニュースをやっていた。屋久島まで来て秋田のニュースかよ、という感じ。帰りの鹿児島空港でも、来る時に東北地区のニュースを読んでいた若いNHKのアナウンサーが、なんと鹿児島ローカルの六時台のニュースを読んでいた。そうかサラリーマンは異動の季節か。空港は黒いスーツを着たフレッシュマンたちであふれていた。
|