んだんだ劇場2009年8月号 vol.128

No39−年金と睡魔−

後半戦の仕事はじめは出版でなく……
6月も穏やかではあったのですが、あれよあれよという間に過ぎてしまいました。仕事のほうもどうやら前半戦の仕掛りものも終了、ちょっとしたエアポケットのような状態の中にいます。いい機会なので月初めに仙台、東京2泊3日の急ぎ旅をしてきました。
山歩きをするようになってから、まったく東京という都市に魅力を感じなくなってしまいました。それはもう見事なくらい興味が薄れ、われながらその極端さにあきれているところです。今回も3日間とは言いながら、実質的な滞在時間はごくわずかでした。

今回の出張では仙台に2泊、そこから東京に通うという「へんなこと」を考えました。これが案外いい感じで、同じ都市といっても仙台くらいだとそう「いや」で面倒な感じを持たなくてすみます。秋田からの距離感も影響してるのでしょうが、やろうと思えば仕事もあるし、会いたい人もたくさんいるし、好きな居酒屋もあります。秋田からちょっと遠出する感覚で滞在することができます。いっぽう東京はと言えば、とにかくホテルをとるだけで一苦労、選んだホテルの場所で移動や仕事に重要な制約も出てしまいます。都心に泊まらないと、いろんな問題が生じてきて、けっこう不便な街、という印象が強いのです。こまったものです。

それはともかく、いよいよ後半戦に突入です。前半の仕掛りがなくなったので、真っ白な状態で後半戦を戦うことになります。すでに、「出版」ではありませんが、国の予算を使ってやるある「事業」が2つ決定、小生以外の人員はほとんどが夏から秋にかけて、この2つの事業にかかりきりになりそうです。事業といってもレポート作成や聞書き、シンポジュームやイベントの開催……といった企画立案の仕事で、小舎が事務局の役割を果たす事業です。これからはこうした形の仕事が増えてきそうな予感もするのですが、本業の出版のほうも、かなりリキのはいった企画が目白押しです。ご期待ください。


郵便年金が入金になっていた
今週末は3連休。雨が降りそうだが土曜日は焼石岳の予定だ。北海道・大雪山系の遭難事故で、あらためて山は怖い、と思う。いや怖いからこそ病みつきになるのだが、先週登った鳥海山ですら、歩くのをやめると全身の汗が急速に冷え、手足の先が麻痺したように凍えてしまう。山頂の寒さや風の強さは尋常ではない。

日曜日は庄内・酒田市泊まりの予定。酒田でいい仕事をしているカメラマンやデザイナー、イラストレーターの方々と、はじめて会って、いろいろ話をするつもりだ。秋田で仕事をしていると、どうしても身近なところで人材確保をしてしまい、いつの間にか仕事がマンネリ化してしまう。新しい風を吹きこんでもらいたい。来週は札幌で本の装丁家に会う予定だし、この年になると他力本願のパワーをうまく利用して自分を変えていくしか、手はないのかも。

うれしいような悲しいような複雑な心境になってしまった。「ゆうちょ通帳」に郵便年金が入金になっていたのだ。たいした金額ではないが、これから死ぬまで振り込まれる。国民年金も今年の10月から支給(もらうわけではない)なのだが、この郵便年金は50代に入ってから思い切って集中払いしたもの。まったく計算外で忘れていたので、なんだかギャンブルで儲けたような気分。私の仕事は個人商店と同じで年齢は何の関係もない。ボケずに健康でさえいれば70でも80でも、まったく現役である。……と思っていたのだが、今年の10月からは国民年金受給者になる。これもまあちょっぴり得したような、いや、いいかげん引退したらという勧告を迫られているような、なんとも複雑な心境のまま、その時を迎えそうだ。

たかが年金で動揺しているのは、なにせ生まれてこのかた人様から給料をもらった経験が一度もないせいかもしれない。学生時代に起業して、その日から「万年シャチョー」で、これまで生きてきてしまった。誰かからお金をもらうという経験のないまま還暦になってしまったのだ。いやはや何という人生だ、と思わないわけでもないが、何とか生きていけるもんだねえ、という感慨もある。
自分で払い込んだお金が返ってくるだけだから「もらう」わけではない。得した、などと言うべきではないだろう。平常心で対処すべきなのだが、どうにも貧乏人根性丸出しで、戸惑いもある。

魔の午後の6時間
 自分の一日二四時間を大雑把に、起床から昼まで、昼から夕食まで、夕食から就眠まで、そして睡眠時間、と四つに時間帯に色分けすることができる。
 朝起きてから昼までは、ほぼ分刻みでやることがあり、けっこう忙しい。あっという間に昼になってしまう。
 夕食に家に帰るのは六時。食事が終わり食器・風呂洗いがすむと一時間半の夜の散歩とストレッチが待っている。散歩から帰ると12時の就眠時間までDVD映画を見たり、本を読んで過ごす。この夜の時間も、あっという間だ。ちょっと散歩時間が長すぎるのかもしれない。
 ベッドに入るとスムースに睡魔が襲ってくる。夜中に一度、トイレに起きるときもあるが、まあ朝まではぐっすり熟睡できる。自分で言うのもなんだが、実に規則的な日々である(ような気がする)。

 問題もある。「昼から夕食まで」の6時間だ。午前中の仕事は前日から予定していたルーティンワークや事務処理などが主で、あたふたしている間に時間が経ってしまう。午後からは比較的長い時間を要する「創造的な仕事」をする。時間的に切迫していないが、仕事上は最も大切な時間帯だ。このあたりに来るとモーレツに眠くなる。とりあえず、とソファーに横になると1時間以上ぐっすり寝込んでしまったりするから始末が悪い。眠気覚ましに間食をしてしまうのもこの時間帯だ。部屋に閉じこもっているのが悪いのか、と自転車で近所を散歩してみるが、これも疲れるだけであまり効果がない。この時間帯に電話や来客が集中してくれれば、と思うのだが、思うようにはならない。実に静かな午睡タイムなのだ。

 数年前で、こんなことはなかった。毎週書かなければならない連載の原稿が複数あったし、個人的な調べ物をしているうちに、この午後の時間は勝手にどんどん過ぎて行った。いつもシブシブ、仕事を中断して夕食のために家に戻っていた。連載が次々に終わり、さらに週末は山歩きのためにいっさい仕事をしなくなってから、逆に平日の午前中はかなりの集中力と力技で仕事をこなすようになった。長くて煩雑な午後の仕事の一部は他の人に振り分け、分担してもらうことを覚えた。何もかも自分がやる、という体力がなくなった、という事情もある。こうした事情から、午後の半分ほどは時間を持て余すようになってしまったのである。貧乏性だし、精神衛生上あまりいいことではないから、いま、必死に時間を埋めるための仕事(遊び)を考えている。


無明舎Top ◆ んだんだ劇場目次