んだんだ劇場2009年11月号 vol.131

No42−節目のエアロビクス−

読書の秋は新聞広告から
10月になってしまった。「しまった」というのも残尿感のある言葉だなあ。もっとちゃんとやることがあったのに、できないまま月をまたいでしまった、という不完全燃焼感を言いたいのだが、ま、これはいつものこと、言葉のあや。まちがいないのは、もう2カ月もたつと1年の最後の月になってしまうという事実ですね。こう考えると1年は早くて「しまった」にも少しリアリティがありますね。
9月は、仕事はともかく週末の遊びの日程がびっしりだった。山に行かなければ「大人の休日切符」などで県外に小旅行を繰り返した。机の前に垂れこめているより、外の空気を吸って、うまい酒を飲み、リフレッシュするほうが良いに決まっている。が、この「良さ」がクセモノ。どうしても食べ過ぎ飲み過ぎ、判で押したような日常生活が崩れていく。楽しみの裏には同量の苦しみの予兆が隠れている。
秋は山歩きが最高のシーズンで、できれば週に2回は山の中にいたい。がうまくしたもので本業のほうも実はかきいれ時。「読書の秋」とはよくいったものだ。たぶん〈統計はとったことはないが〉1年で最も本が売れる時期なので、夏場からこの秋に向けてせっせと新刊作りに励む、ということになる。本づくりそのものは9月中にメドがたっているのだが、10月はその新刊を売るための営業、販売促進活動が重要な仕事になります。チビ会社なので、本の編集制作と販売営業は同じ人間が担当するわけで、どっちの仕事が面白い、と訊く方もいらっしゃるが、う〜ん、これは難しい。
そんなわけで、10月中はかなりの数の(チビ会社としては)広告出稿が予定されている。決定しているだけで次のような日程だ。

10月4日 読売新聞読書欄下5段12割
10月15日 東奥日報全3段(青森)
10月20日 秋田魁新報全3段
10月20日前後 朝日新聞1面3段8割

といった具合。各新聞社が公称している広告価格でいうと、これだけで200万は下らない金額になるのだが、そこはムニャムニャ業者間値段というものがある。かろうじてうちのようなチビ会社にも払える仕組みになっている。どれかの新聞をとっていたら、ぜひご覧になってください。


誕生日・還暦・年金
誕生日をカミさんが祝ってくれると言って、寿司屋さんに連れて行ってくれた。
はじめて行く寿司屋さんで、珍しいこともあるものだと驚いたのだが、わたくし、還暦なのである。大きな節目だから、たぶんカミさんも奮発してくれたのだとおもったら、どうも自分の所属するサークルの忘年会の会場下見、という目的もあったようだ。なるほど。おいしい寿司屋さんだったが、いざ勘定の段になると「細かいお金がない」などとカミさんは愚図りだし、けっきょく自分のカードで払った。なさけない。

ま、それはともかく還暦である。たいした感慨もないのだが、こんな年まで同じ仕事を続けているとは、さすが予想しなかった。しなかったが、還暦になって別の仕事についている自分というのも想像していなかったから、ま、こんなものなのかも。

還暦になると年金が支給される。これは想定外だった。数ヶ月前、社保庁から支給の具体的な金額や時期の連絡があり、「ほんとにもらえるんだ」と、にわかに現実味を帯びた。と同時に、これもすっかり忘れていたのだが、10年ほど前、どうせ年金支給額なんかたかが知れてるからと、郵便局年金にも入った。その支給も還暦前にはじまった。額は微々たるものだが、なにせ生まれてから一度も他人さまからお金をもらうという経験をしたことのない「万年シャチョー」である。人様からもらう(もらうわけではなく戻ってくる、あるいは支給というべきだが)お金は掛け値なしにありがたい。

この年金支給が現実味を帯びたことで、つくづくわかったことがある。自分の預けたお金が返ってくるだけなのに、けっこう喜んでしまうのは、人様からお金を頂くという経験をこれまでしたことがないからだ。社会に出て40数年、かっこよくいえば大樹に依ることなく自分の糊口は自分で塗してきた。それが当たり前と思っていたし、好きな仕事をしているのだから、金の苦労はグダグダ言うまい、と決めて生きてきた。だから、なんとなく拾いもののボーナスのように感じてしまうのだが、そろそろ年金受給を既定事実として受け止め、それを繰りこんだ人生設計をする時期なのかも……。

打合せに決算にエアロビクス
いやぁ、なんだかあたふたあわただしい1週間だったなあ。珍しいネ、こんなの。週の前半部だけで4つほどの打合せや会議があり、そのひとつひとつがけっこう長く(飲み会付きも)、中身の濃いものばかりだった。会議嫌いにとっては緊張しまくりで、慣れないことは疲れが溜まる。打合せではないが、税理士の先生の「決算報告」もあった。小舎の決算は9月締めである。友人のFさんの定年祝いの飲み会もあった。Fさんは市営バス運転手をめでたく定年退職、近所の居酒屋で2人しんみり語り合ってしまった。
「秋田連続児童殺人事件」という毛色の変わった本も出した。30年以上の出版の仕事をしてきたが、秋田県内の殺人事件のルポを出す、というのは初めての経験である。週末には「山の学校」恒例の「なべっこ遠足」まであった。

なかでも今週の特筆すべき出来事は、週末に突然再開したエアロビクス。もう四半世紀以上断続的に続けているフィットネスだが、山歩きに夢中になって、ここ数年はご無沙汰。でも再開すれば三,四回の参加で身体はエアロビ仕様に戻ってくれる。ありがたい。10月は過労から体調も悪く、おまけに天気も不順で山行はゼロ、そんなこんなで身体のフラストレーションは極限にまでたまっていたのだろう。軽くエアロビで汗を流しただけで身体は喜びにうちふるえている。いやぁ続けて来てよかった。心身が崖っぷちに立たされたとき、いつもこのエアロビに救われてきた。エアロビは困った時の神頼みに似た「私の宗教」である。

決算も終わった。去年より数字はいいが黒字幅は減少、税理士の先生にも「厳しかったですね」といわれてしまった。経費の数字が大きくなったのが原因だが、これには理由がある。来年の年度末でなければ入金にならない大きな仕事をしているための「しかかり」である。経費でお金が出ていくばかりの構造になっているのだ。無明舎は原則、銀行取引をしていない。よく言えば無借金経営である。でもこんな時は本当に困ってしまうのだが、お金は出ていくばかりで1銭も入ってこない。じっと耐えるしかないのだ。ま、愚痴を言ってもしょうがないが。


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