んだんだ劇場2010年2月号 vol.134

No45−すごい時代になったもんだ−

謹賀新年
明けましておめでとうございます。
今年もよろしくご指導、ご鞭撻のほど、お願い申し上げます。

秋田市は年末からこのお正月にかけ、ものすごい吹雪でした。3が日を過ぎて、ようやく少しは天候も緩んできましたが、なんとなく今年の波乱の一年を予感させる荒れ模様です。

どこにも出かけず家と事務所を往復しながら、お正月期間中はおとなしく蟄居していました。子どもたちも帰省せず、来客もなく、実家にも帰らず、元旦登山も中止(天候悪化で)、お天気とは裏腹に静かで穏やかな日々でした。

読んだ本は、昨年亡くなった中島梓『転移』。がん闘病日記なのですが、興味を持ったのは今年最初のわが舎の出版物が若い女性のがん闘病記(『ミラクル・ガール』)だからです。その参考にと読みはじめたのですが、プロの作家の書いた闘病記というのは、やはり一味も二味も違いますね。すっかりはまって(というのも失礼ですが)、過去に書かれた『アマゾネスのように』『ガン病棟のピーターラビット』も読んでしまいました。DVDはウディ・アレン監督『恋するバルセロナ』と邦画の『逆噴射家族』の2本でした。NHKハイビジョンの『激走モンブラン』というドキュメンタリーも面白かったなあ。

そんなわけで嵐(今年)の前の静かな日々を、何も考えずにすごしました。どう楽観的に考えても明るい展望なんぞ望めそうもない社会状況ですので、いろんな不安のほうが先に立ってしまう年になりそうです。でもヤケにならず、ネバリ強く、丁寧な仕事を心がけていく所存です。
今年もお見捨てなきよう、よろしくお願い申し上げます。


Tさんの会社が閉じてしまった
年末に取次店の友人から電話があり、信州にあるTさんの出版社がギブアップしたとの連絡を受けた。正式発表は年明け早々ということで、このニュースはどこにも流れなかったが、確か去年の同じ時期にもいろんな出版社の破綻が報じられたんじゃなかったっけ。もうずっと過去のことのような気がするけど。

Tさんは小生と同い年。地方で出版をはじめたのも同じ時期で、よくライバルとして互いの会社が並べられてメディアに紹介されたこともあった。Tさんは日本各地域の今昔写真集出版のビジネス・モデルを作った人だ。一時期社員が50人近くもいた地方出版社の雄のような大会社だったが、個人的な問題から退社、同じ信州で別の出版社を立ち上げた。そのころからお互い忌憚なくいろんなことを話せるようになったのだが、Tさんには昔とった杵柄ならぬ写真集ビジネス・モデルの夢を追い続けるところがあり、「もうそんな時代じゃない」となんどか進言したことがあったが、やはりあの夢は忘れられなかったのだろう。

皮肉なことに、いま、秋田市では彼が作り上げたビジネス・モデルの落とし子である秋田市の今昔写真集が刊行されたばかり。秋田市の多くの読者は、この地域写真集が信州で編集されていることなどご存じないだろう。街に出かけると書店店頭でいやおうなくTさんが作り上げたそのモデル本のたて看板がいたるところに目に付いてしまう。そのたびに今はその会社にいないTさんの無念さに胸が痛む。この地域写真集の版元とて、そんなに先は長くないだろう。言い方は悪いが、まるでコソ泥のように日本各地で雪だるまを作るようにインスタント写真集を作り、逃げるようにほかの地域に移動する。そんな「根無し草出版」が通用する時代ではない、と小生には思えるのだ。

それはともかくTさんが消えると、小舎は地方出版社の古株トップに、なってしまう。津軽書房の高橋さんや葦書房の久本さんなきあと、その後の世代といわれた私たち戦後世代すら、もう数えるほどしか残っていないのだ。老兵は消え去るのみ、というのは正しい。Tさんの退場はそのことを強く意識させてくれた。はじめるのはたやすいが、幕を引くのがけっこう難しい、という言い方もできる。すごい時代になったもんだ。


2週分、このニュースを休みます
新しい年になってから、ずっと雪が降り続いている、ような気がする。
当初は暖冬の予想もあったのだが、さすがに天候だけは予測不能だ。まったくの想定外なのだが、毎日雪と格闘している。

去年あたりから寄る年波に勝てず、ズボン下(ユニクロのヒートテックものを愛用)をはくようになった。以来、下半身に寒さを感じたことはないし、もちろん風邪もひいていない。このズボン下を併用すれば春秋用の薄いズボンもはけるので、従来のごわごわと重い冬ズボンから解放されたのも大きい。活動的になれるからだ。それにしてもこのユニクロのヒートテックと言うのはかなりの優れものだ。

1日2回、家の前の雪かきをするのも日課。これがけっこう楽しい。昔はこれが嫌で冬そのものも嫌いになりかけた。いまは現金なもので朝起きて玄関先に雪が積もっていないとガッカリする。雪かきマニアになってしまったのである。散歩や山歩きで足のほうは幾分自信あるのだが、腕のほうはからっきしダメ。その鍛錬に雪かきは最適だ。10分もやると腕が上がらなくなるほど筋肉は疲労する。雪かきをするとスポーツクラブにいったような「得した気分」になる。

スキーも冬になって3回も行った。太平山、矢島、田沢湖と、徐々にグレードを上げ。足腰をならしていったのが良かったようで例年なら2,3回滑ると飽きてしまうのに、今シーズンはそれがない。逆に「もっと滑りたい」と言う欲求が強くなるばかりだ。用具も身体になじんできたし、もしかするとスキーに関しては一皮むけたのかもしれない。

とまあこんなわけで雪のシーズンをけっこう楽しんでいる。
冬や雪を自分から迎えに行って積極果敢に娯楽に換えてしまった、と言っていいかもしれない。ぼやいても嘆いても憤っても雪は降るし、冬は来る。楽しんだほうが勝ち。

来週から2週ほど日本を留守することになった。よって週刊ニュースも2回分のお休み。帰ったら旅の報告をします。それでは。


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