んだんだ劇場2010年4月号 vol.136

No47−大掃除−

いらないものを抱えて生きてきて

ちょうど仕事が一段落、いわゆる「谷間」というやつで、この機会を利用して前からやろうと思っていた大掃除を決行した。意を決しないとこれはなかなか前に進まない。仕事の合間にやっていると集中力が途切れ、どうでもよくなってしまうから、こればっかりは最優先事項と決めてかからないと、途中で挫折してしまう。
掃除とはいっても10年に一度というおおがかかりなものだ。自分の仕事場、資料などをストックしている倉庫、自宅書斎の3か所がターゲットで、とにかく不要なものを徹底的に「捨てる」。これが今回の大掃除の目的である。

やってみてわかったのは「絵」の多さだった。もらったり、買ったり、つくったりしたものが、ものすごいスペースをとっていた。「つくったり」というのは説明が必要だ。絵ハガキや印刷物の中に気に入った絵があると、けっこういい額縁を買ってきて、自分で額装する趣味があるのだ。ほとんどがタダか100円絵ハガキなのに額装にけっこうカネがかかっている。だから印刷物の色があせても額がもったいなくて、捨てるに捨てられず、倉庫に眠ったままになっていたのである。
昔のレコードもすごい量あったなあ。LPからSPまで、CDでも持っているのだが、これも捨てられない。お金のなかった時代に苦労して買いためた記憶があるからだろう。過去の本を書くときに使った資料類は中身を確認することなく全部段ボール箱ごと、捨てた。いちいち中身を確認していると作業が中断してしまう恐れがあるからだ。

30年近く前、山に登るために買った寝袋やリュック、スキーの装備、カヌーの備品もすべて捨てた。いまも使えそうなものはもらってくれる人がいたが、あとはもうやみくもに捨てた。いらないものを抱えて生きていくのは、もう、まっぴらだ。ものは少し足らないと感じるくらいが、ちょうどいい。
還暦を過ぎて初めてそんなことに気がついた。

この3か所の大掃除に約3日間かかりっきりだった。ほぼ終了し、倉庫も書斎も、ものは半分ほどに減った。ずいぶんすっきりしたが実は最大の難関である「本」と「服」の大掃除はまだ終わっていない。本は定期的に処分しているので慣れているが、服の処分は何度も挫折。でも近日中に何とか実行に移すつもりだ。


酒蔵にて

毎年この時期になると横手市浅舞にある酒蔵にお呼ばれ、出来たての新酒を御馳走になる。この日は車の運転が出来ないので、友人に運転してもらい送迎付きの年に一度の大名旅行だ。宴席といっても客は小生と作家のSさんの二人っきり。酒のつまみは蔵人たちの手づくりで、杜氏のMさんご自慢の料理も次から次へと出てくる。年々、Mさんの料理の腕は上がっていて、「酒もこのぐらいうまけりゃいいのに」といった減らず口が飛び交う身内(若い蔵人たちも参加する)の飲み会である。

酒のアテのメーンは「ザル」。イルカ肉のアバラ骨の部分を臭みが取れるまで味噌で煮込んだ県南部の郷土料理である。蔵人たちの間だけでなく広く県南地方では昔から食べられていたものだ。味はクジラとほとんど変わらないのだが、アンモニアが強いので食べられる時期は冬の一時期だけ。3月の声を聞くと魚屋でも「ザルあります」の看板がいつの間にか姿を消す。だから小生がザルを食べられるのはこの日だけで、楽しみにしている。
アカデミー賞のドキュメンタリー部門で賞をとった映画(大地のイルカ漁を告発した作品)の話題もあり、イルカを食べると言うと顔をしかめる人も多いが、日本人が当たり前のように食べているクジラ缶詰の肉はほとんどがこのイルカ肉である。あんたの好きなクジラ缶の肉ですよ、と言うと驚く人が多いが、生物学的にイルカはクジラ目小型ハクジラ類、まるっきりクジラなのである。

それはともかく、お互い好き勝手、言いたい放題の無礼講の酒ほど楽しいものはない。酒の最高のアテは、まちがいなく会話である。と同時に、こちらの年齢によるものだろうが、酒はやっぱり日本酒がいい、と思えるようになってきた。若いころに比べると酒量はめっきり落ちてしまったのだが、おいしい酒をちびちびやる楽しみがわかるようになった。「ちびちび」という日本酒だけがもつ独特の作法に身体がなじんできたのかもしれない。杜氏のさんのモットーは「なにぬねのの酒」。なごむ、にっこり、ぬくむ、ねむる、のんびり――飲んでくれる人たちがそんな気持ちになってくれればうれしいという。


あわただしい1週間でした

なんだか、落ち着かない、あわただしい1週間だった。
先週末から長野へ。友人の出版社が閉じることになり東京の取次社長と2人、彼を励ます会に出かけた。出かける朝、長野で送迎をしてくださる友人から電話。「もう出かけたと思ったけど、大事な連絡があり舎員の人に伝えようと思って」。昔なら、長野まで出かけると言えば2日がかりの大旅行、今は朝10時の飛行機で東京に飛び新幹線に乗り継げば午後4時前には長野に着く。飛行場までは15分なので楽勝なのだ。

励ます会には地元の新聞社の偉い方なども駆けつけ、小人数ながらもいい会だった。翌日は長野近郊にある飯綱山(1917m)に友人と2人で登った。快晴で、雪も締まり、スノーシューなしのツボ足で一挙に頂上へ。3時間半でピークへ達したが頂上は無風で暑いほど。2千m級の頂上が寒くない、というのは初めての経験だ。下山後は温泉、そして友人夫婦とホテル内の居酒屋で一献。信州の山は憧れだったが初心者には遠い存在。一生、北アルプスとは縁がないと思っていたのだが、山頂から黄砂に煙る北アルプスの雄姿をみたら、「近いうちに来よう」などと不遜にも思ってしまった。悪い予感がする。

3連休はそんなわけで長野。帰ってくると仕事が山済み。「ミラクルガール」の増刷やダイレクトメールの注文発送、企画営業部門の年度末請求事務などが重なって舎内はバタバタ。とくに経理事務の女性舎員は連日真夜中まで仕事をしている(ようだ)。仕事を終えて家に帰っても、まだ誰かが事務所で仕事をしていると思えば、緊張は続いたまま。連休中もみんなは出勤して仕事をしていたようだ。

顔に長野の山での日焼けをクッキリ残しながら今度は仙台へ。週末前のひと仕事。NHKラジオで番組を持っている伊奈かっぺいさんの30分トーク番組に出させてもらう。収録は仙台だが放送は全国なのだそうだ。新幹線の往復はグリーン車、駅から局への移動はもちろんタクシー券。こんなことができるのはNHKぐらいかもネ、このご時世では。
かっペイさんとお会いしたのは20年ぶりくらいか。若いころはよく一緒に遊んだのだが。「でも、むかし話は今日はやめようね」と打ち合わせてスタジオへ。

何ともあわただしい1週間。自分のデスクに帰ってきて座るとどっと疲れが出て、仕事をする前に眠りこけてしまったほど。やっぱり自分はインドア派なんだね本質は。しばらく事務所にこもって仕事をする日々になりそうだ。


無明舎Top ◆ んだんだ劇場目次