安全な草刈り機
ナイロンコードカッター
9月17日の金曜、午後から休みを取って3週間ぶりに房総半島、千葉県いすみ市の家に帰った。炎天がまだ続いているが、草刈りの続きをしなければならない。でも今回は、ちょっと楽しみがあった。帰る少し前に、かみさんから「新しい草刈り機を買ったよ」と、連絡を受けていたからだ。それは「刃のない草刈り機」である。
鉄の回転刃のついた草刈り機 |
ナイロンコードが鉄の刃の代わりをする草刈り機 |
従来の草刈り機は、丸い鉄ののこぎり刃が回転して草を刈る。これだと、少々茎の硬い草も、細い竹でも刈り払うことができる。前の「日記」で写真をお見せした作業中の私が使っていたのが、このタイプだ。しかし、危険な機械でもある。ゴーグルをしているのは、回転刃が小石を跳ね飛ばしたり、石にあたった刃が小さく欠けたりして、自分の方へ飛んでくることがあるからだ。
わが家の「新鋭機」は、先端に紐(ひも)のようなものがついているだけで、刃らしいものはない。これは丈夫なナイロンのコードで、これを回転させて草をなぎ払うのである。従来の機械より、高速回転するエンジンがついている。父親がどこかで、この機械を使っているのを見て、「これなら安全だ」と買うことにしたのだそうだ。
鉄の刃と違って、回転しているコードが見えないから、どこまでの範囲で草が刈れるのか、最初はとまどった。機械は軽くて扱いやすいが、高速回転のせいか振動がものすごい。タンクに燃料の混合油を満タンにして30分以上は動かせるが、燃料を使い切らないうちにナイロンコードが切れてしまい、振動で腕にしびれが来て、次の燃料を入れるまでしばらく休まないと作業が続けられない。しかも、スパッと草を切るのではなく、鞭(むち)で草をなぎ倒すようなものだから、細かい草の破片がやたらと飛び散るので、ゴーグルは今まで以上に必需品であることもわかった。
でも、欠けた鉄の刃が飛んでくるような心配のないのが何よりだ。これなら、かみさんも使える。
かみさんは、耕運機は使いこなせるようになった。9月の初め、台風が日本海を抜けた影響で久しぶりに房総半島にも雨が降った日、用事があって午前中に電話したら、父親が出て、かみさんは耕運機で畑を耕しているところだと言われた。そこには9月10日、白菜を40株とブロッコリーを10株植えたとメールが来た。いつもなら、8月末に白菜のタネをまくのだが、今年は炎天続きでタネまきができず、苗を買って来て植えたのである。
かみさんが耕運機で耕し、植えた白菜 |
植えたばかりでヒョロヒョロのブロッコリー |
しかし、今まで、草刈り機だけは触らせなかった。うっかりして自分の足を切る事故も起きた機械を、かみさんに扱わせるのは危険だと思ったからだ。箸の上に食器を置いて斜めになっているのを気にしなかったり、小さな器の上に大きな皿を重ねて運んだり、なんだか危なっかしいことをしょっちゅうやっている人である。ある時、薪割り機(こういう機械もわが家にある)の調子が悪くて、メーカーの人に来てもらい、エンジンのかけ方を教えてもらった。「エンジンが動いていると、機械の上の部分が熱くなるから気をつけて」と言われたとたん、かみさんがそこに手のひらをパッと押し付けて「熱くないよ」と言ったのには肝を冷やした。幸い、エンジンをかけたばかりで、まだ熱くなっていなかっただけの話である。
そんなだから、何かの時に「お前は、危険に対する認知度が低い」と注意した。
すると、かみさんが言った。
「あら、だから、あなたと結婚したのよ」
「ん……?」
新鋭の草刈り機は、かみさんも使いこなせるはずだが、ゴーグルだけは忘れないでほしい。
かみさんの梅干
9月22日の水曜日、いま私が勤めているNEXCO中日本(中日本高速道路)の定例社長会見があったので、名古屋に戻り、23日にまた房総半島へ帰った。だが、今度は連日の雨。ちょっと雨が上がった時間に、刈っておいた草を集め、堆肥枠に積み重ね、ようやく晴れ間が出た25日の午後から、草刈りの続きをやった。
26日の日曜、市の囲碁大会に出場する父親のために、かみさんが昼食のお握りを作った。そこに入れたのは、かみさんが作った梅干だった。6月の末に塩漬けにして、8月の初めの晴天続きを見はからって干していた。赤ジソも、もちろん畑から採って来た。
8月の初め、日に干した梅 |
出来上がった梅干 |
これまでは毎年、梅シロップを作って暑い盛りに飲んでいたが、梅干を作ったのは初めてである。こんなうれしいことはない。なにしろ、市販の梅干は中国から塩漬けの梅の実を輸入し、水に放り込んで塩を抜き、「調味液」なるものに漬け込んだものしか今は見当たらないからだ。「梅、塩、紫蘇の葉」だけで梅干はできるのである。そんな当たり前のものが、店頭から姿を消して久しいことに気づいている人が、どれだけいるのだろう。
かみさんに塩分濃度をきいたら、「20%」だという。しょっぱいけれど、この濃度なら保存がきく。塩分の摂り過ぎを気にするなら、1日1個にすればいいだけの話だ。減塩とか、ハチミツ入りとか、えたいの知れない梅干を1日に何個も口にするより、ずっと安全で、おいしいし、天然由来のクエン酸がたっぷりだから体にもいい。
ただ、かみさんが「この梅干、ちょっと皮が固い」と言った。いつもは梅シロップを作るから、今年も父親が青梅の時期に収穫し、それを塩漬けにしたためかもしれない。梅干にするなら、もうちょっと熟してからがいい。
父親を囲碁大会の会場に送って、戻ってきたかみさんに、私もお握りを作ってもらって名古屋へ戻った。
カボチャ料理は炊飯器で
名古屋へ戻るバッグの中には、カボチャ、サツマイモ、ニガウリ、ナスを入れて来た。で、さっそくカボチャを料理した。これが、簡単。適当に切って、炊飯器に入れればいいのだから。
亡くなった母親は、カボチャの煮物をよく焦がしていた。ある時、テレビで「炊飯器でカボチャを炊く」方法を知り、以後、失敗がなくなったと、私に伝授してくれた。
箸でつまめる大きさに切ったカボチャを炊飯器に入れ、適当に砂糖を振りかけてから炊飯器のスイッチを入れるだけなのである。砂糖がカボチャの水分を引き出し、その水分がなくなった頃に炊飯のスイッチが切れる。不思議に、ちょうどよい加減にカボチャが炊き上がっている。
炊飯器に切ったカボチャを入れ、砂糖を振りかける |
炊き上がったカボチャ |
砂糖だけだと、ただ甘いだけなので、今回は顆粒の出汁も振りかけ、醤油をタラタラとたらしてからスイッチを入れた。甘辛いカボチャの煮物が、1時間ほどでできた。
実はこれ、NEXCO中日本の社内報に連載していた「単身赴任者のための料理教室」でも、紹介したことがある。台所仕事が不得手なお父さんのための料理は、手抜き料理でもあるから、けっこう、奥さん方にも連載は好評だったらしい。
名古屋に戻った日の夕食は、これでおしまい。カボチャ1個の半分は食べてしまった。