腰痛について
2011年は何事もなくスムースに……と言いたいところだが、お正月休み中にも何度か不快な電話があった。訳のわからない注文やわがまま自費出版依頼、無理難題の類。昔の知り合いからの連絡というのもなぜかこの時期多くある。みんなが休んでいるときに電話をよこすということ事態が非常識ともいえるので、こんな時に事務所で机に垂れこめているほうが、問題なのかも。
去年の10月頃から、なんとなく腰が痛い。60年の人生で腰痛は経験なし。それがここに来て腰が重苦しい。原因はすぐに分かった。寝室をリフォームして大型テレビを入れ、そこで過ごす時間が多くなった。ふだん使うことのなかったソファー椅子に長時間お世話になるようになった。それが問題だった。腰への負担が急に増えてしまったのだ。年末からはその椅子をやめ、リクライニングの腰位置の浅いものに変えた。腰痛はだいぶ治まった。
そんなこともあり年末、駅前の書店をブラついていて「腰痛」について書かれたヘンな新刊に、過剰に反応してしまった。冒険作家である高野秀行著『腰痛探検家』(集英社文庫)だ。なぜ単行本にしなかったのか、ふしぎなほど、おもしろ本だった。高野さんの本は何冊も読んでいるが失礼ながらこの本が一番面白く、興奮した。私の大好きな「ご近所ドキュメンタリー」(私の造語です)の傑作である。身辺のささいな出来事や事件を徹底的に追い詰めていく。腰を治してくれる医者や施術者たちとの、やりとりが抱腹絶倒だ。本のテーマなんて、作家の力量さえあれば、どんなことでも大丈夫ということを証明したような本だ。
『腰痛探検家』のコーフン冷めやらぬまま、お正月用に買っておいた内澤旬子著『身体のいいなり』(朝日新聞出版)を読みだした。正月休み用にとっておいたのだが『腰痛』があまりに面白かったので、病気本(?)として、なだれ込むように読み終えてしまった。『腰痛』以上の面白さ、いやおもしろいというのは失礼か。すごい、という形容が大げさではない。さすが内澤さん(うちの仕事もしていただいたことがあるイラストレーターです)、よくぞここまで書いてくれました。実はこの本も実は腰痛から話ははじまる。腰痛つながり本である。
とまあ腰痛本の話なのですが、先日、スキーに行ってきました。山登りよりも腰への負担が……なんて考えていたのですが、まったく何の問題もなし。やっぱり小生の腰痛はあのソファー椅子が原因だったようで、もう問題なしのようです。 |