夏の「どぜう」にはまってしまう
7月29日(金) 昨夜はモモヒキーズの事務所宴会。6名の参加で「どぜう鍋」。これはちょっと誰もまねできない好企画(自画自賛)だった。「駒形どぜう」に10数回授業料をはらい、下処理から地獄鍋(豆腐にくぐらせるやつ)までマスターしてきたSさんがいればこそ。柳川なんて卵を溶いて数秒で食べるのが美味しい、とはじめて知った。1キロ仕入れたドジョウはすっからかん。うまいうえに香りも上品、ゴボウとネギだけという材料も洗練の極致。堪能してすっかりファンに。夏は「どぜう」でしょ。
7月30日(土)久しぶりの様な気がするのだが一晩がかりで小説を読了。蓮見圭一『別れの時まで』。40歳の大手出版社編集者と70年代の企業爆破事件が、ある女優を軸に交錯していく話だが、オジサンにはうまく理解できなかった。公安警察や過激派の描き方にリアリティがない。いや20歳も違う「若者」には、こんな風にあの時代の「俺たち」は映っているのか、という新鮮な失望のような気持ちか。読ませる、いい小説だとは思うのだが、そのへんの時代的なリアリティが最後まで引っかかった。聡明な子どもたち、軽い公安警察、豊かな編集者、おしゃれな男女の会話……ありえないなあ。
7月31日(日)7月がどうにか終わってくれた。とにかく忙しかった。「忙しい」といっても円高ドル安中の為替のディーラーのような忙しさではない。何本もの途中の仕事を抱えて油断すると手を抜いてしまう危険と闘っている、とでもいえばいいのだろうか。緊張をずっと強いられるので、長く机をあけておけず、家でも気を抜けず仕事のことを考えている。陣中見舞いに来た友人が、昼間からソファーに寝転んでいるわが姿を見て「どこが忙しいんだ」と怒っていたが、いや気が休まらない状態が続くことを小生は「忙しい」と表現してるわけで……8月はすこしのんびりしたい。
8月1日(月)夜の散歩の途中、分厚いさいふを拾ってしまった。見つけた時、その厚さや形状から「ビンボーな若者のもの」とすぐに判断がついた。拾うか無視するか悩んだが、けっきょく拾ってしまった。なかには案の定、学生証とおびただしいカード類。今日、朝一番で大学に連絡、取りに来てもらうことにした。ああいう場合、無視するのも選択肢の一つかもなあ。散歩の時、携帯用さいふに2千円くらいの緊急用小銭をいれて歩くのだが、その額よりも少ない金額しか学生さいふには入っていなかった。忙しいから早く取りにきてね、学生さん。
8月2日(火) 酒田の池田昭二先生が昨夜亡くなられた。数か月前、病院にお見舞いに行った時はお元気だったのに。池田先生の本は『忘れがたい山』の1冊しか出していないが、亡くなった息子さんの池田拓著『南北アメリカ徒歩縦横断日記』はうちのベストセラーだし、その拓を主人公にした物語『ビーグル海峡だ!』は女子パウロ会に依頼され、私自身が書いた本だ。いろんな縁の深い、尊敬する先生だった。「鳥海山の主」とまで言われたアルピニストで、偉ぶらない人柄と温厚な性格に人望が厚かった。いまは何も言うことはない。合掌。
8月3日(水)誰も信じてくれないのだが実はスキューバダイビングのライセンスを持っている。20年前、せっせと実習に通い試験を受け取得した。この間、機材を背負い潜ったのは1回のみ。舎員旅行で海外に行った時、みんなと一緒に潜った。ライセンスを持っているのは私一人なのに溺れそうになって大恥をかいた。以来、海とはご無沙汰だ。泳ぎは得意中の得意だが、正直なところ海は怖い。今年こそ、と思いながら20年がたってしまった。まだ遅くないだろうか。ライセンスが泣いている。
8月4日(木)熱中症予防のつもりで水分を多めに取っていたのだが、夜、腹のあたりがキンキンと痛んで目を覚ますようになった。あきらかに冷たいもののとり過ぎだ。今日からはちゃんと魔法瓶にお茶を詰めて飲むようにしよう。冷たいものが身体に入り続けると、身体はその冷たさを感知して、何時間たっても「冷たいゾ」とシグナルを送り続ける。若い時は新陳代謝が盛んなせいか、こんなことはなかった。この年になると逆に身体はみごとに敏感に外界の変化と反応してくれる。衰えると敏感になることもいっぱいある。
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