んだんだ劇場2011年3月号 vol.146
No80
できました、手前味噌

たくさん飛来する白鳥
 家に用事があったので、1月21日の金曜、午後から休みをとって名古屋から、房総半島、千葉県いすみ市の家へ帰った。JR外房線・大原駅に着いたのは午後4時過ぎで、まだ明るかった。冬至から1か月も過ぎると、ずいぶん日が永くなった気がする。
 迎えに来ていたかみさんの車で帰る途中、トンボ沼の近くまで来ると、かみさんが「さっき、白鳥を見たよ」と言った。

50羽以上いた白鳥

首筋の黒っぽい、若い鳥もいた
 トンボ沼は、正しくは「とんぼの沼」といって、実質は農業用のため池なのだが、20種類ほどのトンボが見られるというので、旧大原町が周囲に散策路などを整備した公園だ。ここに冬、初めて白鳥が来たのは2006年で、そのことは、このHPの「んだんだ劇場」2006年4月号にある「幻の白鳥」を読んでいただきたい。私がそれを知ったのは3月2日で、朝早く行ってみたが、すでに白鳥は北国へ帰ったあとだったという話である。が、かみさんが小型のカメラで撮った写真で、なんとか姿をお見せすることができた。
 あとで、なぜ、こんな温暖の地まで白鳥が来たのかを考えたら、この年の冬は大寒波が日本を襲い、いつも白鳥が飛来する北国の湖水が凍りついて着水できなかたのだろうと想像できた。1月21日には、大原でも10センチも雪が積もった年だ。1998年からここに住んでいるが、昼になっても消えない雪は、その時だけだ。これも、「んだんだ劇場」2006年2月号に、「犬はよろこび」という話を書いて、愛犬モモが雪の上を駆け回っている写真をお見せした。
 さて、今回の白鳥の話である。
 最初の年は10羽ほどで、それから毎年飛来するようになったのは知っていたが、今回、ざっと数えただけで50羽にも増えていた。見物に来ていた人に聞くと、「あの山の向こうの沼にいるというので、行ってみたけどいなかった。それで、こっちに来た」と、北の方を指差した。その山には、農業用水のための小さなダム湖がある。ほかにも1か所、白鳥が羽を休める沼が近辺にあるらしい。つまり、この白鳥たちは、この地域にテリトリーを形成したということだ。
 近づいても逃げないので、少しアップの写真を撮ってみたら、くちばしの黄色い部分の大きさから、これはコハクチョウだとわかった。
 白鳥には、オオハクチョウとコハクチョウの2種類があり、見た目の大きさより、くちばしの黄色い部分で見分けがつく。どちらもシベリアからやって来るが、コハクチョウは北海道では越冬せずに、本州に飛来する。
 で、日本野鳥の会のホームページを見ると、房総半島の「トンボ沼」は飛来地として見つからなかった。インターネットで飛来地情報を探すと、千葉県内では本埜(もとの)村があった。これは、佐倉市の北、印旛沼のある村である。日本野鳥の会の飛来情報には、石川県加賀市があった。
 ……もしかすると、わが家から歩いて5分ほど、愛犬モモとの散歩コースにもなっているトンボ沼は、日本最南端の白鳥飛来地かもしれない。本埜村も、加賀市も、緯度ではここよりずっと北にあるのだから。

おいしくできた手作り味噌
 誰に言われたのか忘れたけれど、「房総半島スローフード日記」の愛読者から「味噌、できましたか?」ときかれて、去年、かみさんを手伝って味噌を仕込んだことを思い出した。それは、昨年4月号の「んだんだ劇場」に収録してある「日記」に書いた話である。
 「どうなった」と、かみさんにきくと、「できたよ」という。

おいしくできた手前味噌
 大豆1キロ、糀1キロ、塩500グラムのセットを2セット購入し、ゆでた大豆を私がつぶして、かみさんが糀と塩をまぜ、仕込んだ味噌である。これで、できあがりは7キロになったはずだ。
 開封するところを私は見ていなかったが、白鳥を見た週末、プラスチックの仕込み桶のふたを開けてもらうと、立派な味噌だった。ふたには、「2010・3・4」と仕込んだ日付が書いてある。1月半ばにふたを開けたら、表面に少しカビがあったが、全体はきれいに仕上がっていたという。
 大成功だ。
 塩分もほどよく、味噌汁がおいしかった。
 かみさんは「次の分も、材料は仕入れてあるよ」と言った。今度帰った時には、来年用の味噌の仕込みになるかもしれない。
(2011年2月5日)


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