愛犬モモ、11歳
なんてかっこうで寝てるんだ
6月6日で、愛犬モモが11歳になった。漱石の「猫」ではないけれど、「どこで生まれたのか、とんと見当もつかぬ」この犬が、我が家に迷い込んで来たときは、獣医に「4か月ですね」と言われたくらいのちっちゃいやつだった。誕生日も、逆算して、覚えやすいように6月6日と決めただけのことだ。親の顔もわからず、たぶんシェパードの系統は入っているだろうと思われる黒い鼻しか特徴はない。
そして11年。人間で言えばかなりの歳の婆さんになったのだろうが、今もしっかり番犬を務めていて、道路の方から誰かが来ると必ず吠えてくれるので、チャイムが鳴る前にそれと知れる。それはいいのだが、猫が道路を通っただけでも大声で吠えるから、夜は、最も近くて50メートル離れている近所の迷惑にならないように、家の中に入れている。
最近、かみさんが買って来る「老犬用」ドッグフードは気に入らないらしく、少し食べて居眠りを始めるのが常だが、仰向けの変なかっこうで寝る姿をしばしば見せるようになった。
なんてかっこうで寝てるんだ |
人間なら「あられもない姿」である。
つい先日も、一緒に一杯やっていたかみさんが、吹き出しそうになって指さすので、テーブルのわきを見たら、やはりこんなかっこうでモモが寝ていた。10分くらいしかこの姿は続かないのだけれど、これも老齢の現象のひとつなのだろうか。調べてみたことはないが……やはり、おかしくて笑いたくなる。
昼間は、たまに散歩に連れていくと、相変わらずグイグイ私を引っ張って行く。力はかなり強い。で、途中、青草を食べる。
青草を食べるモモ |
『ねこが虫歯にならないわけ』 |
犬が草を食べることは、モモを飼い始めて初めて知った。食べるのは、イネ科のある種の植物に限られている。犬は肉食動物だが、この草を食べることによって消化器官の調子を整えているのだろうと私は思っていたが、そう単純な話でもないらしい。『ねこが虫歯にならないわけ』(中野愛彦著、五月書房)という本に、肉食動物が植物を食べると、植物の繊維質が歯肉に触れて、「歯と歯ぐきの間を歯ブラシで磨くのと同じ」役目を果たすという話が書いてあった。詳しい説明は省くが、それは、肉食動物の歯が特殊な形をしているためだそうだ。モモは、イネ科のある種の葉が、それに適しているのを本能的に知っているのかもしれない。
この本の著者の中野さんは、「法歯学」という特殊な研究者だ。「法医学」と同様に、警察から「死体に噛まれた跡があるが、なんの動物だろう」というような鑑定依頼を受ける職務である。そのため、非常に多くの種類の動物の歯を調べた。
ちなみに、犬もネコも食肉目の動物だが、ネコの歯の方が肉食に適した進化を遂げているという。獲物に噛みつき、肉を切り裂く鋭い歯ばかりで、その歯の生え方は隙間だらけだから食べカスが全く残らず、虫歯になりにくい構造なのだそうだ。ネコに虫歯を作るという研究にとりつかれている人さえいるそうだが、成功した話は聞かないという。ただしネコも歯周病にはかかるそうで、時々、獣医さんで歯石を取ってもらうといい、というアドバイスがあった。
これに比べると、犬には食べ物をすりつぶす大臼歯が残っていて、雑食性もある証拠だと解説されていた。人間に比べたら犬は虫歯になりにくいが、皆無ではないので、かみさんが時々、モモの歯を磨いてやっている。
ところで、我が家は芝生の庭が広いので、長い鎖につながれたモモは時々猛ダッシュで走り回る。そして、疲れるとすぐに寝る。散歩に行かなくても運動不足にはならないようだ。それをいいことに、飼い主が楽をしているのだが(歩いてやせなければいけないのは、私だけど)……モモの体重は10キロ前後で変わらないし、たまに獣医に見てもらっても「健康です。若いですね」と言われるから、この調子で長生きしてほしいと願っている。
昼寝をするモモ |
ドライブは犬を連れて
6月下旬、資料写真を撮影するために新東名高速道路を走り回った。資料として必要な写真のひとつに「ドッグラン」があった。このごろ、愛犬と一緒にドライブする人はかなりいて、各地のサービスエリア(SA)の改良工事の際は、ドッグランを設けることが当たり前のようになってきた。新東名の「NEOPASA」(ネオパーサ)というブランド名をつけた施設には、すべてドッグラン(無料)がある。狭い車内に閉じ込められていた犬を思い切り走りまわらせようという広場だ。しかし今まで、いい写真がなかなか撮れなかった。そこに行って、犬が何匹もいるかどうかは運次第だからだ。
今回は、NEOPASA駿河湾沼津(上り線)で、たくさんの犬がいる光景にぶつかった。
たくさんの犬が駆け回っていたドッグラン=新東名/駿河湾沼津・上り |
愛犬と一緒にティータイム=新東名/駿河湾沼津・上り |
ここには、愛犬と一緒に入ることができるドッグカフェもある。犬用のおやつも売っていて、飼い主ともどもティータイムというわけだ。写真はテラス席だが、屋内に愛犬を同道してもOK。でも、ドッグカフェは、まだまだ数が少ない。
新しくできたドッグランには、犬の足洗い場や水飲み場もある。オス犬がおしっこをひっかけるためのポールも立っている。だが、犬が電柱などにおしっこをするのは、自分の匂いをつけて縄張りを主張するためだといわれているが、こんなステンレス製のポールでいいのだろうか。掃除しなくても、雨が降れば匂いは流れて消えてしまいそうだ。まあ、ほかの犬の匂いがないから、「ライバルはいないな」と安心して、自分のおしっこをひっかけるのかもしれないけれど……。
犬の足洗い、水飲み場=東名阪道/安濃SA/下り |
おしっこ用のポール=中央道/談合坂SA・下り |
ネコを連れてドライブという人はめったにいないが、それ以上に珍しいペットを伴って来る人もいる。例えば、この動物がなにか、すぐに答えられるだろうか。
ミーアキャット |
本来はアフリカ南部の乾燥地帯に生息する、ミーアキャットである。キャットという名だが、ネコではなく、マングースに近い動物だ。これを5匹も引き連れて、SAの広場を歩いている人に出会った。『ミーアキャット』という映画が2009年に公開されて以後、ペットとして飼う人が増えたと聞いている。しかし、見た目にはかわいいやつだが、自然界では地面に巣穴を掘り、ヘビなんかを食べている動物だ。エサはどうしているのだろう。飼いやすいペットとは思えない。
SAでは、もっと驚く光景に遭遇したことがある。
大きな豚を連れ歩く人 |
大きな豚である。近づいてきた時には、ちょっと腰が引けた。
アメリカでは、小さな豚とか馬をペットにするのが流行だそうだが、こいつは普通サイズの豚だ。豚は清潔好きな動物なので、きちんと世話をすればペットの素質は十分なのだけれど、これだけの巨体になると、乗用車などでは乗せるのも下ろすのも大変だろう。
我が家のモモは扱いやすい大きさだと、改めて思う。
ところで、写真を撮るのにしばらくドッグランの中にいたら、「このワンちゃん、どちらから?」、「ペットショップで購入しました」というような会話が耳に入った。たしかにトイプードルとか、フレンチブルドッグとか、犬種のはっきりした犬ばかりだ。だれもが自慢の犬なのだろう。どこで生まれたのかわからない我が家のモモなんか、相手にされない雰囲気がそこにはあった。
でも、いい。犬種なんか関係なく、モモは私にとっても、かみさんにとっても、かけがいのない家族の一員なのだから。
それに、こんな社交場のようなところにモモを連れて来る機会は永遠にないだろう。なぜなら、モモはひどく車に酔うからである。