んだんだ劇場2013年10月号 vol.177
No110
ゴボウの収穫

今年も立体栽培にしたゴボウ
 ある程度深く耕せば、大根はすくすく育つ。特に近年主流の青首大根の系統は、地下に潜るだけでなく地上部分も上に伸びるから、育てやすいし、収穫も楽だ。が、ゴボウはそうは行かない。堅い土の層にぶつかると、そこまでしか伸びない。
 それで去年、地上40センチほどの壁を立て、そこに土を入れてゴボウを栽培した(「んだんだ劇場」2012年11月号の「畑の雑草」に収録した「ゴボウは春まで食べられそう」参照)。まあまあ、それでもよかったのだが、もっと長いゴボウを作りたいと思い、今年の春、高さ1.2メートルの立体栽培枠を作った。ゴボウは同じ場所で翌年も作るとうまく育たない「連作障害」があるからでもある。
 ストーブにくべる薪の山が少なくなって来て、不要になった薪の山の屋根を壁にした。薪の下に置いてあった太い竹を支柱にして、壁を立てたのである。最初は雨が降るとわきから土が流れ出したので、プラスチックの波板を見つけて補強した。

牛蒡の立体栽培

収穫した牛蒡
 房総半島、千葉県いすみ市のわが家近辺は、7、8月にほとんど雨が降らなかった。畑のナスなどは水不足で生育がかんばしくなかったが、ゴボウは、葉がしおれることもなく育ってくれた。収穫した姿もりっぱなものだった。
 普通に育てると、地中深く伸びるゴボウを収穫するのは大変だ。が、この立体栽培だと、竹の支柱を取り除き、壁を少しずらし、横から土を崩して簡単に収穫できた。来年はゴボウのほかに、ヤマイモ用の幅の広い枠も作ろうと思っている。枠を作り、そこに土を入れるまではかなりの力仕事だけれど、日照りにも強いこの栽培方法なら、あとの手間がほとんどかからないから、畑の狭い家庭菜園には一石三鳥くらいのメリットがある。

花ニラを食べる
 8月末からニラの花が咲き始めた。つぼみの状態の花茎を折り取って食べるとうまい、と教えてくれたのは、同じいすみ市内の海岸近くに住むEさんだった。「ニラの花を食べられるのは、作っている人だけの余得」と言うのを聞いたのは何年前だっただろうか。ニラの花は、中国料理の素材でもある。しかし、なかなか食べる機会はなかった。つぼみの時期が10日間ほどで、その気になっていないと収穫時期を失してしまうという理由もある。
 が、今年は、かみさんが収穫した。

花が咲いたニラ

花ニラとひき肉の炒め物
 単純なおひたしにしたら、これが、まあ、うまかった。ニラの香はそれほど強くなく、甘味もあった。
 もうひとつ、たまたま生姜風味の肉みそをかみさんが作っていたので、それとニラの花を一緒に炒めてもらった。火の通し方が足りなかったせいか辛みが強かったが、シャキシャキ感もあって、ひき肉と一緒の味わいも合格点だった。今度は、ニラの花を入れたオムレツを作ろうと提案したが、そのうちにつぼみの時期が過ぎてしまった。花が開くと茎が堅くなってしまう。かなりの期間花は開いているが、つぼみの時期は短い。
 つぼみ状態のニラの花は、年に1度、わずかの期間だけの貴重な食材だと思い知った。
 
ヘチマとヒョウタン
 今年の春、家の南側と東側に、ハウスを作る鉄の支柱を立て、ネットを張った。朝顔などのツル植物を育てて、真夏の日差しを防ぐグリーンカーテンにしようと思ったからだ。どんな植物を育てるかは、かみさんに任せたが「ヘチマだけは作ってくれ」と頼んでおいた。それが7月には3本できて、9月に入るころには表面が茶色に枯れて来た。
 ヘチマの内部には繊維が網目状に、しかも立体的に発達する。これをスポンジ代わりに体を洗うと、気持ちがいい。私が子供のころに教わったスポンジの作り方は、まだ緑色のヘチマを水の中に入れ、中身を腐らせて、皮をはがして、きれいに洗うという方法だった。以前はこれでやっていたが、ものすごい悪臭が発生する。
 ある年、収穫を忘れてそのままにしていたら、ツルについたまま枯れた。そこで皮を少しずつはがしてみると、中にはきれいなスポンジができていた。わざわざ腐らせる必要はないとわかって以来、枯れるに任せることにした。今年のヘチマも、まだ切り取っていないが、中にはスポンジができている。

スポンジができたヘチマ

かわいい千成り瓢箪
 さて、かみさんがグリーンカーテンを目指してプランターで育てたのは、ヘチマのほかに朝顔、夕顔、フウセンカズラ、プリンスメロン、ササゲ、それに瓢箪である。よくもまあ、こんなにいろいろ植えたもんだと感心した。そのうち、プリンスメロンは途中で枯れてしまい、ササゲはちっとも収穫しないのでカメムシがびっしり食いついた。
 が、瓢箪はたくさんできた。大きくなる品種ではなく、いわゆる「千成り瓢箪」である。これが、かわいい。9月になってもツルが伸びているようで、これから花が咲くかどうかはわからないけれど、棚状にしたネットにぶら下がっている。
 ところで、瓢箪は最終的にどうしたらいいのだろう。酒を入れる容器にするには、中のタネを取り除き、全体を乾燥させなければならないのだが、私はやったことがない。
 「うーん、困った」
 そうだ、志賀直哉に『清兵衛と瓢箪』という小説があった。清兵衛という、瓢箪大好きの小学生が小遣いで瓢箪を買い、それを授業中に磨いていたのが見つかって先生に取り上げられ、ちょっと経緯があって骨董屋の手に渡り大変な高額で好事家に売られるというストーリーだったはずだ。その中に、瓢箪の磨き方も書いてあったと思う。
 瓢箪の皮をどうやって取り、どうやって磨くのか……久しぶりにこの小説を読み返してみたくなった。
(2013年9月17日)


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