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2025/12/18
今年も、もう少しで、大晦日です。長い酷暑の夏を耐えての年末を迎えています。米不足、そして米価格の高騰、熊による死者、ケガ人続出と、大変な年でした。来年も多難な年になりそうです。
「鳥取県民が地方の出版活動を顕影する」という主旨で設けられた「地方出版文化功労賞」が創設されて37年が経ちました。そして、残念ですが、今年で最後になります。今回「ブックインとっとり実行委員会」が、第37回地方出版文化功労賞に選んだのは、アフガニスタンで30年以上にわたっ人道支援活動に尽くした中村哲著「中村哲 思索と行動『ペシャワール会報』現地活動報告集成(上)1983〜2000」2700円(忘羊社刊・ISBN978-4-907902-34-6)です。受賞した本は、中村さんの活動を支えたNGO「ペシャワール会」(福岡市)の会誌に中村さんが書き続けた現地での活動報告の集成。審査員からは、「人道を考えさせる強い力と、埋もれてしまう資料を将来に向けて残す努力」へ強い共感が寄せられ、圧倒的な支持を得ました。
また「奨励賞」には、坂本桃子著「食べて祀(まつ)って 小さな村の祭りとお供え物」2000円(弦書房・ISBN978-4-86329-268-0)が選ばれました。熊本出身の坂本さんが、地元ケーブルテレビの仕事を通じ、それぞれの集落に受継がれている祭りを食べ物を中心に注目してまとめた本。審査員からは「将来的に失われてしまうかもしれない豊かな生活や文化を、楽しみながら知ることが出来る佳作」ということが評価されました。
同賞は1988年に創設されて、鳥取県内の書店主や読書愛好者らでつくる実行委員を中心に、県図書館協会なども協力し、出版文化の東京一極集中 にあらがい、審査対象として東京23区と鳥取県を除く地方出版社の本を選ぶことで運営されてきました。日本でいちばん人口の少ない県で制定されて、「地方の出版活動」を評価・支援してきたことに感謝します。
なお表彰式・受賞スピーチは2026年1月31日(土)13時から「とりぎん文化会館 第一会議室」にて行われます
●豊臣が滅んだ慶長年代最後の年まで、全国各地で築城ラッシュが起こりました。松江歴史館編集・発行「特別展 慶長の城 松江城築城とその時代」1,000円 発売/ハーベスト出版は、そんな時代、山陰出雲の国に入った堀尾氏がその支配体制を整え、松江に新しい城と城下町を作りました。松江城は、戦争の火種くすぶる時代を移す堅固な城です。堀尾氏支配と築城の歴史を紹介。ISBN978-4-86456-572-1
●視野の狭くなった地域第一主義に陥らないために秋田を考える。あんばい こう著「続々・秋田学入門」1,000円 無明舎出版は、郷土の文化、歴史、自然と向き合い、考えるための42編。鹿と猪のいる動物園、「秋田のことば」ヒットの裏側、臭くてまずい秋田米?むのたけじ・その光と影、等、あんばい流「秋田学」の完結編。ISBN978-4-89544-701-0
●どんなに難しい内容でも、「電子の気持ち」とその派生概念を使い系統立て高校化学とそ の背景を説明する、電子の気持ちを考える会著「電子の気持ちで考える高校化学」831円 暗黒通信団は、それが扱う世界の仕組み、そしてその視点によって見通せる化学の面白さ を伝授。化学には興味あるんだけど高校の内容はよくわからなかった、高校の化学で習っ たことの背景をもっと知りたいと思う人に是非と推薦。ISBN978-4-87310-284-9
●室町時代に足利幕府の御膳方として権勢を振るった一族の盛衰をたどります。君島茂著「史料で読み解く 室町幕府奉公衆 進士氏の系譜」2,700円 三学出版は、中世以降、全国で活躍した<進士氏>に関する史料と記録。ISBN978-4-908877-66-7
●高知を彩る、季節の行事のあれこれを、季節感たっぷりに語ります。岩井信子著「伝えたい土佐の民俗−よくぞ土佐に生まれけり」1,600円 高知新聞総合印刷は、記録に残したい高知の文化・風習。新年、春夏秋冬、冠婚葬祭、季節の折節など9年に渡って地元紙に連載したものを纏めたもの。あやめかたびら、むこだまし、等。ISBN978-4-910284-43-9
●熊本にあった二本木遊郭の歴史をたずねます。澤宮優著「かつてこの町に巨大遊郭があった」1,900円 忘洋社は、<性>を商った伝説の町で、遠ざかる記憶に耳を傾けます。明治33年(1900)年に起きた「東雲ストライキ」で一躍有名になった遊廓。ここで歌われた「東雲節」は全国に広がりました。明治から戦後にかけて、軍都・熊本の隆盛とともに栄 えた巨大妓楼の歩みを語ります。ISBN978-4-907902-40-7
●日本初のミャンマー料理の本。ミャンマー出身の料理研究家・ヤミンテ監修「おうちでヤ ミツキ!ミャンマー料理」2,000円 寿郎社は、手軽に作れる常備菜から現地人も唸らせる豪華料理30品まで多彩に紹介。ISBN978-4-909281-72-2
●近代日本の文学と思想に大きな影響を与えた二人の思想と生涯について考察。島征一郎著「夏目漱石と吉本隆明−自立思想の源流と行方。」1,100円 耕文社は、吉本が漱石から自立思想・「自己相対化」について大きな影響を受けたことに着目し、時代の同調圧力に あらがう精神をたどります。ISBN978-4-86377-097-3
●クーロン技術の恐怖を娯楽に昇華させた一大スペクタクルの全貌を余すとこなく解剖!久保嘉之著「映画『バイオハザード』徹底研究」1,000円 ごまめ書房は、第一章 「バイオハザード」の醍醐味、第二章 登場人物紹介、第三章 用語解説、第四章 全編あらすじ・コメント、第五章 夫唱婦随、第六章 コロナが蔓延した年、私は−。から成ります。ISBN978-4-902387-46-9
●琉球弧の貴重書、待望の復刻。久保けんお著「復刻 えらぶよろん民謡辞典」3,500円 南方新社は、民謡に歌われる語句や歌詞をアイウエオ順1128項目並べ、歌詞は琉歌(八八八六形)で記述して島ごとの微妙な違いが分かるように工夫されています。ISBN978-4-86124-543-5
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