2024/11/28

 歴史社会学者の小熊英二氏は、今の過疎問題の要点は、大合併した自治体の内容にあると言います。明治初期、8万あった町村を1741にしたわけで、一つの自治体に数十の集落が包括されています。現在日本には、公立小学校が2万あり、小学校区を一地域と考えるなら自治体数は2万が適正ではないかと。過疎自治体では、役所のある中心街や中心集落より、周辺集落の高齢化や人口減少が激しく、ここのところが問題。中心集落に移住者が来ても周辺集落の問題解決にはなりません。現在の広域化した自治体を単位に「地域」を語るのは実態に即していません。かっての過疎問題で関心を持たれていたのは「若年層の流出と産業振興」だった。ところが次は「長男はいても嫁が来ない」というジェンダー問題が10年前に指摘されました。女性が住みやすい、働き易い地域が必要ということです。そうでなければ子ども増えません。中心集落で若年女性が増えても、周辺集落の高齢化、過疎化の解決にはならない。一側面を切り取る枠組みではなくて、現場で生きている人々の具体的人権状況を大事にして注目すべきだと指摘しています。地方自治体の効率化、リストラの政策から脱皮すべき時代が訪れているのではないでしょうか。

●ノーベル賞作家の繊細な感性に触れるエッセイ集の初邦訳。ハン・ガン著 古川綾子訳 「そっと静かに」2,200円 クオンは、作家が「書きたいのに、書けなかった」と回想する時期に生まれた著作。音楽との出会い、さまざまな思い出にまつわる歌など。ネットよりダウンロード可能な、韓国語によるオリジナル音源付き。ISBN978-4-904855-70-6

●ノーベル賞作家の回復に導く詩の言葉。ハン・ガン著 きむ・ふな/斎藤真理子訳「引き出しに夕方をしまっておいた」2,200円 クオンは、<ハン・ガンの小説は美しく、同時に力がある。繊細さだけでなく強さがある。小説の元にあるものがこの詩にあらわれている>(斎藤真理子)。<ハン・ガンにとって詩は内密な自分自身の声に正直なもの。詩を書くことで、心身のバランスや問いを直視し続ける力を回復してゆく>(きむふな)。そう、翻訳者たちは評します。ISBN978-4-910214-28-3

●横内正弘からの富岡鉄斎作品など300点余の寄贈申入れを契機に設立され開館35周年を迎えた美術館の全体像を紹介します。新見美術館編著「新見美術館」900円 日本文教出版は、鉄斎の<武陵(ぶりょう)桃源図>、横山大観と竹内栖鳳(せいほう)の描く富士、女流画家では上村松園と伊藤小坡(しょうは)、原爆の図の丸木夫妻など日本を代表する画家の作品の数々をも紹介。ISBN978-4-8212-5335-7

●化学製品のロープや網が出来るまで、麻は人々の暮らしに無くてはならないものでした。柏村裕司・篠崎茂雄著「野州(ヤシュウ)の麻と民俗−人と麻に育まれた暮らしと文化」 1,800円 随想舎は、下野(シモツケ・栃木県)の特産品「野州麻」の歴史から生産方法、風習と信仰まで、麻づくりに労苦を重ねる農家の人々からの貴重な聞き取り調査から生まれた本。麻栽培の復活と将来性を生み出そうという試みも。ISBN978-4-88748-438-2,

●東京子ども図書館編・刊「東京子ども図書館50年の歩み」1,600円は、前史である1955年の4つの家庭文庫の始まりから、1974年の財団設立。それから50年の月日ををアルバム風に記録した思い出ブック。年表付き。ISBN978-7-88569-097-6

●いま84歳。美術教師からフリーになり、50歳を過ぎて思い立ちリュックにスケッチブック、そして格安チケットを入手。下町ホテルに泊り、風景を眺めながら建物、歴史、風土と出会う。田代桂子著「ラテン・バルカン スケッチひとり旅」2,000円 石風社は、旅日記のエッセイに付けられた墨絵の風景スケッチが風情を醸し出している。ISBN978-4-88344-328-4

●毛色がまっくろで盲導犬として訓練されたロロ。視覚障害のシュウ君と出会い日々を過ごした日常と、引退し余生を送るようになる別れも描く。原陽子文/山本久美子絵「ぼくはまっくろ」1,200円 リーブルは、盲導犬と視覚障害者の絵本。ISBN978-4-910310-09-1

●ミステリアスな沖縄の古三線の世界に分け入ります。福田八直幸著「増補版 古三線に魅せられて−沖縄の三線に込められた想いをたどる」2,000円 ボーダーインクは、『弾き手』として『作り手』として構造や作り、楽器に込められた想いや歴史も語ります。『あるグーマー(小さい)三線』などISBN978-4-89982-468-8

●編著者のニュースサイト ハンターは、福岡市を拠点に政治、行政に特化した記事を配信するニュースサイト。公益通報を単なる情報漏洩にすり替えようとした鹿児島県警にいわれなき家宅捜索を受ける事態となり、全国的に注目を集めています。ニュースサイト ハンター編「追跡・鹿児島県警闇を暴け!」1,800円 南方新社は、県警本部長の隠蔽疑惑、内部告発者の逮捕、報道機関への強制捜査等鹿児島県警の底なしの闇を暴きます。ISBN978-4-86124-527-5


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