1.  5000日目のその日
 2017年1月26日。前日までは暴風雪のため、連日登山口で20cmも新雪が降った。登山口は標高100mで無雪季に行けば駐車場もあり、小さな東屋もある。冬には登山口までは車は入れない。太平地区の八田から木曽石を経て、仁別に通ずる県道から「金山の滝」に分かれていく地点に、駐車スペースがある。今日が実は私にとって記念すべき太平山5000日目の山行である。

 さてここからは、前日の25日の話になる。この日も30cmほどの新雪が降った。まず、登山口までの300mの雪を漕いでゆく。登山口から長さ7m、幅50cmほどの木の橋を渡っていく。上に積もった丈余の雪を、東屋に冬の間に備え付けているスコップで、下の沢に投げ下ろす。橋を渡ったところでワカンをつけたいところだが、この先しばらく岩場や沢もあるので、ツボ足で登っていく。次に渉る金山の沢では、4年前の4月に10人ほどの人の協力で付け替えた丸木橋を渡っていく。
 ここからワカンをつける。25日には3人の入山者がいた。4番地蔵のある380mの地点までは2kmあるから、一人で深雪のラッセルはきつい。登山口から前岳女人堂までは、距離は4km、標高差は614mある。無雪季だと70分から80分で登れる。冬季は雪の状態にもよるが、トレースがある場合で90分、最初からラッセルだと3時間でいけないこともある。下山のためにテープを迷いやすいところにつけていく。雪崩の危険があって夏道の跡を登れない箇所がたくさんある。つけていくトレースの地形を慎重に択ぶ。25日は、標高550mほどの私がシナノキ林と呼んでいる地点にやっと登りついたのは、出発から130分を超えていた。この雪ではあと2時間はかかる。明日を期して下ることにした。無理をすると毎日は登れなくなる。

 この山に登り初めて5000日目の今日、前日のトレースを利用してツボ足でシナノキ林まで登れた。 先行者が一人いた。この3月にネパールヒマラヤのゴーキョ(5483m) に遠征予定の井島辰也さん(県庁OB)である。トレーニングによく登ってくる。二人で前岳を目指す。2時間20分ほどで女人堂に着いた。積雪はやっと1m に達していた。井島さんから太平山5000日の記念に写真を撮ってもらう。いい記念になった。
 写真を見ると私の服装は登山のために特別用意したものではない。百均帽、ワークマンのベスト、高島屋通販の冬ズボン、アウターは上下ともほとんど着ていない。いや、もしかすると長年はいているべクトランスパイク長靴だけが、私の自慢できるものかもしれない。5000日目は自分でも拍子抜けするほどいつもと同じように過ぎた。
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