17.  汗と衣類
 山登りを続けていて、いつも悩むのは汗の処理だ。夏山でも冬山でもこれは変わらない。太平山のようなヤブ山の夏は、汗を噴出しながら登ることになる。その人の登り方にもよるが、どんなスローペースで登っても夏は汗が出る。私も頭部の汗取りのためバンダナを巻くのだが、頂上に至るまで何度もバンダナの汗を絞ってしまう。下山すると全身汗グッショリになってしまう。汗の跡がすぐわかるようなズボンをはいていると、何度も漏らしたように見えてしまう。汗まみれの衣服を着替える小屋でもあればいいのだが、そのまま車に乗って帰る人が大部分だ。
 太陽の熱で焼けつくように温度のあがった車に入り座るときの不快感は毎日のことながら、溜息も出ないほどだ。
 それでも金山の滝ルートは下山してくると沢があるからまだましだ。ここで冷たい沢水で顔を洗う爽快さは格別である。一昔前は汗の処理など二の次だった。アプローチに車など考えられない時代だったから、汗のため悪臭を放つザックを背負い、平気でバスや汽車に乗り込むのが当たり前だった。
 夏山で登り2時間くらいの山行なら、頂上まで汗をよく吸ってくれる綿のシャツを着て、着いたら別のシャツに着替えてから下山する人もいる。日帰りの山行であればこれもひとつの方法である。
 汗に関して、人間の体を頭部とその下、という2部門に分けて考えてみる。
 頭部の汗は帽子や首のタオル、バンダナでなどで処理すればいい。首から下の汗は背中の下にたまる。汗を吸収するのはシャツなどの肌着。しかしシャツは汗の吸収に限度がある。吸収されなかった汗はどんどん下に落ちていく。そしてパンツやスラックスに吸収され、靴の中にまで吸い込まれていく。激しい行動をしているとき、速乾には限度があるから、吸収されない汗は肌にまとわりつく。水分を吸収しない網シャツのようなメッシュのものを下に着て、その上にシャツというスタイルは、夏の汗の対策にあまり役立たない。それは冬のスタイルである。汗の処理は冬山でも重要である。ヒマラヤなどの高山では、登山中汗をかくことは厳禁だという。汗はすぐ凍りつくからである。
 太平山などの低山では、どんなに気温が下がっても猛吹雪で体感温度が急降下することを除けばマイナス20度を下まわることはほとんどない。
 夏の汗対策は山行のタイプによって使い分けるしかない。1日10時間も夏山を登下降するのであれば肌着は吸湿速乾のものがいい。夏山でも風や寒さで死ぬ危険は多い。そうした対策としてもHeavy Dutyの衣類は大切だ。以前、ヤマケイ文庫から『ヘビーデューテーの本』が刊行された。Heavy Dutyとはつまり、丈夫で、本物で、かつセルフエイドを可能にすること、と著者は書いている。毎日登山に使うGearに必要なことはまず丈夫で格好もよく使い勝手よく、長持ちするものである。

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