33.  冬の環状ルート
 太平山の金山の滝ルートであれば、冬山も条件のいいときは夏山とあまり変わらない。先人のトレースがあり、それを利用して多くの人が登り下りするのでトレースが凍路になる。頂上までのルートを最初に開くときは細心の注意が必要だ。雪崩が起こらないか、雪庇が崩れないか、吹き溜まりがないか、雪の表面はどう変化するか、などその後の気象条件を勘案して慎重にルートを決めることになる。
 冬山に定まったルートはない。冬山は寒い。その寒さの中で行動できる体力、意欲が求められる。太平山の場合、奥岳をはじめとする稜線に達する冬山のルートは原則として夏山ルートがわかりやすい。夏山と違うところは登山口までのアプローチが長いこと。長い林道の深い雪をラッセルしていくにはワカンやスキーが便利だが、奥岳や馬場目岳に日帰りで登るのは無理がある。
 雪がやや落ち着いて稜線を登山靴だけで歩けるようになると、金山の滝登山口から入山して、岳まで日帰りで往復できる。ただし金山の滝を午前1時ころ出発しての話だ。
 旭又まで歩いて入り馬場目岳に登って赤倉岳を経由して奥岳に至り、そのまま稜線を縦走して中岳、前岳といわゆる環状ルートを毎年歩いている人もいる。途中、馬場目岳頂上と奥岳頂上にビバーク、2泊3日で踏破できるという。
 この環状ルートを最初に踏破したのは1961年3月、5人の秋田山岳会のパーティだった。3泊4日の山行だった。
 私は今でも毎冬100日くらいは入山する。冬山は一日として同じ条件の日はない。毎日のように変化している。一日の山行で何か一つでも新たな経験や知識が得られれば十分だ。
 一昔前はスキーといえば山スキーだった。山に降り積もった雪を利用して、千変万化の斜面に自分のシュプールを残しながら滑り降りてくる爽快さはなにものにも替え難い楽しみだった。山の自然を傷つけないことも楽しさを倍化させてくれる。
 それに比べればゲレンデスキーは山を破壊する最たるスポーツだ。山の樹林を広い面積で剥ぎ取り、重機で斜面をならし、その跡にゴンドラやリフトを作る、雪が降ったら今度は圧雪車で地面をつぶしていく。すべりおりる人は重力に身を任せるだけで汗もかかない。 
 冬の登山活動においてスキーを活用できる分野は目的とする山によって違う。山麓でのアプローチや、氷河登行などにスキーを使うことも多い。日本では冬季、多くの降雪に恵まれた山々ではスキーを使って頂上まで登り、一気に山麓まで新雪を滑り降りる山岳スキーが一般的である。スキーの下にシールをつけて頂上まで登れる山も多い。
 秋田県の山々では冬季スキーで頂上まで登れない山はない。

backnumber