34.  太平山の山スキー
 雪の斜面と山スキーを担いでの登りにはそれなりの時間がかかる。しかし下りは、圧倒的に速く降りてこれる。
 3月から5月にかけての残雪期は、鳥海山の矢島口でいえば、標高差1000m、距離4.4km、登りに3時間かかっても、下りは15分ほどだ。
 秋田県の山々は険しい岸壁などは少ないが、山スキーには最適な緩やかな斜面を持った山が多い。冬山の楽しみには事欠かない。山麓には多彩な温泉が待っている。
 雪の少ない地方から秋田に転勤してくる人たちには、「秋田に来たら山スキーの楽しみを覚えてください」と勧めている。
 太平山の山スキーは樹林帯の滑降がメインとなる。鳥海山や秋田駒ケ岳のような高山でしかも火山では森林限界の上部は一面の大斜面に一変する。尾根は緩やかなので、樹林帯の中でもスキー操作に苦労することはあまりない。
 太平山は尾根が急峻である。しかもほとんど樹林帯なので、スキー操作には気を使う。標高も低いので雪の量が少ないうえに残雪期も短い。だから山スキーのシーズンは2月、3月に限られてくる。
 山麓までのアプローチも難しい。奥岳や馬場目岳で山スキーを楽しむには旭又まで入らねばならない。丸舞や野田コースでは沢歩きが長い。旭又まで入れれば、ここをベースに山スキーのコースは3本ある。馬場目岳までは夏道の尾根を登る。稜線部分は新雪が深ければウエーデルンが楽しめる。コースの下部は急な杉林になっているが、ここも雪があれば下までスキーで下りられる。
 赤倉岳(1093.1m)へのコースが太平山中でもベストコースかもしれない。中腹のブナ林帯(標高差400m)の滑降は斜面も素直だし、ブナの樹間を縫って山スキーの醍醐味を満喫できる。
 旭又から奥岳までのスキーコースも夏道の尾根を使えばよい。山頂から標高650mくらいまではブナ林の中の滑降となる。その下部は尾根も狭くスキーを担いで下ったほうがよい。
 オーパススキー場のリフト終点(334m)から前岳(774m)を経て中岳(951.7)まで、また金山の滝から前岳を経て中岳までは、雪が深ければ山スキーを十分楽しめる。特に中岳から前岳までのブナ林がよい。前岳からはオーパススキー場までの斜面もいいし、金山の滝コースはけっこう山スキーが楽しめる斜面が多いのである。

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