138. 2021年7月15日香り
 先日収穫した梅は、半分はコンポートにして、もう半分は梅干にしようとザルに入れて事務所に置いておいた。コンポートは初めてにしては上々で満足のいく出来だった。しかし、コンポートがうまくできたため、梅干にしようとザルに入れておいていたもう半分の梅のことをすっかり忘れてしまった。気が付いたのは、週末をはさんで出社した月曜日。事務所に入ると柑橘系の甘酸っぱい香りが漂っていた。新しい芳香剤でも置いたのかなと思い昼過ぎまであまり気に留めなかった。やけに良い香りが充満していて、これはだいぶ質の良い芳香剤だなぁなどと呑気なことを考えていたそのとき、あっ、と思い出した。この香りの正体は芳香剤でもなんでもなく、ザルに入れて蓋をかぶせていた梅の匂いだった。慌てて、蓋を取って見たときには、時すでに遅し。無残にもグチュグチュになって黒ずんだ梅が姿を現した。やってしまった。ここまで傷んでしまうとジャムにするわけにもいかない。泣く泣く捨てることにしたのだが、そんな状態の梅でも香りだけはよく、どうせなら、もう一日くらいフレグランスとして香りを楽しむかということで、今も事務所の片隅に置いてある。
(M)