160. 2021年12月23日 なくなった畑
 近所にある畑が更地になった。この畑は、私が小さい頃からあって、腰の曲がったおばあちゃんが一人でやっていた。大きな畑ではないが、春夏秋冬、季節のものを育てていた。私も数年前から畑をやるようになった。すると人の畑が気になり出し、よくこの畑をみて、畝の作り方や、支柱の立て方、種をまくタイミングや収穫のしかたなどをみて参考にしていた。そのうち、そこのおばあちゃんとも話をするようになり、野菜づくりに関する様々なことを教えてもらった。長年の経験から教えてくれるおばあちゃん独自のノウハウは、本やネットには書いていないものが多く、驚くことが多かった。私は、自分の職業のことは一言も話していないのに、なぜかおばあちゃんは私のことを近くにある大学の先生だと思い込んでいて、私のことを「先生」と呼ぶ。なんとなく訂正するタイミングを失い、今も私は「先生」だ。
 先日、その畑の前を通ると、ショベルカーが土を掘り起こしていた。次の日には砂利がひかれ更地になった。その後おばあちゃんとは会っていないので詳しいことはわからないが、おそらく体力的な問題で畑をやめることにしたのだろう。さみしい気持ちもあるが、仕方ない。長年、住宅地にぽつんとあった立派な畑。次おばあちゃんあったら「ごくろもさまでした」と声を掛けよう。
(M)