自宅の外壁に設置されている配電盤にカラスがとまっていた。私が近づいたのにも気がつかないほど夢中になって配電盤と壁の間にあいている僅かな隙間にクチバシを突っ込んでいる。しばらくその様子をながめていたが、私の存在に気がついたカラスは慌てて飛び立っていった。何をそんなに夢中になっていたのか気になって、配電盤と壁の隙間を覗いてみると、大量のクルミが隠されていた。
カラスはクチバシでクルミをくわえ電線にとまり、コンクリートにそのクルミを落とす。落としたクルミをまた拾って電線にもどりまた落とす。これを数回繰り返して、あの硬いクルミの殻を割る。中には、道路の中央にクルミを置き、通る車に轢かせて殻を割る賢いカラスもいる。そうして取り出したクルミの実をこのカラスは配電盤の裏に隠していた。もうまもなく長い冬がやってくる。当然カラスの餌も少なくなる。つまり、これは来るべき冬に向けた備蓄なのだ。その量の多さにも驚いた。おそらく2〜3ヶ月コツコツ貯めたのだろう。その働きには頭がさがる。朝晩はグッと冷え込むようになってきた。おっつけ冬が始まる。
(M)