44. 2017年6月2日  背広
 昭和30年代、秋田市には市電(路面電車)が走っていました。市電があったのは東北では仙台市と秋田市だけだそうです。その市電の切符や、看板、設計図などを写真撮影するため、カメラマンの加藤明見さんと秋田県立博物館に行ってきました。当時の貴重な品の数々に興奮しながらも、撮影は順調に終わり、帰り支度をしていると、博物館のHさんが、こんな写真もありましたと、一枚の写真を持ってきました。それは昭和30年代の秋田市広小路の木内デパート前を撮影したもので、大勢の買い物客で賑わう休日の様子が写っていました。特に珍しい写真でもないのですが、なにか違和感があり、よく見てみると、男性がみなス背広姿なのです。背広で赤ちゃんを抱っこしていたり、子供と手をつないでいました。昭和30年代は、デパートに買い物に行くというのは一大行事で、男性は背広で行くのが常識だったそうです。今では決して見ることのできないその光景に、時代の哀愁を感じた一枚でした。
(M)