78. 2018年6月29日   「さまようクマ」
 2017年11月から53回にわたって、秋田の地元紙で連載された「さまようクマ」が最終回を迎えた。
2016年に秋田県鹿角市でタケノコ採りに山に入った4人がクマと鉢合わせ犠牲になった事件を皮切りに、犠牲者の遺族へのインタビュー、県や市町村の対策、クマや森の生態系の変化など、多角的に人とクマの関わりを論じた連載で、毎回欠かさずに読んでいた。丁寧な取材と、緻密なデータ収集で、説得力のある連載だった。これは、今、クマの問題と向き合っている私たちにはもちろんのこと、後世にも貴重な資料として残っていくのではないだろうか。
 今年も県内各地、特に人里に近い場所でのクマの目撃情報が相次いでいる。すでに犠牲者も出ている。単純に、里に出てきたものを駆除すればいいというレベルをはるかに超えている。  
 最終回で登場した鳥海マタギの「かつて、人間と動物の間には明確な境界があった。あいまいになった境界をどうつくり直すのか、人間がクマに試されているのかもしれない」という言葉が印象的だった。クマを通して、その背後に広がる「自然」と人間の関係を考え直すきっかけをくれた連載だった。
(M)