80. 2018年8月4日   浮く
 夏休みで甥っ子が遊びに来ている。彼は高校生だが、泳げない。そこで、私が泳ぎを教えることになった。彼は水に浮くことができない。これは教える方としても結構難しい。
 以前、背泳ぎオリンピックメダリストの寺川綾が、選手から指導者に転身したとき、この「水に浮く」ということを教えることに大変な苦労があったと語っていた。私もそうだが、物心ついたときには自然と水に浮いていた。コツややり方を教わったのではなく、例えば、「呼吸をする」のと同じように、「水に浮く」ことは当たり前のことだった。いわば、感覚なのだ。この感覚を論理的に言葉で説明するのは、泳法を教えるよりはるかに難しい。
 幸い、甥っ子はライフジャケットを着ながらではあるが、シュノーケリングをしたことがあり、水に浮く感覚はなんとなく身についていた。だから、あまり苦労することなく浮くことができた。そこからは彼自身が楽しくなったようで、ものの一時間もしないうちに、不格好ではあるが、25M泳ぎきってしまった。彼の夏休みで一番の収穫になったに違いない。
(M)