No8
雹に雷とスパイク長くつ、是山の山
[東光山―592m(由利本荘市) 2012年11月18日(日)]
 夜半の間、ずっと雨音がやまなかった。起きてからも降り続けている。今日はいくらなんでも山行は無理だ。それでも集合場所のスーパーの駐車場へは出かけていく。行けば、山はダメでもその地域の温泉や道の駅などで仲間と愉しみはいくらでもある。それもあるから雨でも集合場所には出かけるのだ。
 案の定、全員が集合していた。誰も中止など言い出さない。そのまま由利本荘市へと、すさまじい雨の中を車は進行。
 不思議に思われるだろうが、山は行ってみないとわからない。と同時に今日のようにハイキング程度の低山ならば、少しばかりのハンディキャップ(雨や嵐)があったほうがアウトドア・アドベンチャーとしてはおもしろい。青空の山も気持ちいいが、あまりにもあっけない。おもしろみが薄いのだ。時には適当な障害のあったほうが、うれしい山もあるのだ。

雷が鳴り出したので急いで下山

雹で登山道は真っ白に
 予想通り、というか子吉川の支流に当たる赤田川沿いの登山口に着くと、なんと青空が顔を出しはじめた。これだから行ってみないと、わからない。
 東光山は登山道がきれいに整備されている山だ。落ち葉の道は雨でズブズブ、今日は登山靴ではなくスパイク長くつのほうがいい。他の人たちもやはり登山靴ではなく長くつ持参だ。スパイク長くつは雪国の山歩き必需品。スノーシューと同じくらい使い勝手のいい冬用の登山靴だ。難点は、登山ショップで売っているが、2万円弱とけっこう高いことだ。
 *
 東光山は、山ろくの赤田集落にある長谷寺の開祖である是山和尚が200年前に開いた山である。地元の人たちが大切にしている山なので、いつも登山道はきれいに整備されていて気持ちいい。合目毎に石柱があり、これはまるでミニ鳥海山のよう。ハイキングコースとしては申し分のない山だ。
 登りは1時間20分。山頂の小屋に着いたあたりから雷が鳴り出した。大慌てで下山。雷は怖い。途中すさまじい雹も降りだし、容赦なく顔にバチバチとあたる。痛い。顔を伏せたまま、走りながら下山し、わずか40分ほどで登山口に戻った。
 昼食は赤田集落にある建物の中でとる。寒くない安定した大地でゆっくりとる食事は、もうそれだけでうれしくなる。車に降り積もった雪(雹)をみた近隣の人からあいついで「どこから来たの?」と声をかけられる。里には全く雪は降らなかったようだ。
 温泉は「大内ぽぽろっこ」。広くて明るくて清潔な温泉だ。館内に飾られたアヴァンギャルな多くの絵が、なんとなく館内の雰囲気とはミスマッチだが、絵そのものは素晴らしい。郷土作家の大作や世界的に有名な画家のリトグラフが無造作に飾られているのだ。フロントには熊谷守一のリトグラフがある。「オーナーはよっぽど絵が好きなんだね?」とフロントの女性に訊くと、怪訝そうに「オープンの時にある方から寄贈された絵なんです」とのこと。
 熊谷守一が有名な画家であることは知らなかったそうだ。

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●No.1 草紅葉の海で、なぜかパエリア
●No.2 贅沢お昼と、お気に入り温泉
●No.3 白神のブナの森を彷徨う
●No.4 南八幡平の自然休養林を歩く
●No.5 巨木の森で、雨に追われて
●No.6 何が悲しくて、遠い県境の雨の山へ(+クマの話)
●No.7 「キジ撃ち」慣れ、増える体重、初めての山

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