vol.19 12月30日号
ふぐを食う
 2年ぶりにふぐを堪能した。共同通信秋田支局の井上君は下関の出身。いつかうちの宴会で飲んでいると「本場のふぐを食べさせたい」と言い出した。さっそく近所の寿司屋でセッテングしたのだが、そのときは「ふぐ」そのものがいまいちだった。今回は前回の汚名を挽回したいと、またしても井上君が小生と鐙を招待してくれたもの。場所は保戸野の小料理屋。養殖と天然の食べ比べという趣向もあって、フルコースを満喫。久しぶりにたっぷりお酒も飲んで翌朝二日酔い。そのお店の女将さんが昔の無明舎の塾の教え子だったりして、一気に酔いが回ってしまったのだ。20代の若い人たちとワイワイ飲んでいると時間も酒量も忘れ、楽しい一夜だった。
(あ)

忘年会もつつがなく
 今年も忘年会をつつがなく終えることが出来た。山形の伊藤さん、弘前の青木さんといった常連客に加えてカメラマンの小阪、佐藤両氏、デザイナーの能山、野口さん、パートの河本さん、印刷所の鈴木さんの計13人。場所は「和食みなみ」なので緊張感のない穏やかな宴会である。女性陣は富山と河本の2人だけで、この2人は外資系の会社にいた経験もあってお酌したりする習慣がない。元々無明舎はお酌したりされたりといった宴席とは無縁なところなのだが、今日ばかりはお客さんが主役の忘年会なので2人とも忙しく席を回っている。今年も終わったなあ、という感慨がじんわりとわいてくる。
(あ)

深夜の散歩
 仕事が終わって夕食がすんだ後、近所を遠回りに3キロぐらい散歩をする。なかなかスポーツクラブに行けないので、この深夜の散歩が肩こりやデブ防止のいいトレーニングである。しかし夜の田んぼはびゅんびゅん風が吹きまくり、道路はつるつるで、気温は零下の世界である。勢いものすごい重装備での散歩となるのだが、10分も歩いていると汗ばんでくる。ダッフルコートに手袋、マフラーをきっちり首に巻いてポケットには小銭入れとICテープコーダー。思いついたことを片っ端からこれに吹き込む。散歩の後半に寄り道して書店をのぞくので小銭入れも必需品である。約1時間の散歩で体は温まるが、かなり疲労感が残る。でもこれが気持ちがいい。この散歩はもう4年以上つづいている。日常生活の一部になっているほど大切な習慣だが、やっぱり冬の深夜の散歩は、ちょっぴり辛い。
(あ)

小国町の郷土料理
 本の出版とは違う仕事ですが、横川ダム建設のため移転した山形県小国町市野々地区の歴史、民俗をCD-ROMに記録保存するための調査を依頼され、ライターの伊藤さんと長南さんを連れ、雪の小国町に秋田から6時間かけて第一回目の調査に行ってきました。
 公民館に60〜80歳までの元気なおじいさん、おばあさん8人に集まっていただき2日間の聞き取り調査を行いました。今回はむかしの遊び、小学校の分校、郷土料理などの聞き取りが中心でしたが、おばあさんたちは料理がないと話が見えないだろうと、20種類ぐらいの昔から食べていた料理を作ってきてくれ、お昼はその料理を食べながらのむかし話に大いに盛り上がりました。このようにおいしくて楽しい仕事であれば、どんな山奥にでも行ってもいいな、というのが3人の感想でした。

(鐙)

【ずらりと並んだ郷土料理を取材する長南さん】

週刊あんばい一本勝負 No.17
吉村昭(新潮文庫)
仮釈放

 旅先で読む本がなくなり、近くの書店で買い求めたものである。一晩のぶりょうを慰めるために手に取ったのだが、力量のある作家というのはこんな場合に当たり外れがない。 本書も最初から正攻法でぐいぐいと読者を作品世界のなかに吸い込んでいく。何か特別な仕掛けがあるわけでもないし、奇をてらう内容が書かれているわけでもない。文章は簡潔で端正で折り目正しい。淡々と物語を進めながら読者の反応を物陰から冷静に眺めている著者の視線を最後まで読者に感じさせない。それがこの作家の力量に違いない。得てしてノンフィクション風の作品には、これだけ調べたぞ、という矜持が文章のなかに顔を出すものだが、それが全くない。本書の5分の4は仮釈放された主人公の日常生活を淡々と描いている。殺人事件を起こし16年間の服役後に社会に出た元高校教師の目に社会はどう映ったか、それだけで終わっても立派なノンフィクション作品になるのだが最後の5分のTで一気に物語は動く。たまには、やっぱりこうした、人間とは何か、というテーマに真正面から挑むような作品にふれると気持ちがしゃんとしますね。

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