Vol.762 15年7月4日 週刊あんばい一本勝負 No.754


パソコン不調で外出多忙

6月26日 朝から男鹿、能代出張。まだ頭はボーっとしている。心と体がバラバラだ。こんな時にミスが起きる。昨日はあの暑さの中、散歩がてらに県展を見てきた。いつまでも隠しておくのも不自然なので公表するが、県展写真部門に「こっそり」作品を応募、運よく入選した。その自分の作品を見に行ってきたのだ。山仲間のモモヒキーズNさんは彫刻で最高賞、Sシェフは陶芸で連続入選。彼らの作品も見てきたが、片手間で撮ったわがスナップ写真とはレベルが違う。私の場合はまあ今年限定のお遊び、もう応募したりすることもないだろう。65歳記念のワンショットである。2万円もしない山用オンボロ・デジカメで撮った作品だが興味ある方は県展までどうぞ。

6月27日 東京の消費者センターから電話。おたくは消費者に商品を勝手に送りつけ請求する詐欺商法の会社ではないか、というのだ。クレームが消費者から入ったのだそうだ。その消費者の名前がわかったので、顧客データを調べると間違いなくわが舎の愛読者であることが判明。その人が「見知らぬ会社から勝手に本が送られてきた」とセンターにクレームをいれたのだ。この人は過去に注文履歴があり、わが舎の常連客。「ご不信であれば着払いで返品してください」とその場は受け流したが、間違いなく高齢化による物忘れ、被害妄想である。ある日突然、知らない会社から本を押し付けられた、とこの人は思い込んでしまったのだ。それにしてもクレームをまにうけ、何の疑いもなく電話してくるセンタ−担当者にもちょっぴり腹が立つ。本の送り主が講談社や集英社でも同じ対応を取っただろうか。

6月28日 今日は焼石岳だったが、雨天のため中止。といっても3時起きが5時起きに変わっただけ。登る場所を変えて山内村にある南郷岳に登ってきた。ここだと雨が降ってもさして影響がない。お昼前に下山して「鶴ケ池荘」で温泉、道の駅で弁当ランチ。帰りは、まだ見ぬ横手城に寄り、じっくりとお城の中で歴史のお勉強。そこから金沢の後三年合戦古戦場跡を訪ね、記念館でお勉強の続き。モモヒキーズには安倍貞任の追っかけを自認するお姉さんもいて、歴史にも強いんです。というわけで体も頭もフルに使った雨の日曜日でした。

6月29日 寒いなあ。午後からは半そでではとても持たず山用のラガーシャツに着替え仕事中。それでもサワサワ感はぬぐえない。洗濯物も乾かない。天気予報もはずれるし、本の注文も冷え込んだまま。明日はもう月末。明日は久しぶりに新刊ができてくる。来月はまちがいなく忙しくなる。忙しさの代わりに何回か日曜登山にも行けなくなりそうだがやむを得ない。新入社員に早く一人前になってほしいが、この仕事ばかりは1,2年の経験ではどうにもならない。失敗と見込みちがいをいやになるほど経験し、ようやく一人前になる。もう5年はシャチョー業を続けなければならないのかも。突然の寒波に気持ちも「冷え込む」一方だ。

6月30日 気ばかり急いて、うまく仕事が回らない。毎日初めての人と会ったり、慣れない図書館に通ったり、識者からレクチャーを受ける日々。少し胃も痛くなってきた。やり慣れぬことばがりだが、ここを通過しないと本はできない。企画を思いついたり、仕事がスタートするというのは事前の緊張やストレスと戦うこと。できれば毎日何も起きず、静かで穏やかに時間が過ぎてくれるほうがいいのだが、でもそうはいかない。満足や充足、達成感とういのは事前のプレッシャーが結果としてもたらしてくれるもの。なんだか山登りに似ている。山登りは初心者魂を忘れず、県外の高い山には目もくれず冒険を嫌っている。だからいつも同じ山ばかりだが、登る前のプレッシャーはずいぶん軽減した。

7月1日 半日間びっしり図書館の所蔵庫。普段見ることのできない秘蔵史料をたくさん見せてもらった。絵地図などを中心に出版させてほしいものも何点か見つかった。今日は朝早くから能代だった。本の打ち合わせなのだが、ついでにこれから取材でお世話になるカメラマンや図書館や市の関連部署にもごあいさつ。この1週間で新しい名刺が20枚近く増えた。明日からも毎日、打ち合わせや飲み会や取材で外出が続く。こうした突然の身辺の変化に戸惑っているのは私自身だ。毎朝PCを開いてゆったりと書き始めるこの日記も、最近は夕方に書く羽目になっている。早くいつもの日常に戻りたい。もしかするとずっとこんな不連続の日々が続くのだろうか。

7月2日 県展で最高の賞をとったNさんは山仲間だ。そのNさんが表彰式で大きなトロフィーをいただいた。そのトロフィーを家に持ちかえると家人は開口一番、「洗剤のほうがよかった」と言い放ったそうだ。かくいう小生も小声で「県展に入賞した」とカミさんに報告すると「あらっ、わざわざ観に行けっていうこと?」と面倒くさがられた。こちらもカミさんの朗読会なんて行ったことがないから、それ以上は言えない。なんとも冷め切った夫婦だが、夫婦仲良く手をつないで外出する姿をうらやましいと感じたことは、ない。下重暁子『家族という病』を読むと、そのへんの「絵にかいたような夫婦や家族団らん」を辛口で一刀両断。シンパシーを覚えるというか爽快な本音満載のおもしろい本だった。下重さんは、われらの味方だ。

7月3日 ずっとパソコンの調子が悪い。意図したわけでないが、ほとんど事務所ではなく外に出ているので、さして不便は感じない。が、今日のように朝一つ打ち合わせがあるだけで、あとはデスクワークという日はパソコン不調がもろに響いてくる。アマゾンから本は買えないし、写真関係データは復元できない。前に書いた原稿データが消えている。昔のように電話をかけまくってアナログで代替対応するしかない。それにしても連日打ち合わせや取材が続く。昨夜はモモヒキーズの飲み会。いつもの駅前居酒屋で大騒ぎ、このところのたまりにたまったストレスを軽減できたのは大収穫。散歩の時間も取れないほどだが飲み会には歩いて往復した。ちょうど散歩と同じ1万歩は歩いている。忙しいふりをして外を駆け回っているとパタリと倒れてそのままあの世行き、といった妄想すら脳裏に浮かぶ。どこかで少し強制的に休みを取る必要があるなあ。
(あ)

No.754

私と、妻と、妻の犬
(新潮社)
杉山隆男

 著者は「メディアの興亡」で大宅賞をとったノンフィクションライター。その人の「小説」が「新潮社」から出た。それも「私小説」。カギかっこで囲んだ3つのキーワードが、読む前からある程度中身を保証している。この理屈、本好きならわかるだろう。読んでみて、やはり面白かった。不思議な余韻の残る小説だ。書名がノンフィクション風なのが気になるが、よく考えてみれば、これ以外考え付かない。自らの不倫によって火宅と化した夫婦生活を2匹の犬の思い出が救う。夫婦の話なのに、そこに犬がいることで家族の物語になる。小説もそのことを意識して犬を物語の中心に据え展開なのだが、過剰な犬へのオマージュが語られることはない。登場する犬たちは寡黙で控えめだ。そのことが好感度と存在感を際立たせる。結果的に妻は夫を許さず、夫は最後に家を出る羽目になるのだが、その理由が「かなりノンフィクション」だ。大学で教える夫と、フィットネスクラブ通いの妻が暮らすマンションは、まだローンが残っている。夫の収入は減る一方で、2人で暮らす限界から別に部屋を借りる必要にも迫られる。ローンが残っているからむげに妻は夫を追い出せない。最後にこの問題は劇的に解決するのだが、その顛末までは書けない。

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