No.208
ついにクマと出遭ってしまった
[焼山(鹿角市 1366m・2019年8月9日)]
 金曜だが休みを取っての山行は八幡平の焼山だ。鹿角と仙北の両地域にまたがる活火山だ。近くは1997年に噴火しているが、今回は後生掛温泉側から登り始めて、べこ谷地から避難小屋まで行き、そこでランチをとり山頂へ。帰りはもうせん峠、国見台を経てまた後生掛温泉に戻る周回コースだ。
 平日だし今やクマ・メッカとなりつつある八幡平なので、かなり不安はあったが、このところ、実に体調はいい。先日の鳥海山も快調だったし、その疲れや筋肉痛もほとんどない。焼山ぐらいは簡単なもの、という「油断」もあった。
 山頂までは雨もナシ、ときおり心地よい風が吹き抜けるコンデションで男2名、女1名の3名は機嫌よく登り続けた。ランチは避難所のきれいな小屋でランチを食べ、名残峠経由で山頂までピストンし、避難小屋からは進路を変えて、もうせん峠を越える下り道。急峻な坂もないし、岩場で難儀するような箇所もない。
 登りに3時間20分、下りは2時間半ぐらいのペースで順調に降下を続けたのだが、ゴールの温泉から20分ほど手前の「見晴らしの悪い曲がり角」で事件は起きた。私の先を行く2人が血相を変えてこちらに逃げるように走ってきたので、すぐに「出たな」とわかった。
 不安は的中したのだ。もうすぐに温泉下山口のある場所まで来て、ここで大きなクマと鉢合わせになった。
 敵は木道横にどっかと腰を下ろし、夢中で水芭蕉を食べていた。5〜10mほどの至近距離だ。敵もこちらの存在に気が付いているのに、まったく逃げる気配がない。大声も笛も鈴も、まるで効果がない。これまでいわれてきたクマよけの「まじない」は何一つ「効かない」ことがわかり、これはショックだった。
 食事が終わって面倒くさそうにやぶの中に消えていった。でもいつ戻ってくるかわからない。温泉の駐車場に着くまで安心できなかった。 

避難小屋へ

山頂で
 今回は3人のパーティだったが、リーダーのSシェフはさすが冷静で、これは心強かった。本心では「写真を撮ろうと思っていた」というから、ここまで行くと強心臓というか半分アホだ。
 食事に夢中でしばらく動きそうにないので興味と怖さ半分、近くに寄って様子を見ようと思ったら「スプレーを持たないで近づくな」とSシェフに一喝された。これだけ至近距離に80キロ近いクマがいるのに3人とも冷静だったのは、なんだか気分がいい。
 温泉は新玉川温泉。きれいな日帰り温泉だが、強酸性の温泉なので、慎重に選んで「弱酸性」の湯に浸かった。露天風呂も弱酸性なのが助かった。帰りの車中は「クマはなぜ人間の気配を察しても逃げなかったか」のに議論が集中した。

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